
海外プラットフォームから報酬を得ているクリエイターや副業フリーランスの中には、「海外でも税金が引かれ、日本でも確定申告している」という状態になっている人が少なくありません。
この場合、実際には税金を払いすぎている可能性があります。
外国の源泉徴収税と日本の所得税が重なることで生じる二重課税は、「外国税額控除」を適用することで調整できます。
本記事では、外国税額控除の制度の基本と、確定申告での書き方・必要書類・注意点を解説します。
外国税額控除とは
外国税額控除とは、海外で一度課税された所得について、日本の所得税や住民税の計算時に一定額を控除できる制度です。
日本の居住者は全世界所得課税が原則であり、海外所得も日本の課税対象になります。しかし、そのままでは「海外+日本」で二重に税金が発生しえます。外国税額控除は、控除という形で二重課税を調整するために設けられています。
海外プラットフォーム(YouTube、ストックフォト、海外ASPなど)を利用するクリエイターは、設定状況によって海外で源泉徴収されたうえ、日本でも課税対象となるケースがあります。このようなケースで、外国税額控除を適用することで、海外に納めた税額を日本の税額から差し引くことができます。
例えば、米国プラットフォームで広告収益を得て10%の源泉徴収がされ、日本でも所得税が発生する場合、外国税額控除の申告を行うことで税負担の重複を調整できます。
この手続きを行わない場合、過少申告や帳簿不備の原因となり、税務調査で指摘される可能性もあります。
外国税額控除が適用される対象と限度額
外国税額控除はすべての海外税金が対象になるわけではなく、対象範囲と控除できる上限が明確に決められています。
外国税額控除の対象
結論として、海外で得た所得に対して課された税金のうち、所得税に相当するものが対象となります。
個人が海外で得た所得に対して課税された税金は、原則として外国税額控除の対象です。
対象が限定されているのは、すべての海外支払いを無条件に控除すると、税制度の公平性が保てなくなるためです。それゆえ、所得税性質を持たない税金や、資本の払戻しに起因する税金などは対象外となります。
具体例として、次のものが対象となる可能性があります
・海外プラットフォームの広告収益に対する源泉税
・海外ASPの報酬に対する所得課税
一方で対象外になるのは次のものです。
・付加価値税に類する税
・資本取引に伴う税
外国税額控除の控除限度額
結論として、日本の所得税額の範囲内でしか控除できず、上限が存在します。
外国税額控除は「海外で支払った税金全額」を必ず差し引ける制度ではありません。なぜかというと、日本の税額を超えて控除すると、税額がマイナスになる可能性があるためです。
そのため、控除限度額は以下の計算式で算出されます。
該当年度の所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)
控除限度額を超えた部分については翌年以降に繰り越せるケースもあります。
具体例を見てみましょう。
・海外所得が全体所得の20%
・所得税額が50万円
この場合、控除上限は「50万円 × 20%=10万円」となります。
控除額の計算を誤ると修正申告が必要になることもあり、制度の理解が欠かせません。
外国税額控除の際に必要な書類と書き方
確定申告時には、海外で税金が課された事実と金額を証明できる書類をそろえることが最優先です。
手元に用意する書類
結論として、「海外で税金が課された証明」と「日本の申告書類」の双方が必要になります。
外国税額控除を適用するためには、次の書類を用意します。
・国外で所得税を課されたことが分かる書類
・外国の法令により課税された税の名称・金額・納付日が記載された資料
・外国税額控除に関する明細書
・確定申告書
・米国プラットフォームの支払明細
・源泉徴収レポート
外国税額控除の確定申告の書き方
確定申告書と外国税額控除明細書の双方に記入し、控除額を計算して反映します。
外国税額控除は、通常の所得計算とは別に「外国税額控除に関する明細書」を作成し、その数値を申告書へ転記する流れです。
明細書が必要なのは国外所得・外国税額・控除限度額の関係を個別に計算する必要があるためです。
具体的な流れは次のとおりです。
①海外所得の金額を算出
②海外で支払った税額を整理
③控除限度額を計算
④明細書へ記入
⑤確定申告書へ転記
入力ミスがあると過少申告につながる可能性があるため、会計ソフトの計算結果との突合や税理士確認が推奨されます。
クリエイターがハマりやすい落とし穴
外国税額控除は制度自体はシンプルですが、運用面で誤解が多く、申告ミスにつながりやすい点に注意が必要です。
W-8BENを出している場合
W-8BENを出していて米国で源泉徴収が発生していない場合は外国税額控除の対象になりません。
W-8BENを提出すると、日米租税条約の適用により米国での源泉徴収率が軽減または免除されるケースがあります。そのため、そもそも米国側で税金を支払っていない場合、日本の所得税から控除する対象が存在しません。
「海外収入=外国税額控除が使える」と認識されやすく誤解が生じやすいのですが、実際には「外国で税金を支払っていること」が前提条件です。
具体例として、次の2つのケースを見てみましょう。
・YouTube収益でW-8BEN提出済み → 米国源泉徴収なし → 控除不要
・ストックフォト収益で源泉徴収あり → 控除対象
控除対象がないにもかかわらず入力すると、帳簿不備や誤った税額計算につながり、修正申告が必要になる可能性があります。
特定口座(証券)との混同
米国株の配当とクリエイターの事業報酬は申告区分が異なります。
米国株の配当は、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で管理され、確定申告不要となるケースがあります。一方、海外プラットフォームからの報酬は「事業所得」または「雑所得」として申告する必要があります。
どちらも「米国で税金が引かれている」という点が共通していますが、税務上は、配当所得と事業所得で入力場所・計算方法が異なるため、混同が生じやすいです。
次の2つの具体例を確認しておきましょう。
・米国株配当 → 配当控除や外国税額控除(金融所得枠)
・YouTube広告収益 → 事業所得として外国税額控除
入力区分を誤ると過少申告や税務調査時の指摘につながるため、所得区分には注意を払いましょう。
迷ったら専門家へ相談!プロに頼めば安心
外国税額控除は複数プラットフォームを利用している場合ほど計算が複雑になるため、制度理解だけでなく実務対応が必要です。
海外プラットフォームを複数利用している場合、米国源泉徴収・欧州プラットフォームのVAT・為替換算などが絡み、控除額の計算が難しくなります。
外国税額控除は「国外所得」「外国税額」「控除限度額」の三点を同時に計算する必要があり非常に複雑です。とはいえ、誤りがあると帳簿不備や過少申告と判断され、税務調査の対象になる可能性があります。
複数の海外ASP・YouTube+海外ストックフォト・海外クラウドサービス報酬などを併用している場合、税額計算は個別に整理する必要があります。
そのため、税金のプロである税理士に相談し、申告の依頼をすることを検討してみてください。
まとめ

外国税額控除は、海外報酬を得るクリエイターや個人事業主にとって、二重課税を防ぐための制度です。
海外で支払った税金を正しく整理し、日本の所得税から控除することで、本来支払うべき税額へ調整できます。外国税額控除は自動適用ではなく、確定申告での手続きが前提であり、制度を理解せずに申告を行うと、過少申告や帳簿不備の原因となり、税務調査や修正申告につながる可能性があります。
特にクリエイターや副業フリーランスは、海外プラットフォームの利用状況によって税務処理が大きく変わります。
不明点がある場合は、クリエイター・個人事業主に強い田中貴久公認会計士事務所にご相談ください。
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