最近では、ピッコマやLINEマンガ、FANZAなど、Web上で漫画を読むことができるアプリが流行しており、様々な漫画サイトを通じて活動をしている漫画家の方も多いのではないでしょうか。

「漫画家って儲かる職業なの？」
「どれぐらいの収入が見込める？」
「漫画家は確定申告が必要？」

このような疑問を抱くことがあるかもしれません。

そこで今回は、漫画家の収入事情やWeb漫画サイトにおける仕組み、そして漫画家が知っておくべき確定申告の基本について解説していきます。

漫画家の収入源とリアルな懐事情

漫画家の収入源は商業漫画家やWeb漫画家など、漫画家としての働き方の違いや漫画家の人気度によって大きく異なります。

たとえば、同じ漫画家でも働き方や人気度で次のような差が生まれてしまいます。

「商業漫画家Aさんはヒット作が多く年収が非常に高い」
「Web漫画家Bさんは中々ヒット作が出ずに年収が低い」

漫画家は書籍出版をしている人と同様で、原稿料や売上部数に応じた印税が収入となります。印税収入の相場は出版社などによって異なりますが、一般的に販売価格の10％前後といわれており、1冊500円の漫画の場合における漫画家の印税収入は50円（500円×10％）という計算になります。

また、漫画家が1人で活動しているパターンは珍しく、多くの漫画家は、アシスタントなどを雇って活動しています。そのため、ヒット作が出なければ、アシスタントの人件費分が赤字となってしまうという現実もあります。

収入源は多様化！主な収入の内訳

漫画家の収入源は大きく分けて次の3つが挙げられます。

①原稿料
②印税
③物販収入

最近では漫画の映画化や「推し活」を行う層をターゲットにしたグッズ販売など、二次的収入も漫画家を支える大事な収入源となっています。

このほかにもプラットフォーム別の収入の種類やキャリアステージごとの収入の目安についても確認してみましょう。

【プラットフォーム別】Web・電子書籍の収入

最近では紙媒体の漫画だけでなく、インターネット環境を活用した漫画サイトも多く存在し、ピッコマやLINEマンガ、webtoonなど、様々な会社が事業展開しています。インターネット上のウェブサイトに漫画を掲載することは、次のような収入獲得を見込むことができます。

・漫画のダウンロード収入
・バナー広告からのアフィリエイト収入

従来の漫画家の収入は印税や原稿料を主体としたものばかりでしたが、最近では企業が広告料やグッズ販売などの一部をレベニューシェアで渡すことも増加しています。また、原稿料に一定の保証額を設定し、原稿料が一定金額を下回らないような仕組みもできています。

漫画家の収入のリアル（平均・中堅・新人）

漫画家は「新人」「中堅」「トップクラス」といった、キャリアステージごとに区分することができ、ステージごとに収入も大きく異なります。一般的にキャリアステージごとの年間収入の目安は、次のようにいわれています。

「新人」・・・100万円〜300万円
「中堅」・・・1000万円〜2000万円
「トップクラス」・・・数億円〜

また、漫画家の収入を左右する要素として、「連載の有無」「大ヒット作品の有無」が挙げられます。週刊誌などで連載している場合は「ページ単価×ページ数」で計算する原稿料が収入の大部分を占めることになり、原稿料が1枚2万円の漫画を20ページ描くことで、収入が40万円得られる計算になります。

また、大きくヒットする作品がある場合は、一時的に大きな収入を得ることもできますが、「売れない可能性もある」という厳しい現実があることも考えておく必要があります。そのため、1つの収入源だけではなく、多様な収入源を確保していくことが非常に重要です。

大前提！確定申告で重要な「収入」と「所得」の違い

漫画家だけに限らず事業を行うにあたり、必要となってくるのが「確定申告」です。確定申告では「収入」と「所得」についての違いを正しく理解していなければ、正しい税額を計算することはできません。

確定申告では「収入」と「所得」のちがいを正しく理解しておくことが必要です。

「収入」・・・事業活動などによって得られた金額のこと
「所得」・・・収入から必要経費などを差し引いた金額のこと

たとえば、売上が500万円で必要経費が200万円だった場合、「収入が500万円」「所得が300万円」となります。

確定申告については、一定の要件に該当する場合に行う必要があります。要件に関しては、さまざまなものがありますが、「所得の金額が一定額以上である場合に確定申告が必要になる」といったように、収入金額ではなく所得金額が条件となっていることが多くあります。

