最近では学生でも気軽に始められる職種として、イラストレーターが人気になっており、キャラクターデザインや雑誌など、様々な媒体でイラストレーターが活躍しています。

しかし、イラストレーターとして活動するにあたって、覚えておかないといけないことが「確定申告」です。

そこで今回は、確定申告が必要になるボーダーラインなどを中心に、イラストレーターのリアルな収入モデルなどを解説していきます。

イラストレーターの経費、基本の考え方

インターネット環境の普及に伴い、イラストレーターの収入源は紙媒体からWEB媒体まで幅広く存在し、収入の種類も多様化しています。ここではイラストレーターの多種多様な収入モデルを中心に、イラストレーターの基本的な考え方について解説していきます。

① クライアントワーク

イラストレーターの一番有名な収入モデルが「クライアントワーク」です。クライアントワークはクライアントからの直接依頼に基づいて、雑誌デザインや広告デザイン、キャラクターデザインなどを行い、クライアントから直接的に収入を得るモデルです。

しかし、クライアントワークは基本的に単発的な依頼であることが多く、継続的な収入は見込めません。そのため、複数の業務を組み合わせながら仕事をすることが効率的といえます。

また、納品する作品の質だけでなく、クライアントとのコミュニケーションスキルや、クライアントの考えを理解するスキルが非常に大事なポイントにもなります。これらを意識することで、クライアントからの信頼を得ることができ、継続的なクライアントワークに繋げることができます。

② IP(知的財産)関連の仕事

IPとは人の知的活動・創造的活動によって生まれたデザインなどのことをいいます。

イラストレーターはIP関連の仕事を行う場合もあり、映像制作やゲーム制作などのように、既存のキャラクターデザインの仕事に携わることで、高い報酬を得ることができる可能性があります。

しかし、高い画力が必要なことだけでなく、映像やゲームのストーリー性なども把握するスキルも必要になります。また、こういった現場ではチームで活動することがほとんどであるため、チーム同士で連携しながら作業を進めることができる能力も必要になります。

③ ストックイラスト・グッズ販売

イラストレーターは一度制作したイラストデザインなどを、ストックサイトで販売することも可能です。ストックイラストによる収入モデルは、クライアントワークのように単発的ではなく、一度販売を開始すれば継続的に収入を生む可能性があることが一番の特徴です。

その他にも、BOOTHやSUZURIなどにおけるグッズ販売や、最近ではLINEスタンプなど、気軽にイラストを販売できるメディアがあるため、ストックイラストは始めやすい収入モデルとしても注目されています。

また、自分のペースでイラスト制作をしたい場合や、空いた時間を有効活用したいと考えている人向けの収入モデルになっています。

イラストレーターの収入のリアル

イラストレーターの収入については、クライアントからの案件数や1件あたりの単価によって大きく変動します。また、経験やスキル以外だけでなく働き方によっても大きく変動し、フリーランスの場合と会社勤めの場合とでは、収入の差が生まれることもあります。

たとえば、フリーランスとして働くイラストレーターの場合、1件あたりの報酬体系は次のようになっていることが一般的です。

・直接契約の場合:数千円~10万円前後
・クラウドソーシングの場合:数千円~5万円前後
・スキルマーケットの場合:数千円~10万円前後

フリーランスの場合、1件あたりの報酬金額は幅が広く、受注する案件の内容によって大きく変動します。報酬単価を上げるためには案件数を増やしつつ、スキルや信頼度を高めていく必要があります。クライアントが制作依頼を求める関係性が築ければ、単価の金額を上げていくことができます。

また、フリーランスではなく、会社に所属するイラストレーターとして活動する場合、正社員の月給は次のような相場になっています。

・Web制作や広告会社:22万円前後/月額
・ゲーム制作会社:25万円前後/月額
・テレビ番組制作会社:20万円前後/月額

このように、イラストレーターの収入は経験値やスキルだけでなく、働き方や、案件の内容によって大きく異なり、階層構造(若手・中堅・ベテラン)で年収を区分すると次のように区分することができます。

・若手・新人:~200万円前後
・中堅:200~400万円前後
・ベテラン:600万円~1,000万円前後

ベテランのような高い収入を得るために重要なのは、現状の課題を意識し、しっかりと戦略を立てることです。あまり稼げていないと感じている場合は、自分にとっての課題を模索し、クライアントが満足するための戦略を立てていきましょう。

