
YouTubeで収益化に成功すると、多くのクリエイターが次に悩むのが「開業届を出すべきかどうか」という点です。
動画投稿が趣味の範囲であれば必要ありませんが、広告収入や企業案件などで継続的な収益が発生するようになると、事業としての扱いが必要です。開業届を提出することで、青色申告による節税や社会的信用の向上など、事業者としての大きなメリットを得ることができます。
本記事では、開業届を出すべきタイミング、提出による具体的な利点、さらに書き方のコツまで徹底解説します。YouTuberとして活動を本格化させたい方にとって役立つ内容です。
結論:YouTuberは収益化のタイミングで開業届を出すのがおすすめ
YouTuberが開業届を出す最適なタイミングは、チャンネルが収益化され、安定して収入が見込めるようになった段階です。YouTubeパートナープログラムに参加して広告収入が得られるようになり、企業案件やスーパーチャットによる定期的な収益が発生する場合は、単なる趣味ではなく「事業」としての性格が強くなります。税法上も、継続性と営利性が認められる活動は「事業所得」として扱うのが原則です。
一方で、収益が単発的な場合や、趣味の延長でわずかな収入しかない場合には「雑所得」として処理することも可能です。ただし、雑所得のままでは青色申告などの税制優遇を利用できません。そのため、YouTuberとしての活動を長期的に継続していくつもりなら、収益化を果たしたタイミングで開業届を提出するのが最も効果的です。
開業届を出すことで、税務署に正式に事業者として認められ、節税のチャンスを得られるだけでなく、経費管理や資金管理を整理しやすくなります。収益が増えてから慌てて提出するよりも、早い段階で準備しておくことで安心して活動を続けられるのです。
YouTuberが開業届を提出する3つのメリット
開業届を提出すると、YouTuberにとって以下のような大きなメリットがあります。
メリット①:最大の目的!「青色申告」で大幅な節税が可能に
開業届を出す最大の目的は、青色申告を選べるようになる点にあります。青色申告では、最大65万円の控除が適用され、所得税や住民税の負担を大きく減らすことができます。たとえば、年間100万円の利益が出た場合でも、65万円が控除されるため課税対象は35万円となり、実際の税額は大幅に下がります。
また、青色申告を選ぶことで受けられる優遇措置は控除だけにとどまりません。赤字が出た場合には3年間繰り越して黒字と相殺できる「損失繰越控除」や、家族に仕事を手伝ってもらった場合に給与を支払い、その分を経費として認められる「青色事業専従者給与」なども利用できます。これらは白色申告では受けられない制度であり、節税効果と経営上の柔軟性を高める大きな武器となります。
メリット②:屋号で銀行口座が開設でき、社会的信用度が上がる
開業届を提出すると、屋号を用いて事業専用の銀行口座を開設できます。
たとえば、YouTubeチャンネル名を屋号に設定すれば、プライベート用と完全に分けた口座管理が可能になります。資金の流れが明確になれば記帳や経費処理が簡単になり、確定申告の際もスムーズです。
さらに、屋号付きの銀行口座を持つことで、企業案件やスポンサーとの取り引きでの信用力が高まります。個人名義よりも事業名義のほうが信頼性があり、ビジネスパートナーから「本格的に事業をしている」という印象を持たれやすくなるのです。
また、経費の振り込みや売上入金をすべて事業用口座で行うことで、資金繰りの見通しも立てやすくなります。YouTuberにとっては事業基盤を固めるための大切なステップといえるでしょう。
メリット③:小規模企業共済に加入できる
開業届を提出することで、フリーランスの退職金制度とも呼ばれる「小規模企業共済」に加入できます。小規模企業共済は、毎月1,000円から7万円まで任意で掛け金を設定でき、その全額を所得控除として扱えるため、大きな節税効果を得られるのが特徴です。
たとえば、月2万円を拠出した場合、年間24万円がそのまま課税所得から差し引かれるため、所得税や住民税を大幅に減らせます。
さらに、積み立てた掛け金は将来の退職金代わりとして受け取ることができ、廃業時や老後の生活資金の備えにもなります。普通預金や保険と違って税制優遇が大きいため、長期的に安心して活動を続けたいYouTuberにとって心強い制度です。
加入できるのは開業届を出して事業者として認められた人のみなので、制度を活用するためにも開業届の提出は欠かせません。
