
同人作家として活動していると、イベント売上やBOOTHなどのネットショップ収入が「確定申告でどう扱われるのか?」と疑問に思う方は多いでしょう。とくに同人活動は趣味と仕事の境界があいまいであり、収入や経費の計上方法を誤ると、余計な税金を払ったりペナルティを受けたりするリスクがあります。
本記事では、同人作家に特有の収入源や経費の考え方、確定申告の基礎をわかりやすく解説します。副業・専業いずれの場合でも役立つ内容となっていますので、正しい知識を身につけて安心して創作活動を続けましょう。
【収入編】同人作家の収入、どうやって計上する?
同人作家の収入は、即売会の現金売上、BOOTHやFANBOXなどプラットフォーム経由の売上、通販の振込、原稿料・デザイン料・グッズ制作の受託収入など多岐にわたります。これらの収益をどのように計上するべきかを確認しましょう。
コミックマーケットなど即売会での売上
即売会の現金売上は、領収データが残りにくい分、当日記録が命です。開始時の釣り銭を別袋で管理し、閉会後に売上金から釣り銭を差し引いて「純売上」を算出します。
サークル名・イベント名・日付・タイトルごとの頒布数・単価・合計を売上表に記入し、在庫数の増減と一致するかを確認しましょう。割引・おまけ・セット販売をした場合は注記を残し、不一致が出たら「誤釣り銭」「破損・汚損」「返品」など理由をメモ。交通費・宅配便送料・サークル参加費は領収書を保存し、売上表と同じイベント名で紐づけます。後日通販在庫に回す場合は、在庫移動の記録も忘れずに。
可能ならPOSアプリや表計算のテンプレを使って当日入力→当日締めまで終えると、後処理のミスを大幅に減らせます。
BOOTH・FANBOXなどプラットフォーム経由の収入
プラットフォーム経由の売上は、手数料控除前の「売上総額」を収入に、決済手数料・プラットフォーム手数料は「支払手数料」として経費処理します。
送料・梱包材代を購入者負担にしている場合は、原則として売上に含めたうえで、発送費は「荷造運賃」で経費処理。クーポンやキャンペーンの値引きは、売上側で値引き処理として一貫させます。ダウンロード商品と物販で科目を分けると分析が容易です。返品・チャージバックが発生したときは、該当注文番号と相殺記録を必ず残しましょう。
売上計上のタイミングは、各サービスの注文確定/支払い確定基準に合わせて期末処理を統一すれば十分です。月次で「プラットフォームレポート→売上台帳→銀行入金」の三点突合を行い、不一致があればその月のうちに原因究明して修正します。
資料代・ソフトウェア代
創作に直接必要な資料やツールは、原則として経費計上が可能です。
参考書籍・漫画・雑誌・映像作品・写真集・美術展チケットなどは「資料代」、CLIP STUDIO PAINTやPhotoshop、フォントライセンス、3D素材・写真素材、効果音・BGM、配信ソフトや収録ツールのライセンスは「ソフトウェア代」または「使用料」で処理します。クラウドストレージやバックアップ、ドメイン・サーバー費用、プロジェクト管理ツールのサブスクも対象になり得ます。
私用と共用のツールは家事按分(例:業務:私用=7:3)で合理的に按分し、按分根拠をメモ。高額な機材(PC・液タブ・カメラ等)は減価償却の対象になる場合があるため、購入金額と耐用年数の管理を。いずれもレシート・領収書・購入履歴のスクリーンショットを保管して説明可能性を確保しましょう。
【経費編】同人作家の経費にできるもの一覧
同人活動の経費は「収入を得るために必要な支出」であることを説明できれば幅広く認められます。
まず代表的なのは印刷・製本・特殊加工などの印刷費で、紙代やインク、OPP袋や段ボールといった梱包資材の購入費も含まれます。
イベント参加に伴うサークル参加費や委託手数料、ブース備品費、会場への交通費や宿泊費、搬入出の宅配料金は該当イベント名と紐づけて管理します。
販売プラットフォームやクレジット決済の手数料は「支払手数料」、購入者負担の送料は原則売上に含め、発送費は「荷造運賃」で処理するなど、処理方法を期中で一貫させることが重要です。
宣伝広告費として、SNS広告や名刺・フライヤー、告知サイトの維持費が挙げられます。表紙デザイン・装丁・翻訳・入稿データ作成・校正などの委託は外注費として計上します。通信費は固定回線やモバイル回線、クラウドストレージ、ドメイン・サーバーなどが対象です。
