VTuberとして活動すると、スーパーチャットや広告収入、グッズ販売などから多様な収入を得られます。しかし、収入が一定額を超えると確定申告が必要になり、収入や経費の整理方法に悩む人も少なくありません。特にVTuberはアバター制作や配信機材など独特の支出が多く、どこまで経費にできるか判断が難しいのが実情です。

本記事では、収入の計上方法や経費の基本、さらに事務所所属と個人勢での違いをわかりやすく解説します。

VTuberの収入源、どうやって確定申告で計上する?

VTuberの収入はスーパーチャットや広告、メンバーシップ、グッズ販売など多岐にわたります。確定申告では漏れなく正確に記録し、収入総額で計上することが重要です。

配信プラットフォームからの収入(スパチャ、広告収入など)

YouTubeのスーパーチャットや広告収入、チャンネルメンバーシップ、Twitchのサブスクやギフトなどは、VTuberにとって代表的な収入源です。これらの収益は、利用者との契約主体がプラットフォームであるため、VTuberに支払われるのは「分配済み金額(振込額)」のみです。

したがって、確定申告では、この振込額をそのまま収入として計上します。従来よく紹介されていた「手数料を経費に計上する」方法は取らず、あくまで実際に入金された金額が収入金額になります。

ただし、収益明細や売上レポート、通帳の記録は保存しておき、申告時に裏付けられるようにしておきましょう。

グッズ売上・ボイス販売

BOOTHやFANBOXなどでのグッズや音声コンテンツ販売も、VTuberにとって大きな収入源となります。例えば1万円の商品が売れて手数料1,000円を差し引かれ、9,000円が振り込まれた場合でも、収入は1万円で計上し、1,000円を「支払手数料」として処理します。発送の送料や梱包材の費用は「荷造運賃」や「消耗品費」として経費に計上できます。

販売点数が増えると管理が複雑になるため、商品名や売上総額、手数料、振込額を整理した売上台帳を作成すると効率的です。注文履歴やメールを保存しておけば収支確認や税務調査の際にも役立ち、節税効果を最大限に活かすことができます。

【経費一覧】VTuberの確定申告で経費にできるもの

アバター制作費、配信機材、ソフト利用料、外注費、家賃や通信費の家事按分、イベント交通費など、収入獲得に必要な支出は経費として計上できます。

アバター(Live2D・3Dモデル)の制作・依頼費

VTuber活動の核となるアバターの制作費用は、イラストレーターやモデラーに依頼した場合も含め、経費として計上できます。Live2Dや3Dモデルの新規制作費用、改修や追加パーツの費用も対象です。

ただし、数十万円以上の高額なモデルについては、一度に全額を経費化せず、数年に分けて費用化する「減価償却」の対象になる場合があります。

契約金額や納品内容に応じて正しい処理を行うことが大切です。請求書や領収書を必ず保存し、どの配信や活動に使用したかをメモしておくと、税務署に説明する際もスムーズです。

PC・配信機材・ソフトウェア費

VTuber活動には高性能なPCやマイク、オーディオインターフェース、キャプチャーボード、照明機材などが必要です。これらの購入費用は経費計上できます。さらに、動画編集ソフトや配信ソフトの利用料、BGMや効果音素材のライセンス料も対象となります。

10万円以上の高額機材は減価償却資産として数年に分けて経費化し、少額の備品や短期で消耗するものは消耗品費として処理します。購入履歴や領収書を必ず残し、使用目的が配信活動であることを説明できるようにしておくことが重要です。

イラスト・動画編集などの外注費

サムネイル画像や待機画面、動画編集を外部に依頼した場合の費用は外注費として経費計上できます。BGMや効果音の作曲依頼、字幕入れやモーショングラフィックスの制作も同様です。

外注先が法人か個人かによって源泉徴収の必要性が変わるため、契約内容を確認し正しく処理することが求められます。やり取りの履歴や納品データを保存し、活動との関連性を説明できるようにしておくと安心です。

外注費はコンテンツのクオリティを高めるために不可欠であり、正しく申告すれば税負担を軽減できます。

事務所所属と個人勢の確定申告の違い

事務所所属と個人勢では税務処理が大きく異なります。所属の場合は給与や業務委託報酬、個人勢は自ら収入と経費を整理し申告を行う必要があります。

事務所(ホロライブなど)からの報酬は「給与」か「事業所得」か?

事務所所属VTuberは契約形態によって所得区分が変わります。専属契約で給与として支払われる場合は給与所得となり、源泉徴収や年末調整が行われるため確定申告の手間は少なくなります。

ただし、経費を自分で計上することはできません。一方業務委託契約で報酬を受け取る場合は事業所得または雑所得となり、経費を自分で申告できます。PCや機材費、外注費などを計上できるため節税につながりますが、帳簿を付ける必要があり、管理の負担も増します。

契約内容によって税務上の扱いは異なるため、契約書を確認し、わからない点は事務所や税理士に相談して正しく判断することが重要です。

個人勢(独立VTuber)の注意点

個人で活動するVTuberは収入と経費をすべて自分で管理し、確定申告を行わなければなりません。

YouTubeやTwitchの広告収入、グッズやボイス販売の売上など、収入源ごとに売上総額・手数料・振込額を整理することが不可欠です。経費についてもアバター費用、配信機材、外注費、通信費などを区分し、証憑を保存しておく必要があります。

さらに売上が年間1,000万円を超えると消費税の課税事業者となるため、申告義務が発生します。インボイスの登録を行うと1,000万円を超えなくても消費税の課税事業者となります。

青色申告を選べば最大65万円の特別控除や赤字の繰越が利用でき、節税効果は大きいですが、複式簿記での帳簿付けが条件です。会計ソフトを活用し、税理士に相談しながら正確な管理を行うことが推奨されます。

VTuber(ライバー)の確定申告、困ったら専門の税理士へ

VTuberの確定申告は収入源の多様さや契約形態によって処理が複雑になりがちです。所属か個人勢かで所得区分や経費計上の可否が異なり、判断を誤ると申告漏れや過少申告のリスクがあります。

税理士に相談すれば、契約内容に応じた最適な処理方法や節税のポイントを教えてもらえるだけでなく、青色申告の導入や家事按分、減価償却の取り扱いなど細かい部分まで安心して任せられます。さらに申告業務を代行してもらえば、自分は配信や制作に集中できるという大きなメリットもあります。

最近はオンライン相談に対応する事務所も多く、地域を問わず依頼可能です。不安がある場合は早めに専門家に相談し、正しく申告できる体制を整えましょう。

まとめ

VTuberはスーパーチャットや広告収入、グッズ販売など多様な収入を得られる一方、アバターや機材、外注費など独特の支出も発生します。確定申告では収入を漏れなく総額で計上し、必要な支出を経費として整理することが大切です。

事務所所属か個人勢かで税務処理は異なり、経費を計上できるかどうかも変わります。個人勢は青色申告の利用で節税効果を得られる反面、帳簿管理の負担も大きいため注意が必要です。

判断に迷ったら早めに税理士へ相談し、正しく申告することで安心して活動に集中できる環境を整えましょう。

田中貴久公認会計士事務所はVTuberなどのクリエイターの税務に通じており、経費化や確定申告についてのアドバイス経験が豊富なので、お気軽にご相談ください。

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