【書き方】YouTuberの開業届、具体的な記入例
開業届は税務署に提出するシンプルな書類ですが、正しく記入することが大切です。特にYouTuberの場合、事業内容が一般的な職種と異なるため「何と書けば良いのか?」と悩む人も多いでしょう。基本的には以下のポイントを押さえれば安心です。
・氏名や住所:本人情報を正確に記入します。
・職業欄:一般的には「動画制作業」「インターネット事業」と書かれることが多く、YouTuberという表記も可能ですが、税務署が理解しやすい記載を選ぶとスムーズです。
・屋号欄:チャンネル名や活動名を記入して問題ありません。屋号を設定すれば、銀行口座開設などにも活用できます。
・事業の概要欄:活動の実態に合わせ、「YouTubeを通じた動画制作・配信」「広告収入・タイアップ案件」など、収益の仕組みが分かるように書きます。
このように、開業届の記入は難しくありません。大切なのは、事業内容を端的に説明できる言葉を選ぶことです。
職業欄・屋号欄の書き方
開業届で迷いやすいのが「職業欄」と「屋号欄」です。職業欄は「YouTuber」と記入しても問題ありませんが、税務署の担当者が分かりやすいように「動画制作業」や「インターネット広告業」といった表現を使うのが一般的です。これにより、事業の実態を誤解なく伝えられます。
屋号欄は必須ではありませんが、設定しておくと事業活動に便利です。多くのYouTuberはチャンネル名をそのまま屋号にしています。屋号があれば、銀行で事業用口座を開設できたり、請求書や契約書に屋号を記載できるため、対外的な信用度が上がります。
また、将来的に法人化を検討する場合にも屋号を使った実績が役立つことがあります。特に企業案件を扱うYouTuberにとって、屋号は信頼性を高める重要な要素といえるでしょう。
「事業の概要」欄の書き方
「事業の概要」欄は、自分の活動内容を端的に説明する重要な項目です。YouTuberの場合は収益の仕組みが多様なため、広告収入だけでなく案件やグッズ販売なども記入しておくと安心です。具体的には次のような書き方が参考になります。
・「YouTubeを活用した動画制作・配信業務」
・「広告収入、企業案件、スーパーチャットなどを通じた収益活動」
・「エンタメ系動画の企画・編集・配信」
自分のチャンネルの特徴に合わせて記入することで、税務署も事業内容を正しく理解できます。また、今後活動の幅を広げる可能性がある場合には、少し広めの表現にしておくのがおすすめです。
たとえば「動画制作・インターネット関連事業」としておけば、後々新しいジャンルの仕事にも対応しやすくなります。
最重要!「青色申告承認申請書」も一緒に提出しよう
開業届を提出する際には、必ず「青色申告承認申請書」も同時に提出することが鉄則です。開業届だけでは白色申告しか選べず、青色申告の特典を受けられません。
青色申告を行うことで、最大65万円の控除を受けられるほか、赤字の繰り越しや家族への給与支払いの経費計上など、節税効果の大きい制度を活用できます。
提出期限にも注意が必要です。青色申告承認申請書は、開業から2か月以内、またはその年の3月15日までに提出しなければ翌年からしか適用されません。つまり、収益化直後に届け出を怠ると、せっかくの節税メリットを1年分逃してしまう可能性があります。
開業届と一緒に申請書を提出することで、手続きを一度で済ませられるうえ、税務署に「きちんと事業をしている」という印象を与えることができます。YouTuberとして長期的に活動するなら、節税の基盤を整える意味でも必ず併せて提出しましょう。
まとめ

YouTuberが開業届を提出することには、多くのメリットがあります。収益化を果たした時点で届け出を行えば、青色申告による節税効果を得られるだけでなく、屋号口座の開設や小規模企業共済への加入といった将来に役立つ制度も利用可能です。
また、記入の際には「職業」や「事業の概要」をシンプルかつ分かりやすく書くことが重要です。
さらに、開業届を出すなら「青色申告承認申請書」も同時に提出し、節税メリットを最大化することを忘れないようにしましょう。事業としての体制を整えることは、収益の安定やスポンサーからの信頼にもつながります。
開業届や税務申告について不安があるのであれば、YouTuberなどクリエイターの税務に通じている田中貴久公認会計士事務所にお気軽にご相談ください。
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