YouTuberとして活動していると、撮影機材の購入費や撮影場所の家賃、企画のための物品など、さまざまな支出が発生します。しかし「どこまでが経費として認められるの?」「動画で紹介したら経費として飯いいの?」などと疑問に感じる人は少なくないでしょう。

そこで、本記事では、YouTuberが経費として認められる範囲を、税務上の考え方と実務での線引きを踏まえながら、具体例を挙げてわかりやすく解説します。

この支出は経費として認められる?線引きとなる定義を解説

YouTuberが経費を計上する際に最も重要なのは、「その支出が事業に必要なものであるか」を客観的に説明できるかです。そのために必要な条件を確認しましょう。

動画制作に直接関連しているか

経費として認められるためには、「その支出がなければ動画制作・収益活動が成立しなかった」と説明できる必要があります。

たとえばカメラ・マイク・編集ソフトなどは、動画制作に不可欠であるため事業関連性が明確です。また、大食い企画の食材費や「やってみた企画」の材料費といった企画に直結する支出も、動画制作のために必要だったと説明できます。

一方で、撮影と無関係な私的な買い物は当然経費にできません。

判断が難しい場合は、「企画名」「用途」「動画内での利用場面」を記録し、客観的に関連性を示せるよう備えておくことが望ましいです。支出が動画の質向上や制作継続にどの程度寄与したかを説明できれば、税務上も認められやすくなります。

証拠(領収書・レシートなど)が残っているか

経費計上には、支払いの事実を示す客観的な証拠が必要です。領収書やレシートがない支出は原則として認められにくく、後からまとめて処理することはリスクが高くなります。

特にYouTuberは企画のために物品を購入したり、外出先で支払いを行う場面が多いため、日付・金額・購入先・内容が明確な証憑を確保することが重要です。現金払いでレシートを受け取らない癖があると、経費として否認される原因になりやすいため注意しましょう。小さな支出も証拠を残すことが重要です。

電子レシートやネット注文の購入履歴でも問題ありませんが、どの動画のために利用した支出かをメモしておくと、税務調査の際に説明がしやすいです。

プライベートの支出と明確に区分できるか

YouTube活動は私生活と密接に絡むため、プライベート支出との区分が最大のポイントになります。

たとえば自宅の家賃・光熱費・通信費などは、仕事と生活が混在しているため全額を経費にすることはできません。そのため、仕事に使っている割合を合理的な基準で計算し、割合に応じて経費計上します。これを「家事按分」といいます。

他にも洋服や旅行などは、動画のために購入・実施したとしても、私的利用と完全に切り分けられなければ経費として認められにくいです。日常生活と混在する費用は、説明のための記録が重要となります。

YouTuberが経費にできる支出例とそうでない例

YouTuberの経費について、認められやすい支出、判断が分かれる支出、認められない支出の具体例を解説します。

経費にできる支出例

YouTuberが事業を行ううえで、動画制作に直接必要とされる支出は経費として認められやすい典型例です。たとえば、カメラ・マイク・三脚・照明といった撮影機材、編集用PCや編集ソフトのライセンス費用は「動画制作に不可欠な設備」として扱われます。

また、企画の内容に応じた費用も経費として計上できます。大食い企画の食材費、DIY企画の材料費、レビュー企画での商品の購入代など、動画の内容を構成するために必要な物品購入は、事業関連性を説明しやすい支出です。

加えて、外注を活用する場合には、動画編集者への業務委託費、サムネイル制作者への依頼費用、コラボ相手への出演料なども経費になります。特にプロに外注する費用は金額が大きくなることが多いため、契約内容や支払経路を明確にしておくとより安全です。

判断が分かれる支出例

動画企画に関連しているように見えても、私生活との境界が曖昧な支出は判断が分かれる代表例です。

たとえば、コスプレチャンネルなど特定の企画のために購入した衣装は経費として扱われますが、日常的に着用できるTシャツ・ジャケットなどの「私服」は原則として経費になりません。

また、特殊メイクや舞台メイクのように企画に必要な美容費は経費になりますが、一般的な散髪代・ネイル代・スキンケア用品などは私的用途が強く、経費計上は困難です。

さらに、打ち合わせ・企画会議など業務目的で編集者やコラボ相手と飲食した費用は「会議費」や「接待交際費」として認められますが、家族・友人との食事は理由をつけても経費にはなりません。