【ケース別】確定申告が必要になる所得のボーダーライン

イラストレーターとして活動するにあたり、多くの人にとって気になることが「確定申告が必要なのかどうか」です。確定申告が必要になるボーダーラインは働き方によって3つに区分することができます。

それぞれのケースでボーダーラインが異なるため、違いを正しく理解しておきましょう。

ケース①:専業(フリーランス)の場合

フリーランスの専業イラストレーターとして活動する場合、確定申告が必要になる所得のボーダーラインは「95万円」です。

所得税の計算では、所得金額から各種所得控除を差し引いた金額に所得税率を乗じて計算を行います。そして、所得金額から差し引かれる所得控除の1つが「基礎控除」であり、2025年からは最大95万円に引き上げられました(合計所得132万円以下の場合)。

そのため、所得金額が基礎控除の金額を超えない限り、所得税が発生しないことになるため、基礎控除の金額が1つの判断基準となります。

ただし、基礎控除の金額は、その年の所得金額に応じて「95万円~58万円」の範囲で変動するため、自身の基礎控除額がいくらになるかによって判断基準の金額が異なることに注意が必要です。

ケース②:副業イラストレーターの場合

会社勤めの傍らでイラストレーターを行っているケースは珍しくなく、この場合、副業の所得金額が「20万円」を超えた場合に確定申告が必要になります。

給与以外の副業については、所得金額が20万円を超える場合に確定申告を行わなければならないと定められているため、所得金額が20万円を超えた時点で確定申告が必要になります。

たとえば、給与が年間300万円あり、イラストレーターの副業収入が50万円、諸経費が20万円である場合、副業の所得金額が30万円(50万円-20万円)となるため、確定申告が必要になります。

あくまでも、副業の所得金額が20万円を超える場合に確定申告が必要ということになっているため、給与の金額は関係ないことになります。この他にも確定申告が必要な条件は複数あるため、必ず確認するようにしましょう。

ケース③:学生イラストレーターの場合(扶養の壁)

最近では、中学生や高校生などでもイラストレーターとして活動しているケースもあり、基本的には上記のケースと同様の考え方で確定申告が必要であるかを判断する必要があります。

しかし、ここで注意が必要なのが扶養関係です。学生の場合は親の扶養親族となっていることがほとんどです。そのため、イラストレーターの所得金額によっては、親の扶養から外れる可能性があるため注意が必要です。

扶養親族の条件は年間収入が「123万円」(いわゆる123万円の壁)となっていますが、年収123万円を超えた場合でも以下の条件を満たす場合は、年収188万円までは段階的な扶養控除を受けることができます。

・年齢が19歳以上23歳の親族
・その年の合計所得金額が150万円超188万円以下の親族

上記の年収を超える場合は、自身が親の扶養親族になっているかどうかを確認し、場合によっては扶養者に伝える必要があります。

収入なしでも開業届は出すべき?

個人が事業を始める際には、税務署へ「開業届」を提出する必要があります。開業届は税務署へ事業を始めたことを報告するための書類となっており、原則として、事業開始日から1ヶ月以内に提出が義務付けられています。

開業届が未提出である場合の罰則等はありませんが、開業届を提出することで「青色申告が可能になる」「赤字の金額を翌年に繰り越すことができる」などのメリットが多くあるため、収入が0円でも提出することをおすすめします。

また、収入を計上するタイミングについても注意が必要です。収入を計上するタイミングはお金をもらったタイミングではなく、商品などを引き渡したタイミングやサービスを提供したタイミングです。

たとえば、X1年中に納品が済んでいるが、納品代金を翌X2年に受け取った場合、収入が発生したのはX1年ということになり、X1年分の確定申告で収入に計上する必要があります。

そのため、「 お金を受け取っていない = 収入が0円 」と安易に判断しないように注意しましょう。

まとめ

イラストレーターの収入モデルは多種多様化しており、確定申告が必要であるかの判断や、税金の計算など複雑になる場合も珍しくありません。特に学生イラストレーターや副業イラストレーターなど、個々の活動状況に合わせて最適な節税方法などを考えていく必要もあります。

しかし、イラストレーターの活動の傍らで最新の税制を確認しつつ、節税対策を行っていくことは非常に困難であり、現実的であるともいえません。

少しでも税金に関する不安や悩みがある場合は、最適な節税対策と確実で正確な申告を行うためにも、イラストレーターやクリエイターの確定申告などを専門としている税理士などに依頼することをおすすめします。

田中貴久公認会計士事務所では漫画家やイラストレーターをはじめ、様々な事業者様を多方面的にサポートいたします。まずは気軽にご相談ください。

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