
「青色申告に切り替えようと思っていたのに、青色申告承認申請書を出し忘れていた…」
こうしたうっかりミスは決して珍しくありません。
特に開業初年度や白色申告からの切り替え時は、提出期限を正確に把握できていないケースもあるでしょう。期限を過ぎた場合、その年はどう扱われるのか、青色申告のメリットは受けられないのか、不安を感じているかもしれません。
結論、提出を失念したとしても、ただちに重大なペナルティが科されるわけではありません。ただし、税務上の取り扱いには明確なルールがあり、対応を誤ると修正申告や追加納税が必要になることもあります。
この記事では、青色申告承認申請書を出し忘れた場合の扱いと、個人事業主が取るべき現実的な対処法をわかりやすく解説します。
青色申告承認申請書を個人事業主が出し忘れるとどうなる?
青色申告承認申請書の提出期限を過ぎた場合、その年分の所得税申告では青色申告はできません。
青色申告承認申請書は原則として、開業した場合は「開業日から2か月以内」、すでに事業を行っている場合は「その年の3月15日まで」に提出する必要があります。この期限を1日でも過ぎると、その年は自動的に白色申告扱いとなります。
白色申告となることで、最大65万円(条件により55万円・10万円)の青色申告特別控除は利用できません。また、赤字を翌年以降に繰り越せる「純損失の繰越控除」や、家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」など、青色申告特有の税務メリットも受けられなくなります。
ただし、ここで注意すべきなのは「その年が白色申告になるだけ」という点です。一度出し忘れたからといって、将来にわたって青色申告ができなくなるわけではありません。申請書を改めて提出すれば、翌年分以降は青色申告へ切り替えられます。
青色申告承認申請書を個人事業主が出し忘れたときの3つの対処法
青色申告承認申請書を出し忘れた場合、取るべき基本的な対処法は、大きく分けて3つです。
1.申請書の提出期間内なら速やかに提出する
青色申告承認申請書を出し忘れていたことに気づいた時点で、まだ提出期限内であれば、速やかに提出することでその年から青色申告が可能です。
たとえば、2025年4月1日に個人事業を開業した場合、提出期限は原則として2025年5月31日までとなります。この期間内であれば、申請書を提出することで2025年分の確定申告から青色申告を選択できます。
「もう開業届は出したから間に合わないのでは?」と勘違いされがちですが、青色申告承認申請書は開業届とは別の書類です。提出期限内であれば、税務署窓口への持参、郵送、e-Taxのいずれの方法で提出できます。重要なのは、期限内に税務署へ到達していることです。
なお、提出後すぐに承認通知が届くわけではありませんが、通常は不備がなければ自動的に承認されたものとして扱われます。
2.白色申告で確定申告をする
青色申告承認申請書を期限内に提出していない場合、その年分の確定申告は原則として白色申告で行う必要があります。
たとえ帳簿を複式簿記で付けていたとしても、税務署から青色申告の承認を受けていなければ、青色申告として扱われることはありません。
白色申告では、青色申告特別控除は使えませんが、何も控除が受けられないわけではありません。必要経費の計上自体は青色申告と同様に可能で、事業に直接関係する支出は適切に経費として差し引けます。
また、近年は会計ソフトの普及により、白色申告であっても帳簿作成の負担は大きく軽減されています。会計ソフト上で「白色申告」を選択すれば、簡易な記帳方法に自動的に対応してくれるため、手作業で帳簿を作る必要はありません。
3.翌年に向けて申請書を提出する
青色申告承認申請書を出し忘れてしまい、その年は白色申告になったとしても、翌年分以降の青色申告に向けて申請を行うことは可能です。
この場合の提出期限は「青色申告をしたい年の前年3月15日まで」となります。
たとえば、2026年分の所得について青色申告を行い、2027年3月に確定申告をしたい場合、青色申告承認申請書の提出期限は2026年3月15日です。この期限を守って提出すれば、翌年分からは正式に青色申告の適用を受けられます。
出し忘れを経験した人ほど、翌年分の申請を早めに済ませておくことが重要です。開業直後や忙しい時期は、どうしても税務手続きが後回しになりがちですが、申請書自体は一度提出すれば毎年出す必要はありません。