税務調査の際には「その支出が事業遂行にどのように必要だったのか」が具体的に説明できるかが鍵となります。判断が微妙な支出は用途を必ずメモしておいてください。

経費計上が難しい支出例

原則として経費にできないのは、私生活のための明らかな支出です。普段の食費、日常的な外食費、プライベート目的の旅行代、趣味で購入した雑貨や衣類などは、動画に映っていたとしても経費として認められることはほぼありません。

また、レビュー動画向けに購入したとしても、撮影後に私物化して継続的に私的利用する高級バッグ・アクセサリー・時計などは、資産性が高く「個人的な消費・資産形成」とみなされやすいため注意が必要です。

たとえ動画内で使用したとしても、「動画制作の必要性」より「私的な価値」が勝ってしまう場合には経費として否認される可能性が高まります。支出の内容が高額なほど税務署のチェックが厳しくなるため、購入理由・使用頻度・動画での役割を丁寧に説明できる状態を整えておきましょう。

YouTuberが経費計上する際に気をつけるべき3つのポイント

YouTuberの経費処理は、一般的な事業よりも「私生活との境界」が曖昧になりやすく、税務署から指摘を受けやすい分野です。そこで、実務上よく問題になる3つのポイントを取り上げ、それぞれの注意点と適切な対応方法を解説します。

1.動画内に映っていても全額計上できるわけではない

YouTuberにありがちな誤解が「動画に映っていれば経費で落ちる」という考え方です。しかし税務上は、あくまで事業に必要だった部分だけが経費として認められます。

重要なのは、動画制作との「関連性が客観的に説明できるか」です。撮影日・企画名・使用場面・必要性などを記録しておくと、税務署に質問された際にもスムーズに回答できます。

また、日常的に使う物品については、私的利用の割合を除外する必要があるため、動画に映っていたからと全額を経費にするのは危険です。「事業に必要な分だけ経費にする」という原則を常に意識しましょう。

2.自宅の家賃は家事按分しなくてはならない

YouTuberの多くは自宅を撮影・編集スペースとして利用していますが、家賃を全額経費にすることはできません。生活用と事業用が混在しているため、「家事按分」により合理的な割合を算定し、その比率分のみ経費計上する必要があります。

たとえば、1LDKのうち6畳の一部屋を撮影部屋として使っている場合、床面積比を基準に按分するのが一般的です(例:撮影部屋6畳/全体12畳=50%)。他にも、使用時間、機材の設置状況、明確に仕事専用として区分できているかなど、状況に応じて最も合理的な基準を採用します。

また、家賃だけでなく光熱費・通信費も同様に按分が必要です。税務調査では「按分根拠」が重視されるため、図面・メモ・利用実態を示す資料を残しておくと安全です。

3.収益化前なら活動が事業として認められなくてはならない

YouTubeチャンネルが収益化されていない段階でも、経費として認められる可能性はあります。

ただし、そのためには「すでに事業として成立している」と客観的に判断できることが条件です。たとえば、企画書を作成し定期的に動画を投稿している、機材を購入して制作環境を整えている、将来収益化を見込んだ継続的な取り組みがある、といった状況があれば、収益がなくても事業性が認められやすくなります。

趣味として不定期に投稿しているだけ、収益化の見込みが薄い、活動実態が乏しいといった場合には、経費が否認される可能性が高まります。「将来の収入獲得を目的とした継続性・計画性」が重要な判断基準であり、収益化前は特に活動内容を記録しておくことが有効です。

まとめ

YouTuberの経費は、「どこまでが仕事で、どこからがプライベートか」という線引きが難しい分野です。

経費を大きく計上すれば税務調査で否認され追徴課税のリスクも生じますが、必要以上に遠慮してしまうと本来認められるべき経費を活用できず、結果として税負担が重くなることもあります。

迷う支出がある場合や、按分割合の決め方に不安がある場合は、早めに税理士に相談しておくと安心です。手元に残るお金を増やしつつ、YouTube活動にもっと集中できる環境を整えていきましょう。

田中貴久公認会計士事務所はYouTuberをはじめとしたクリエイターの税務・会計に通じており、多数のご依頼をいただいております。税理士選びに迷っている場合にはお気軽にご相談ください。

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