同人作家として活動する場合に「確定申告のやり方についてわからない」「確定申告と作品納期が重なって大変」などの悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。

確定申告は1年間分の売上や経費を集計する必要があり、多くの手間と時間がかかる作業です。そこで税理士を活用することで、税理士は確定申告に限らず会計業務や税務業務など事業者にとって面倒な作業を取り除いてくれます。

そこで今回は、漫画家でも税理士に依頼することで得られるメリットや、税理士を選ぶ際のポイントについて解説していきます。

 

なぜ同人作家には「専門」税理士が必要なのか?

確定申告に挑戦する同人作家の多くは、特有の会計処理でつまずいてしまいます。

特に「在庫管理」と「多様な収入源の管理」は、他のクリエイターとは異なる、同人作家ならではの処理が必要です。ここでは、どのように会計処理をすべきなのかを確認しましょう。

複雑な「在庫管理」と経費計算

まず同人作家の確定申告では適切な在庫管理を行った上で、下記のような在庫数に応じた経費計算である「棚卸計算」が必要です。

確定申告で経費として計上できるものは、売れた商品に対して発生した費用のみです。ここでは50万円の制作費をかけて500冊の同人誌を制作し、年内に100冊売れた場合の計算事例を確認していきましょう。

上記の場合、売れた100冊に対応した費用のみが経費として計上できます。そのため、50万円のうち10万円が当年の経費となり、残額は翌年以降の経費として繰り越されることになります。

また、印刷代以外にも製本代といった、同人誌を販売するために必要な費用は、全て棚卸計算の対象です。

多様な収入源の正しい把握

即売会での手渡しや、BOOTHといったプラットフォームでのダウンロード販売など、同人作家の収入源は多様化しています。

収入源が増えるほど管理は複雑になるため、計上漏れがないように注意が必要です。計上漏れが発覚した場合には、追徴課税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。

プラットフォームごとに締日や入金日は異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。

同人作家が税理士に相談する具体的なメリット

確定申告などは税理士に依頼することで適切に行うことができますが、それ以外にも様々なメリットがあります。

ここでは税理士に依頼することで得られるメリットを3つ紹介します。

確定申告の手間から解放され、創作に集中できる

税理士に業務を依頼することは、時間の有効活用という意味でも大きなメリットがあります。

普段の会計処理や確定申告手続きは日々の売上や経費の集計だけでなく、レシートの整理など、年間を通して多くの時間と手間を必要とします。そのため、税理士に業務を依頼することで、これらの面倒な作業から解放され、その時間を自身の事業活動の時間にあてることができます。

最適な節税で手取りを最大化できる

確定申告などを税理士に依頼することで、最適な節税対策を行えることも大きなメリットといえます。最適な節税対策により無駄な税金を支払わずに済むため、手元のお金を最大限残すことが可能です。

確定申告以外にも日本の税制は毎年見直され、税制改正が頻繁に行われています。そのため、最新の税制を常に把握しておくことは素人では難しく、結果として最適な節税対策ができないことが多々あります。

そういった点からも税理士は税務の専門家であるため、毎年の税制改正に基づいた最適な節税対策を提案してくれます。効果的な節税対策は納税額を最低限に抑えることに繋がるため、結果として手元にお金が残りやすい状況をつくることができます。

また、同人作家などの確定申告では、「平均課税」という特殊な計算方法を使った税金計算も可能です。平均課税とは、収入が突然増加する可能性のある同人作家など、一定の条件を満たす業種のみが使える税金の計算方法です。節税を検討している方は、税理士に相談してみることをおすすめします。

インボイス制度など法改正にも対応できる

税理士に依頼することで様々な税制改正に対応できることも、同人作家にとって非常に大きなメリットになります。直近では「インボイス制度」の創設が世間に大きなインパクトを与えました。

インボイス制度は中小企業だけでなく、同人作家や漫画家など、個人で活動している人にとっても非常に大きな影響を及ぼす税制改正になりました。

このような複雑な税制改正が施行された場合に、心強い存在なのが税理士です。毎年の税制改正に対応し、迅速な対応を行うことができるということは、同人作家に限らず多くの事業者にとって大きなメリットになります。

【選び方】同人作家に強い税理士を見つける4つのポイント

同人作家が税理士に依頼することのメリットは、様々なものがありますが、具体的にどのような税理士に依頼すればいいのでしょうか。ここでは、同人作家に強い税理士を見つけるためのポイントを4つ紹介します。

1つ目は「同人活動への理解と実績があるか」です。

同人作家に強い税理士ということは、同人作家についての理解が深いということを意味します。例えば「同人活動によって普段どのような経費が発生しているのか」「収入形態がどのようなものであるか」などを把握できているかどうかです。

同人作家の確定申告では、棚卸計算や特殊な経費の考え方、そして平均課税などの特殊な計算方法など、同人作家特有の考え方が多数存在します。これらの理解がなければ適切な節税対策を提案できないだけでなく、最悪の場合は税金の計算に誤りが生じる可能性もあります。

そのため、同人活動に理解があり、申告実績も豊富な税理士を探すことがポイントです。

2つ目のポイントは「クラウド会計ソフトに対応しているか」です。

近年では会計ソフトもクラウド化が進み、様々な企業から販売されています。

クラウド型会計ソフトの場合は、日々の売上データや経費データのやり取りをスムーズにできることや、日々の収支データを入力することで、入力時点における経営状況をすぐに確認できるというメリットがあります。

税理士事務所の多くは会計ソフトを導入していますが、中にはクラウド型の会計ソフトが導入されていない場合もあります。そのため、税理士を探す際のポイントの1つとして、会計ソフトがfreeeなどのクラウド対応のものであるかも確認するようにしましょう。

3つ目のポイントは「質問・相談がしやすいか」です。

税理士は事業者にとってビジネスパートナーともいえる存在です。そのような税理士に「質問がしづらい」「相談しづらい」といったコミュニケーションの問題がある場合は要注意です。

税理士との関係は1年や2年といった短期的なものではなく、自身が事業を続けていく限り関係性が続くものです。そのため、日々のコミュニケーションを円滑に行えるかどうかや、お互いがストレスなくコミュニケーションをとれるかどうかが、税理士を選ぶ際の非常に重要なポイントになります。

4つ目のポイントは「料金体系が明確で、事業規模に合っているか」です。

税理士に依頼する際には、「顧問契約」か「スポット契約」など、税理の関与形態ごとに料金相場が異なります。

そのため、顧問契約とスポット契約の場合における料金体系が、明確に提示されているかを判断基準にしましょう。また、事業規模と税理士報酬のバランスがとれているかも考慮することが大切です。

よくあるトラブルとして、当初提示されていた料金よりも高額な報酬が請求されるケースがあります。上乗せで請求される費用がないかを、契約前に確認しておきましょう。

まとめ

同人作家の確定申告では、棚卸計算をはじめとする特殊な計算が必要になる場合がほとんどです。誤った計算方法で確定申告を行ってしまった場合は、本来納めるべき金額以上の税金になってしまうことや、加算税や延滞税などのペナルティが課せられることもあります。

そのため、日々の会計業務や確定申告などの税務業務に対して少しでも不安や心配がある場合は、積極的に税理士に依頼するようにしましょう。

田中貴久公認会計士事務所では漫画家やクリエイターをはじめ、様々な事業者様を多方面的にサポートいたします。ITツールをはじめとしたクラウド会計にも強い税理士ですので、まずは気軽にご相談ください。

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