【ケース別】確定申告が必要になる所得のボーダーライン

確定申告が必要であるかの判断は、所得金額がいくらであるかによって行います。

漫画家の確定申告の場合は「副業で漫画を描いているか」「専業で漫画を描いているか」によって、確定申告が必要となるボーダーラインの金額が変動します。

ケース①：副業で漫画を描いている場合（所得20万円の壁）

副業で漫画を描いている人は、漫画活動によって発生した所得が20万円を超える場合に確定申告が必要になります。漫画家は収入が安定しないリスクもあることから、会社勤めの傍らで漫画活動を行う人は珍しくありません。

そのような場合、給与以外の副業収入が20万円を超える場合は確定申告が必要になります。たとえば、給与が年間200万円で漫画活動による所得が25万円である場合、確定申告が必要ということになります。

ここでは、確定申告が必要であるかどうかの判断基準が収入ではなく、所得金額がとなっていることをしっかりおさえておきましょう。

ケース②：専業で漫画を描いている場合（所得95万円の壁）

専業で漫画を描いている人は、漫画活動によって発生した所得が95万円を超える場合に確定申告が必要になります。

所得税を計算する際は所得金額から「所得控除」を差し引き、残額に所得税率を乗じて計算します。所得控除のなかには無条件に適用できる「基礎控除」というものがあり、その金額が95万円となっています。

そのため、所得金額が基礎控除の金額を超えない限りは所得税が発生せず、確定申告も不要ということになります。

申告不要でも確定申告をした方がお得なケース

確定申告は「所得税を納める手続き」という認識を持っている方が多いですが、場合によっては所得税が還付されるケースもあり、具体的には次のようなケースが挙げられます。

・給与所得があり、医療費を控除を受ける場合
・給与所得があり、寄付金控除を受ける場合
・給与所得があり、住宅ローン控除を受ける場合
・雑損控除を受ける場合

たとえば、年間を通して医療費を多く支払っているサラリーマンなどは、確定申告における「医療費控除」により、所得税が還付される可能性があります。

サラリーマンなど給与所得がある人は、勤務先による年末調整手続きにより、所得税の納税手続きが完了しますが、年末調整手続きではおこなえない手続きもあります。その1つが「医療費控除」であり、そのほかにも「寄附金控除」や「雑損控除」「住宅ローン控除(初年度のみ)」などがあります。

これらの控除などは、確定申告を行うことで使うことができる控除となるため、確定申告により所得税が還付される場合もあります。

 

源泉徴収された税金が戻ってくる（還付）

所得税には給与や年金、原稿料などの報酬を支払う際に、支払者があらかじめ所得税を概算徴収し、税務署に納める「源泉徴収制度」があります。

源泉徴収制度ではあくまでも概算での徴収となるため、

「本来納めるべき所得税額」＜「既に納めている源泉所得税」

となることも珍しくありません。この場合、確定申告をを行うことで、納め過ぎた所得税が還付されることになり、この手続きのことを「還付申告」といいます。

たとえば、報酬を受け取る際に5万円が源泉所得税として徴収され、確定申告により本来納めるべき所得税が2万円の計算結果となった場合、差額の3万円が還付されることになります。

報酬を受け取る際に「所得税がいくら徴収されているのか」を確認するためには、支払者から交付を受ける支払調書や各種明細などが必要になります。いずれの書類も非常に大事な書類であるため、大切に保管するようにしましょう。

まとめ

漫画家が描いた作品が突然大ヒットした場合、その年分の確定申告から多額の納税額が発生することもあるため、確定申告の知識をつけておくことは非常に重要です。しかし、確定申告の仕組みや税金対策などの知識を素人が完璧に網羅することは現実的ではありません。

そこで「最低限の税務の知識はつけつつ、専門的な部分に関しては税理士に相談する」ということが、効率よく本業と税務を行うことができるポイントになります。

ただし、税理士にも専門分野等があるため、料金面だけで税理士を決めるのではなく、漫画家やクリエイターの確定申告に強い税理士に依頼するようにしましょう。

田中貴久公認会計士事務所では漫画家やクリエイターをはじめ、さまざまな事業者様を多方面的にサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

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