ソフトやライセンス費では、CLIP STUDIO PAINT や Photoshop、フォントライセンス、写真・3D素材、BGM・効果音の利用料が該当します。
ペンや原稿用紙、USBメモリなどの小物は消耗品費です。PC・液タブ・カメラ・照明・プリンタなどの機材は金額や耐用年数に応じて消耗品か減価償却かを判断します。
自宅作業場の家賃・光熱費・通信費は、面積や作業時間など合理的な基準で家事按分します。按分比率は根拠を決めて継続適用し、メモを残すと安心です。
会議費(打ち合せ時の軽飲食)やオンライン会議ツールの利用料、資料代としての書籍・漫画・雑誌、映像作品、展覧会チケットなども、創作に直接必要であれば経費になり得ます。
運用面では、レシート・領収書・通販履歴・スクリーンショットを保存し、イベント名や注文番号で台帳と紐づけます。毎月「売上台帳・銀行口座・プラットフォームレポート」を突合し、不一致はその月のうちに解消しましょう。返品・値引・クーポンの扱いは、売上側と費用側のどちらで調整するかを統一しておくと期末処理がスムーズです。
一方で、私用支出の混在、証憑の欠落、過大な按分、現金立替の仕訳漏れは否認リスクを高めます。経費に落とす際は「創作と収益にどう結びつくか」を説明できる証跡を意識し、記録とルールをぶらさず運用しましょう。
【働き方別】確定申告が必要になるのはいつから?
確定申告が必要となるのはいつからでしょうか。同人作家としての活動が「副業」なのか「専業(個人事業主)」なのかで、確定申告が必要になる収入のラインが異なるので、分けて確認しましょう。
副業で活動している場合(所得20万円の壁)
副業の同人所得が年間20万円を超えれば、所得税の確定申告が必要です。所得は「売上−必要経費」で計算し、イベント費・印刷費・手数料などを漏れなく控除することが重要です。
なお、20万円以下であっても住民税は別途申告が必要です。会社に副業を知られたくないなら住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」にしましょう。
また、医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税ワンストップ特例を使っていない等の理由で確定申告を行う年は、20万円以下でも副業分を含めて申告します。雑所得として申告する場合でも、売上台帳・領収書・サイトの取引履歴を保存し、年次で整合が取れるよう月次で突合する習慣をつけましょう。
専業(個人事業主)で活動している場合(所得95万円の壁)
専業で継続的に収益を上げる場合は、事業所得として扱われることが一般的です。なお、所得税基礎控除95万円を超えたら確定申告が必要です(2024年までは48万円)。
税理士に相談するメリットと選び方
同人は「趣味×ビジネス」の境界で経費判断が難しく、青色申告の帳簿要件や按分、期末棚卸・在庫評価など専門知識が問われます。クリエイター案件に強い税理士なら、プラットフォーム手数料・委託手数料の扱い、デジタル販売の区分、広告費の適正化、減価償却や家事按分の根拠づくりまで具体的に助言可能です。期中からの月次レビューで黒字・資金繰り・納税見込みを早めに把握でき、申告直前のドタバタを防げます。
選び方の基準となるのは次の事項です。
①フリーランス・クリエイター領域の実績
②会計ソフト連携(データ連携・レシート読み取り)
③オンライン対応・チャット相談の可否
④料金体系(記帳代行・申告報酬・年額パッケージ)
⑤相性とレスポンス
まずは無料相談で実務事例と対応範囲を確認し、継続支援の可否を見極めましょう。
まとめ

同人作家の収入は、イベント売上やBOOTHなど多岐にわたり、正しい方法で計上しなければ思わぬ税負担につながります。また、資料代やソフトウェア代など、活動に必要な経費を漏れなく計上することも重要です。
副業か専業かによって確定申告が必要となる基準額は異なりますが、どちらの場合でも収支の記録を徹底することが第一歩です。
不安がある場合は、同人活動に理解のある税理士へ相談することで、適切なアドバイスや節税対策を得られ、安心して創作活動に専念できます。税務を味方につけることは、創作を継続するための大きな力となるでしょう。
田中貴久公認会計士事務所は同人作家などのクリエイターの税務に通じており、経費化や確定申告についてのアドバイス経験が豊富なので、お気軽にご相談ください。
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