海外プラットフォームで収益化する際には、米国の税務手続きとしてW-8BENの提出が求められる場合があります。提出しないまま報酬を受け取ると、源泉徴収として30%が米国側で差し引かれる可能性がありますが、正しく提出することで0%〜10%程度に軽減できるケースがあります。

そこで本記事では、制度の概要から記載方法、税務上の注意点まで、実務目線で解説します。

W-8BENとは?知っておくべき基礎知識

W-8BENとは「日本在住の個人が、米国源泉所得に対する課税を適切に調整するための申告書」のことをいいます。米国内国歳入庁(IRS)が定める書式であり、米国企業から報酬を受け取る際に提出を求められるケースがあります。

YouTube・ストックフォト・米国ASP・米国企業が運営するクラウドサービスなど、米国企業が運営するプラットフォームから報酬を受け取る場合には、米国源泉徴収の対象となるため税務上の取り扱いを整理する必要があります。誤った認識のまま提出しない、または誤記のある状態で提出すると、過少申告や帳簿不備の原因となり、後の税務調査で指摘を受ける可能性があります。

提出が必要な理由は、書類が未提出の場合、米国側で一律30%の源泉徴収が行われる可能性があるためです。一方で、日米租税条約の適用を前提に正しく提出すれば、源泉徴収率が軽減または免除される場合があります。

対象者

W-8BENの対象者は、日本在住の個人クリエイターや副業フリーランス、個人事業主です。法人の場合は別の書式であるW-8BEN-Eを使用する必要があります。

具体例として、以下のようなケースが該当します。
・YouTube収益を受け取る個人クリエイター
・米国ストックフォトサイトで販売するイラストレーター
・米国ASPで広告収益を得るブロガー

これらは米国源泉所得に該当する可能性があり、W-8BENの提出によって適切な源泉税率が適用されます。提出がない場合、税率が高くなり、確定申告時の修正申告や外国税額控除の検討が必要になる場合もあります。

二重課税の防止

W-8BENを提出する最大の目的は、日米租税条約に基づいて二重課税を防ぐことです。なぜこの手続きが必要かというと、海外収益は「米国」と「日本」の双方で課税対象となる可能性があるためです。

条約により、源泉徴収税率が軽減される、または免除される仕組みが設けられています。例えば、ロイヤリティ収入やサービス提供収入では、条約の適用により税率が低減されるケースがあります。

この手続きを行わない場合、米国で30%徴収されたうえ、日本でも所得税が課税され、結果として資金繰りや帳簿管理に影響します。

有効期限

W-8BENの有効期限は原則として、署名した年から3年後の年末までです。なぜ期限が設けられているかというと、居住地や税務状況が変化した場合でも適切な税率を適用できるようにするためです。
例えば、2026年に提出した場合は、2029年12月31日まで有効となります。その後も海外プラットフォームで収益を得る場合は再提出が必要です。

更新を忘れると、源泉徴収率が自動的に30%へ戻るケースがあります。結果として帳簿処理や外国税額控除の計算が複雑になり、帳簿不備や過少申告につながる可能性があります。税務調査時にも指摘されやすいため、期限の管理には注意しましょう。

W-8BENはどこから手に入れる?

W-8BENは、IRS(米国内国歳入庁)の公式サイトから入手できます。なぜ公式フォームを使用する必要があるかというと、税務書類は最新様式でない場合、受理されない可能性があるためです。

IRSのホームページには次のものが掲載されています。
申請用フォーム(PDF)
記入方法の説明書

海外プラットフォームの登録画面から直接提出する場合でも、内容は同一のため、事前に公式フォームで確認しておくと記入ミスを防げます。誤記があるまま提出すると、税率が適用されず源泉徴収が増えるほか、後の修正申告が必要になることがあります。

W-8BENの項目別・記載例

W-8BENは「Part I→Part II→Part III」の順に、本人情報・租税条約の適用・署名を記入します。

前段の情報が後段の税率適用判断に影響するため順番どおりに確認しましょう。特に個人クリエイターや副業フリーランスの場合、英語表記・住所・税番号の扱いを誤るケースが多く、報酬の源泉税率に直接影響します。具体例をもとに解説します。