青色申告承認申請書を提出するための手順3ステップ
青色申告承認申請書を提出するまでの流れを3つのステップに分けて解説します。
1.申請書をダウンロードする
青色申告承認申請書は、国税庁の公式サイトからPDF形式でダウンロードできます。
印刷して手書きで記入することも、PDFを入力して印刷することもできます。
また、最寄りの税務署窓口へ直接行けば、申請書の用紙を無料でもらうことも可能です。開業届を提出するタイミングで一緒に受け取る人も多く、税務署の職員に確認しながら進められる点はメリットといえます。
e-Taxで提出する場合でも、事前に申請書の内容を確認する意味で、様式を一度目に通しておくことが大切です。
2.必要事項を記入する
申請書には、氏名、住所、屋号、事業の種類、開業日などの基本情報を記入します。
これらは開業届と内容が一致している必要があるため、手元に開業届の控えを用意しておくと安心です。
特に注意したいのが、帳簿の記帳方法の欄です。青色申告特別控除(最大65万円)を受けるには「複式簿記」を選択する必要があります。簡易簿記を選択すると、控除額が10万円に制限されてしまいます。
また「備付帳簿名」については、会計ソフトを利用している場合でも、現金出納帳や売掛帳などの主要な帳簿名を記載しておくのが一般的です。
3.税務署に提出する
青色申告承認申請書の記入が完了したら、税務署へ提出します。提出方法は大きく分けて「税務署窓口への持参」「郵送」「e-Tax(電子申請)」の3つです。
どの方法を選んでも効力に差はありませんが、期限内に確実に提出した証拠が残る方法を選ぶことが重要です。
税務署窓口に持参する場合は、控えを1部用意し、受付印を押してもらうことで提出済みの証拠を残せます。郵送の場合は、控えを同封し「返信用封筒」を入れておくと、受付印のある控えを返送してもらえます。
e-Taxで提出した場合は、送信完了画面や受付結果通知を保存しておきましょう。
なお、申請書提出後、通常は税務署から特別な連絡はありません。提出からおおむね2か月程度経過しても不承認通知が届かなければ、承認されたものとして扱われます。
青色申告承認申請書を出し忘れた個人事業主からよくある質問
青色申告承認申請書を出し忘れた場合、「もう手遅れなのでは」「税務署に怒られる?」などと不安を感じる人は少なくありません。
ここでは、実際によく寄せられる質問とその回答を整理します。
提出したかを確認する方法はありますか?
過去に青色申告承認申請書を提出したかどうかわからなくなった場合は、納税地を管轄する税務署へ電話で確認することが可能です。
「所得税の青色申告承認申請書を提出しているか確認したい」と伝えれば、本人確認のうえで教えてもらえます。
特に、開業から数年経っている場合や、会計ソフトを切り替えたタイミングなどで記憶が曖昧になっているケースでは、自己判断せず確認することが重要です。
誤って青色申告をしてしまった場合はどうなりますか?
青色申告承認を受けていないにもかかわらず、青色申告決算書を作成し、青色申告特別控除を適用して申告してしまうケースです。
この場合、申告内容が自動的に有効になるわけではなく、税務署側で白色申告として修正処理されるのが一般的です。
結果として、青色申告特別控除は認められず、控除分を差し引いた税額について修正通知や追加納税の案内が届く可能性があります。悪質な仮装・隠ぺいでない限り、ただちに重いペナルティが科されることはありません。
誤りに気づいた時点で、早めに修正申告や税務署への相談を行うことが望ましい対応です。
まとめ

青色申告承認申請書を出し忘れてしまっても、焦る必要はありません。期限を過ぎた場合は、その年分については白色申告として正しく申告し、翌年分から青色申告に切り替えるようにしましょう。
重要なのは、次に向けた準備を早めに進めることです。会計ソフトの活用や、帳簿付けの習慣化によって、翌年以降の青色申告への移行はスムーズになります。
もし「自分のケースが白色か青色かわからない」「申請書の提出状況に不安がある」といった場合は、専門家に相談するようにしましょう。田中貴久公認会計士事務所は、クリエイターの会計・税務に通じているので、心配なことがあればお気軽にご相談ください。
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