YouTuberとして活動していると「どこまで経費で落とせるのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。動画制作に必要だからと購入した機材やソフト、さらには企画で使った消耗品まで、経費にできるのかどうか悩むケースは多いでしょう。実際に経費として認められるかは「動画制作やチャンネル運営に直接必要かどうか」で判断されます。

本記事では、経費の基本的な考え方や科目別の具体例を分かりやすく解説し、さらに副業YouTuberが注意すべきポイントや節税効果についても紹介します。

YouTuberの経費、基本の考え方

YouTuberの経費を判断する大原則は「動画制作やチャンネル運営に直接必要かどうか」です。

たとえば、撮影に使うカメラや編集用ソフトは明らかに必要な支出であり、経費に計上できます。一方で、日常生活で使うスマホ代や家賃全額を経費とするのは認められません。事業とプライベートの両方に関わる費用については「家事按分」を行い、事業に使った割合のみを経費にする必要があります。この線引きを理解しておくことが、経費計上の第一歩です。

【経費で落とせるもの一覧】YouTuberの経費を科目別に解説

YouTuberの活動で発生する代表的な経費は、確定申告で使用する「勘定科目」に沿って整理しておくと便利です。具体的には以下のような分類が考えられます。

・機材
・ソフトウェア費(カメラや編集ソフトなど)
・企画や撮影にかかる消耗品費や新聞図書費
・料理動画やゲーム実況に必要な食材費やゲーム課金
・通信費や家賃の一部(家事按分による計算が必要)
・外注費や交通費(編集代やロケでの移動費など)

これらを勘定科目ごとに整理し、領収書や利用明細と一緒に保管しておくことで、確定申告時にスムーズに処理ができます。

機材・ソフトウェア費

動画制作に不可欠なカメラ、マイク、照明、PC、編集ソフトの購入費や利用料は、当然ながら経費として計上可能です。特にYouTuberにとって画質や音質は重要であり、高性能な機材をそろえることは必要な投資といえます。

ただし、10万円以上の高額な機材については「減価償却」という会計処理が必要になります。これは一度に全額を経費化するのではなく、法定耐用年数に基づいて数年に分けて計上する方法です。たとえばカメラは5年、パソコンは4年などのルールがあるため、事前に確認しておくと安心です。この減価償却には一括償却資産・少額減価償却資産という例外もあるので注意が必要です。

企画・撮影費(消耗品費、新聞図書費など)

YouTubeの動画企画で使用した物品の購入費も、消耗品費として経費にできます。たとえば「〇〇を試してみた」企画で買った商品や、検証動画で使う材料などが該当します。さらに、撮影で必要となる小道具や衣装なども動画制作の一環として扱うことができます。また、情報収集やトレンド把握のために購入する雑誌や書籍、新聞は「新聞図書費」として経費計上が可能です。

これらは一見プライベートの支出に見える場合もありますが、動画制作に必要不可欠であると合理的に説明できれば認められるケースが多いです。領収書やレシートには「企画名」や「撮影で使用」といったメモを残しておくと、後々の申告や税務署からの質問にも安心して対応できます。

料理・ゲーム実況の費用は経費になる?

料理系YouTuberの場合、動画で使用した食材費や調理器具代は動画制作に直接必要なため経費にできます。たとえば「一週間◯◯生活」企画で購入した食材や、新しい調理器具のレビュー動画で使う商品は事業関連性が明確です。

同様に、ゲーム実況系YouTuberが購入するゲームソフトや、プレイ内容を視聴者に伝えるためのゲーム内課金も経費として認められる可能性があります。たとえば、新作ゲームを実際にプレイして課金要素をレビューする場合は「情報提供のための必要経費」と説明できます。

ただし、日常的な食費や私的なゲーム利用と区別できなければ経費として認められにくいので注意が必要です。証拠として企画書や動画タイトルと支出を紐づけて記録しておくと安心です。