Part I:識別情報

Part Iでは、申請者本人の基本情報を記入します。この項目は、居住国や納税者識別番号によって、租税条約の適用可否が判断に影響します。

主な記入項目は以下のとおりです。

1. Name of individual who is the beneficial owner(受益者の氏名)
ローマ字で氏名を記載します。パスポート表記と一致させるのが安全です。

2. Country of citizenship(国籍)
「Japan」と記載します。

3. Permanent residence address(恒久的居住地住所)
日本の自宅住所を英語表記で記載します。私書箱は不可です。

4. Mailing address(郵送先住所)
上記住所と異なる場合のみ記入します。

5. U.S. taxpayer identification number(米国納税者番号)
通常、日本在住の個人は該当しません。

6. Foreign tax identifying number(外国納税者番号)
日本のマイナンバーを記載するのが原則です。プラットフォームの仕様によっては記載不要またはチェック欄対応となる場合があります。

7. Reference number(s)(参照番号)
アカウント番号やユーザーIDを記入します。

8. Date of birth(生年月日)
月-日-西暦の順で記載します(例:06-15-1990)。

誤った記入をすると、本人確認が通らず源泉徴収が継続されることがあるので注意しましょう。

Part II: 租税条約の適用

Part IIでは、日米租税条約の適用を申告します。

源泉徴収率の軽減に影響があります。

例えば、次のように、収益の性質に応じて条項番号を選択します。
・ストックフォト販売 → Royalties(使用料)
・YouTube広告収益 → ServicesまたはOther income

条項の選択を誤ると、条約の適用が認められず、30%徴収が継続される可能性があります。後から外国税額控除や修正申告で調整することもできますが、手続きの負担が増えます。

Part III: 署名

Part IIIでは、申請者本人が署名し、記入日を記載します。なぜ署名が必要かというと、申告内容が真実であることを本人が宣誓する書類であるためです。

記入方法は以下のとおりです。
・署名(ローマ字)
・記入日(月-日-西暦)
・氏名(活字体)

日付形式を誤る、署名が一致しないなどの不備があると、書類が無効と判断される場合があります。結果として源泉徴収が継続し、税務処理が複雑化します。

30%引かれてしまった後でも取り戻せる?

もしW-8BENの提出が間に合わず30%の源泉徴収が行われた場合でも、日本の確定申告において「外国税額控除」により調整できる可能性があります。

日米租税条約の考え方では同一所得への二重課税を回避する仕組みが設けられているためです。

具体例として、YouTube収益やストックフォト収入で米国側に源泉徴収された場合、日本の確定申告で外国税額控除を適用することで、日本の所得税額から控除される場合があります。

ただし、帳簿不備や証憑不足があると適用が認められないことがあり、過少申告と判断されるリスクもあります。また、制度理解が不十分なまま処理すると修正申告が必要になるケースもあります。

そのため、最初からW-8BENを正しく提出して源泉徴収率を軽減するほうが、実務上の手間や資金繰りの面でも有利です。

まとめ

海外プラットフォームで収益を得る個人クリエイターや副業フリーランス、個人事業主は、税金で不利益を受けないためにW-8BENを正しく提出しなければなりません。

もし提出をしない場合や、適切な提出がないと、次のような不利益を被ります。
・提出しない場合は米国で30%源泉徴収される可能性
・正しく提出すれば0%〜10%程度へ軽減される場合がある
・誤記や未提出は帳簿不備や税務調査時の指摘につながる可能性

海外収益は日本の確定申告にも影響するため、外国税額控除や所得区分の判断など、税務処理は慎重に行う必要があります。判断を誤ると過少申告や修正申告が発生することもあります。

制度の理解や記載方法に不安がある場合は、クリエイター・個人事業主に強い田中貴久公認会計士事務所にご相談をください。

‐免責事項‐

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