
漫画家として活動していると、「これって経費にできるの?」と迷うことが多いのではないでしょうか。特に個人で仕事をしている場合、経費の扱いを誤ると、確定申告の際に余計な税金を支払ってしまう可能性があります。
本記事では、アシスタント代や画材費などの基本的な経費から、家賃・食事代といった判断が分かれるグレーな支出まで、漫画家にとって「経費になる・ならない」の境界線を具体例とともに徹底解説します。
漫画家の経費、基本の考え方
漫画家にとって経費とは、「作品を制作し、報酬を得るために必要な支出」のことです。確定申告では、売上(原稿料や印税など)を得るために直接必要な出費であれば、経費として認められます。
一方で、プライベートな支出や、仕事に関係ない趣味の費用などは経費にはなりません。つまり「事業としての必要性」があるかどうかが判断基準となるのです。
「事業関連性」が判断基準
漫画家の支出が経費として認められるかは「事業関連性」が判断基準です。たとえば画材を買うのは、事業で使用するためです。このように、支出が「事業と関連しているかどうか」が経費になるかの大きな分かれ目です。
しかし、趣味で描くイラストに使う画材や、友人にプレゼントするイラスト制作など、直接売上に結びつかない活動は経費になりません。あいまいな支出は、メモや日記で用途を明確に残しておくと安心です。
経費を証明する「領収書」の重要性
支出が経費であることを証明するために「領収書」は重要です。経費として支出を申告する際には、「そのお金を本当に使った」ことを証明する書類が必要です。
仮に領収書がない支出を申告すると、税務署から否認される可能性があります。経費を正当に認めてもらうためにも、領収書の保管と整理は欠かせません。インターネットで購入した場合は、購入履歴とクレジット明細などを併せて保管しておくと良いでしょう。
【経費項目一覧】これは経費になる!漫画家の経費一覧
漫画家として活動していれば、作品づくりにかかるさまざまな費用が発生します。これらの支出は、事業に直接必要なものであれば経費として計上可能です。ここでは、漫画家にとって代表的な「経費になる支出」をいくつかの項目に分けて紹介します。
それぞれの支出がどのような勘定科目に該当するのかを知っておくことで、確定申告の準備もスムーズに進められます。
アシスタント代・外注費
漫画制作においてアシスタントを雇った場合、その報酬は「外注費」または「給料賃金」として経費にできます。背景や仕上げ、ベタ・トーン貼りなどを手伝ってもらう場合も、同様に経費計上が可能です。
なお、個人に報酬を支払う場合には源泉徴収が必要になることがあります。確定申告での手続きが煩雑になる可能性があるため、税理士や会計ソフトを活用して正しく処理しましょう。
画材・ソフトウェア・PC等の費用
作画に使う画材やペンタブレット、液晶タブレット、パソコンの購入費も経費として認められます。また、CLIP STUDIO PAINTなどの作画ソフトやフォントのライセンス料も該当します。
高額な機材については、固定資産として減価償却が必要になるケースもあります。購入金額が10万円を超える機材については、税理士と相談しながら処理方法を決めると安心です。
資料代・書籍代(漫画、雑誌、映画など)
漫画や雑誌、映画、画集などを作画の資料として購入した場合、その費用は「新聞図書費」や「研究費」として経費にできます。特に、実在する背景や服装、時代考証などを調べる目的であれば、税務上も明確に事業関連性が認められやすくなります。
ただし、娯楽目的での購入やプライベートな鑑賞が目的とみなされると経費にできません。資料用としての用途を記録しておくと、確定申告の際にも安心です。
取材費・交通費
作品の舞台となる地域を実際に訪れる取材旅行や、参考資料のための美術館・資料館への訪問にかかる交通費・宿泊費・入場料などは、事業上の必要経費として認められます。
ただし、単なる観光旅行や私的な旅行と誤解されないよう、取材メモや写真、日程表などを残し、業務目的であることを証明できるようにしておきましょう。取材と私用が混在する場合は、按分(分割計上)も検討が必要です。
家賃・光熱費・通信費(家事按分)
自宅を作業場として使用している場合、家賃や電気代、水道代、インターネット通信費の一部を「家事按分」することで経費にできます。仕事に使っている部屋の広さや使用時間に応じて、合理的な割合で按分することが求められます。
たとえば、自宅の2部屋のうち1部屋を終日仕事に使っていれば、家賃の50%が経費対象になる可能性があります。按分計算はあくまで「妥当性」が重視されるので、根拠となる計算方法を記録しておくことが重要です。
判断に迷うグレーゾーン経費は「どこまで」OK?
漫画家の活動では、「経費にできるかどうか迷う」支出があります。こうしたグレーゾーンの経費が税務署に認められるかは、支出の目的や記録の有無によって決まります。
この章では、判断に迷いやすい代表例として「食事代」と「整体費用」を取り上げ、それぞれの取り扱いについて具体的に解説します。
食事代(打ち合わせ、一人での食事)
出版社の担当者と行う打ち合わせの飲食代は、「会議費」や「接待交際費」として経費にできます。ただし、プライベートの飲食代と分けるために、打ち合わせの内容や相手、日時、場所などを記録しておくようにしましょう。レシートの裏に簡単なメモを書いておけば、万が一の税務調査の際に役立ちます。
一方、一人での食事やコンビニの弁当代など、日常生活の一環とみなされる飲食費は、原則として経費になりません。業務との明確な関連性が求められます。
整体・マッサージ代は経費になる?
整体・マッサージ代は原則として経費になりません。長時間の作業による肩こりや腰痛など、身体的な不調を改善するために整体やマッサージに通う漫画家も多いでしょう。しかし、これらの費用は漫画家という事業とは関連がないものとして、経費として認められません。
ただし、医師の診断書があり、症状が業務に直接起因していると客観的に証明できる場合には、例外的に経費として認められる可能性もあります。とはいえ、かなりハードルが高く、実際には否認されるケースが多いため注意が必要です。
確定申告で経費を正しく申告するやり方
経費として計上した支出は、確定申告書に添付する「青色申告決算書」に記入して提出する必要があります。収入と支出を整理し、「経費」として記載することで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
集計には会計ソフトの利用がおすすめです。日々の支出を入力しておくだけで、決算書の作成やe-Taxで申告書の提出までスムーズに進められます。クラウド型ソフトなら仕訳が自動化され、作業の手間が大幅に軽減されます。
経費の種類ごとに、適切な勘定科目を選んで記帳することで、税務調査でのトラブルも防ぎやすくなります。帳簿の正確さと領収書の保管は、信頼される漫画家としての第一歩です。
まとめ

漫画家にとって、経費の正しい理解と計上は節税の基本です。ただし、「何が経費になるか」はケースによって判断が分かれることもあり、自分だけで判断するのはリスクを伴います。
特にグレーな支出や高額な買い物を経費にしたい場合は、専門知識のある税理士に相談するのが安全です。漫画家の働き方に詳しい税理士であれば、業界特有の実情を踏まえて、安心して任せられるアドバイスが得られるでしょう。
「経費になるか不安な支出がある」「もっと節税したい」という方は、まずは田中貴久公認会計士事務所にお問い合わせください。
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