通信費・家賃など

YouTuberの多くは自宅を撮影・編集場所として使用しており、その場合には通信費や光熱費、家賃の一部を経費にできます。

ただし、全額ではなく「家事按分」という考え方で事業利用分を算出することが必要です。たとえば、自宅の一部を撮影スタジオとして使っている場合、その面積割合や使用時間を基準にして按分計算を行います。インターネット代についても、動画投稿や編集作業に利用した部分を事業分として計上することが可能です。この際、按分基準を明確にしておくことで、税務調査でも合理的に説明できます。

外注費・交通費など

YouTubeチャンネルの運営にあたり、編集作業やサムネイル制作を外部のクリエイターに依頼するケースは少なくありません。こうした外注費も経費として認められます。また、撮影のためにロケ地へ移動する際の交通費や、打ち合わせ時の会議費も対象となります。さらに、企画のために特定の施設を利用した場合の利用料も経費にできます。

もっとも経費にするためには、支出が「動画制作に必要であった」と客観的に説明できなければなりません。外注先との契約書や請求書、交通費の明細は必ず保管しておきましょう。

副業YouTuberの経費の注意点

副業としてYouTube活動をしている場合も、経費にできる範囲は専業と同じです。カメラやPC、編集ソフトなど動画制作に必要なものは経費として計上できますが、注意すべきは「本業・プライベート・副業」が入り混じりやすい点です。たとえば普段の仕事や日常生活でも使用するパソコンやスマホを副業でも利用している場合、全額を経費にすることはできません。事業で使用した割合を明確にして「家事按分」を行い、適切な部分だけを経費にする必要があります。

また、副業の場合は収益規模が小さくても申告が必要となるケースが多いため、収入と支出を細かく記録しておくことが重要です。サラリーマンであれば勤務先の給与とYouTube収入を合算して確定申告する必要があり、経費の扱いを誤ると申告漏れや余計な税負担につながります。特に、給与所得控除と事業所得の区分を混同してしまうケースは注意が必要です。

さらに、YouTube活動を副業として行う場合は、本業の就業規則で副業が制限されている場合もあることに気を配る必要もあります。経費処理の正確性を保ちながら、勤務先とのトラブルも避けるためのバランスが求められます。

副業だからといって経費を軽視せず、専業と同じ基準で処理することで節税効果を得られるだけでなく、税務署から指摘されるリスクを減らすことにもつながります。

経費計上のメリットと節税効果

経費を正しく計上することは、YouTuberにとって大きなメリットがあります。最大の利点は、課税対象となる「所得」を圧縮できる点です。売上から経費を差し引いた額が所得となるため、経費が正しく反映されればその分だけ所得税や住民税の負担を減らすことができます。さらに、社会保険料のうち国民健康保険料は所得に応じて計算されるため、経費を計上することでトータルの負担を抑えることが可能です。

節税効果を最大化するには、レシートや領収書を整理しておくことが必須であり、曖昧な支出をそのままにしない工夫が必要です。経費管理を徹底することは、単なる節税にとどまらず、事業の収支を正しく把握するための基盤づくりにもなります。

まとめ

YouTuberが経費として計上できる支出は幅広く存在しますが、根本的な判断基準は「動画制作やチャンネル運営に直接必要かどうか」です。機材やソフト、企画で使う物品、料理やゲームの課金費用、通信費や外注費など、合理的に説明できれば経費化できます。

ただし、副業で活動している場合には特にプライベートとの境界が曖昧になりやすいため、家事按分のルールを正しく活用することが重要です。さらに、領収書や明細を整理して支出の用途を記録することも欠かせません。

もし「これは経費にできるのか?」と迷ったら、専門家である税理士に相談するのが最も安心です。YouTuberの実情に詳しい税理士なら、節税や将来の資金計画についても的確なアドバイスを受けられます。

田中貴久公認会計士事務所はYouTuberなどのクリエイターの税務に通じており、経費化や確定申告についてのアドバイス経験が豊富なので、お気軽にご相談ください。

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