漫画家やクリエイターとして個人で活動し、収入を得ている方は、年に一度、ご自身で所得を計算して税金を納める「確定申告」をおこなう必要があります。

しかし、いざ確定申告の準備を始めようと思っても、

「確定申告ってなにをすればいいの?」
「なにを準備していいのかわからない」

など、確定申告に対する不安を抱く方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、漫画家やクリエイターの方を中心とした確定申告手続きについて徹底解説していきます。

そもそも漫画家の確定申告とは?

確定申告手続きは職種や業種によって、計算書様式や考え方が異なる点もありますが、「1年間の所得金額を計算し、納めるべき所得税を計算する」という点では同じです。

そのため、漫画家だからといって特別な計算が必要になるわけではありません。まずは、確定申告が必要になる条件や確定申告の必要性について解説していきます。

なぜ確定申告が必要なのか?

日本では、納税者自身が税金を計算して納付する「申告納税制度」が採用されているため、一定の要件を満たす方は、ご自身で確定申告をおこなう義務があります。

ただし、確定申告では源泉所得税など、すでに納税手続きが済んでいる所得税がある場合は、所得税還付となる場合もあるため、納める所得税がないからといって確定申告は不要と安易に判断しないようにしましょう。

また、確定申告が必要だったにもかかわらず、申告期限内におこなわなかった場合には「延滞税」や「無申告加算税」などのペナルティが課せられる場合があるため注意が必要です。

いくらから?申告が必要になる収入のボーダーライン

漫画家の確定申告の場合は「専業漫画家」なのか、「副業における漫画家」なのかによって確定申告が必要となるボーダーラインの金額が変動します。

たとえば、専業漫画家の場合は、所得金額が「95万円以上」である場合に確定申告が必要になります。この95万円は「基礎控除」の金額のことをいい、確定申告をおこなう際に所得金額から差し引くことができる控除のことです。

そのため、所得金額が95万円であった場合、基礎控除額の95万円を差し引くと所得金額は0円となり、所得税額は0円になります。しかし、基礎控除額は納税者の所得金額によって変動するため注意が必要です。

また、給与を受けていて副業における漫画家である場合は、所得金額が上記の「95万円」ではなく「20万円」を超える場合に確定申告が必要になります。

確定申告の2つの方法「青色申告」と「白色申告」

確定申告の方法は「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、いずれかの方法でおこなうことになっています。

青色申告と白色申告では、それぞれの種類によって申告書の様式や適用できる控除額などに差があるため、どちらの方法で申告すべきか検討する必要があります。

それぞれのメリット・デメリットを比較

青色申告と白色申告ではそれぞれメリットやデメリットがあり、青色申告の大きなメリットの1つに「優遇特典を受けることができる」という点があります。

青色申告では日々の売上や経費を帳簿づけする際に複雑な方法で帳簿づけをおこなう必要があります。その特典として、以下が挙げられます。

・青色申告特別控除として10万円または55万円(一定要件を満たせば65万円)を適用できる
・赤字であった場合、赤字の金額を最長3年間繰り越すことができる
・家族(専従者)への給与を経費とすることができる
・30万円未満の資産は一括で経費に計上できる

白色申告の場合は、青色申告よりも簡易な帳簿づけが認められており、この点が一番大きなメリットとなります。ただし、青色申告のような特典がないため、節税効果が期待できないことがデメリットといえます。

結論:漫画家は「青色申告」が断然おトク!

青色申告は白色申告と比較し、帳簿のつけ方が少々大変になるとはいえ、青色申告の特典を考慮すると断然お得といえます。

特に青色申告特別控除を最高65万円を適用できるということは、「所得金額が自動的に減る」と言い換えることもできます。そのため、漫画家のような継続的に収入が発生する業種である場合は、青色申告特別控除の65万円控除は非常に魅力的なメリットといえます。

また、帳簿づけに関しては会計ソフトなどを導入することにより、誰でも簡単におこなうことができるため、会計ソフトの導入も非常におすすめです。

【経費】漫画家の確定申告で経費にできるもの一覧

確定申告では1年間の収入から経費を差し引いた所得金額を計算することから始まりますが、そもそも経費にできるものにはどのような支出があるのでしょうか。

経費にできるものとできないものの判断は業種によって異なり、「事業に必要な支出であったかどうか」が非常に重要になります。漫画家が経費として処理できるものの具体例としては、次のようなものがあります。

・アシスタントへ支払う代金
・漫画活動に使用する画材やソフト代
・漫画活動をおこなう際に参考にする資料代
・作業場所が自宅であれば自宅の家賃

上記の家賃以外にも、電気代などの水道光熱費や携帯電話代などの通信費もあげられます。

しかし、これらの支出はすべて経費として処理できるわけではありません。自宅兼仕事場の場合は、経費部分とプライベート部分で按分する「家事按分」をおこなう必要があります。たとえば、家賃などの場合は、職場として使用する面積とそれ以外の面積で按分計算をおこないます。

あくまでも経費は「事業収入を得るために支出した費用」とされているため、関係のない部分の費用は経費から除外する必要があります。

【やり方・書き方】漫画家の確定申告、5つのステップ

それでは具体的に漫画家が確定申告をおこなう場合、どのようなステップで行わなければならないのでしょうか。ここではステップごとに必要な手続きや必要な書類について解説していきます。

ステップ1:必要書類の準備

確定申告の第1ステップは必要な書類を準備するところから始まります。必要な書類とは次のような書類が必要になります。

・収入を証明するための支払調書や明細書など
・経費を証明するための請求書や領収書、レシートなど
・各種控除証明のために必要な社会保険料の領収書や医療費の明細書など
・本人確認ができる書類

まずは上記の書類が揃っているかを確認し、紛失している書類などがある場合は早めに発行者へ連絡し、再発行が可能であれば対応してもらうようにしましょう。

ステップ2:確定申告書の作成

確定申告書の作成は国税庁のホームページで作成するか、税理士などに依頼して作成してもらうかのどちらかになります。

また、自力で作成する場合は、以下の方法があります。

・手書きで確定申告書を作成する
・会計ソフトを購入しソフトを使って確定申告書を作成する
・国税庁ホームページで確定申告書を作成する

ただし、青色申告をおこなう場合は、確定申告書の提出方法によって青色申告特別控除の金額が変動するため注意が必要です。

また、確定申告書の作成する際は「収入金額」「所得金額」「所得控除額」などの主要項目を中心に作成しますが、作成方法などがわからない場合は税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

ステップ3:「職業」や「業種」欄の記入

確定申告には収入や経費を記入する欄以外にも「職業」や「業種」「屋号」などの記載が必要な欄があります。これらの欄も記入する必要があるため、記入漏れに注意が必要です。

漫画家が確定申告する際の職業欄には「漫画家」や「文筆業」と記載することが一般的となっており、業種欄についても職業欄と同様に記載することが一般的です。

ステップ4:申告書の提出

確定申告書が完成すれば税務署に提出するステップとなり、提出する方法は主に次の3つの方法があります。

① 持ち込みによる書面提出
② 郵送による書面提出
③ e-Taxによる電子申告

いずれの提出方法も申告期限である3月15日まで(土日祝日の場合は翌日)に提出する必要があるため注意が必要です。

e-Taxについてはインターネット環境があれば、自宅でいつでもおこなうことができるため非常に便利です。また、e-Taxを利用した提出方法が65万円の青色申告特別控除の適用要件となっていることであることや、確定申告書と一緒に提出しなければならない添付資料の一部が免除となるなどメリットが多くあります。

ステップ5:納税または還付

確定申告書の納付手続きについては次のような方法があります。

・金融機関や税務署にて納付する「現金納付」
・指定口座から引き落としとなる「振替納税」
・e-Taxを利用し指定口座から引き落としとなる「ダイレクト納付」
・QRコードを利用しコンビニエンスストアでおこなう「コンビニ納付」
・クレジットカードやスマートフォン決済等を利用する「キャッシュレス納付」

また、所得税が還付される場合は、確定申告書に記載した指定口座に還付金が入金される流れになります。還付されるタイミングの目安としては「申告後1~2ヶ月前後」です。

まとめ

漫画家として活動を開始し、はじめての確定申告において、上記の知識をすべて網羅することは非常に難しいと感じるのではないでしょうか。上記以外にも「経費として処理できる・処理できない」といった判断や節税対策、そして何より大変なのが作業時間の確保です。

漫画家として活動しながら、日々の帳簿づけや確定申告書を作成することは決して簡単ではありません。時間に追われるあまりに誤った知識で確定申告をおこなってしまうと、思いがけない税金を納めてしまう可能性もあります。

そのため、日々の会計業務や税務に関して疑問や不安が少しでもある場合は、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。

田中貴久公認会計士事務所では漫画家やクリエイターをはじめ、さまざまな事業者様を多方面的にサポートいたします。まずは気軽にご相談ください。

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