フリーランスとして独立したばかりの方にとって、税金は最初の大きな壁となりがちです。毎月の仕事に追われる中で「いくら払う必要があるのか」「そもそも確定申告はどの時点で必要になるのか」といった疑問を抱えるのは自然なことです。

特に1年目は収入や経費の把握も難しく、将来の納税額を予測できず不安に感じる方も少なくありません。

本記事では、フリーランスが支払う主な税金の種類や納付のタイミング、さらに収入別のシミュレーションを通じて税金の全体像を整理します。

正しい知識を持つことで「思ったよりも負担が大きい」と焦る前に、計画的な資金管理と安心した事業運営が可能になります。

フリーランスが支払う税金一覧と、いつ払うのか

フリーランス(個人事業主)が負担する可能性のある税金は、大きく分けて4種類です。

まず中心となるのは所得に応じて課される「所得税」です。毎年の確定申告を通じて計算し、通常は3月15日までに納付します。

次に、前年の所得に基づいて課税される「住民税」があります。これは6月から翌年5月までの1年間、原則として年4回に分けて納付する仕組みです。

また、課税売上高が一定額を超えると「消費税」の納税義務も発生します。特に2023年からはインボイス制度の導入により、課税事業者となるかどうかの判断が多くのフリーランスに迫られています。

さらに、事業所得が一定額を超えた場合には「個人事業税」が都道府県から課されます。これらの税金は種類ごとに納付の時期が異なるため、年間スケジュールを把握し、資金を確保しておくことが安定した事業運営の鍵となります。

【税金シミュレーション】収入別の納税額を計算してみよう

「フリーランスの税金は高すぎる」と感じる方は多いですが、実際には仕組みを正しく理解することが重要です。ここでは、年収200万円・400万円・600万円の3パターンで、所得税と住民税を概算してみます。

年収の目安 課税所得の想定 所得税(復興税含む) 住民税(所得割+均等割) 合計負担額
約200万円 約120万円 約6.1万円
(120万×5%+復興税2.1%)
約12.5万円(120万×10%+均等割0.5万) 約18.6万円
約400万円 約250万円 約15.6万円
(195万×5%+55万×10%+復興税2.1%)
約25.5万円(250万×10%+均等割0.5万) 約41.1万円
約600万円 約400万円 約38.0万円
(195万×5%+135万×10%+70万×20%+復興税2.1%)
約40.5万円(400万×10%+均等割0.5万) 約78.5万円

この表からわかるように、課税所得が増えるにつれて税負担は大きくなります。住民税は原則10%と均等割で計算されるため、同じ課税所得なら所得税よりも負担が重くなるケースも多く見られます。

実際の金額は基礎控除や社会保険料控除、配偶者控除などの有無、また自治体ごとの均等割額によって変動します。したがって、この表はあくまで「課税所得を固定した場合の目安」として活用してください。

フリーランスの確定申告、いくらから必要?

フリーランスにとって確定申告が必要になるかどうかは、「所得の金額」が基準となります。ここでいう所得とは、売上から経費を差し引いた金額のことです。

専業か副業かによって基準は異なり、専業フリーランスの場合は年間95万円を超えると申告義務が発生します。一方、副業で会社員として給与所得を得ている方は、副業所得が20万円を超えた時点で申告が必要になります。

この基準を把握していないと、申告漏れによる追徴課税などのリスクにつながるため、早めに確認しておくことが重要です。

専業フリーランスの場合:所得95万円の壁

専業で活動しているフリーランスの場合、年間の合計所得が95万円を超えると、基本的に確定申告が必要です(2024年までは48万円)。

この95万円という数字は、すべての納税者に適用される基礎控除額に基づいています。基礎控除額は段階的になっており、所得が132万円以下であれば95万円が基礎控除額なので、所得が95万円を超えると確定申告をすることになります。たとえば、売上が200万円で経費が100万円かかった場合、所得は100万円となり、この時点で確定申告が必要となります。

逆に、売上が少なく経費で相殺されて所得が95万円以下に収まる場合には、申告義務は発生しません。

ただし、還付を受けられる可能性があるケース(源泉徴収を受けている仕事など)では、義務がなくても確定申告をした方が有利な場合もあります。

専業フリーランスは生活の基盤が事業収入に直結するため、基礎控除の仕組みと申告要件を理解しておくことが、税務トラブルを避ける第一歩です。

副業フリーランスの場合:所得20万円の壁

会社員など給与所得を持つ方が副業でフリーランス活動をしている場合には、さらに注意が必要です。

副業としてフリーランスで活動している場合、副業の所得が年間20万円を超えた時点で確定申告の義務が発生します。

たとえば、副業で年間売上が60万円あり、必要経費が30万円かかった場合、所得は30万円となり、20万円の基準を超えるため申告が必要です。逆に、所得が20万円以下であれば申告義務はありません。

もっとも、医療費控除やふるさと納税の控除の制度を利用するためには、別途確定申告が必要になる点に注意しましょう。

副業の所得が少額だからといって無申告を続けると、税務署から指摘を受け、追徴課税されるリスクもあります。

副業フリーランスは「20万円の壁」を境に申告要否が変わるため、年間の収入と経費をきちんと記録し、早めに準備を整えるようにしましょう。

確定申告の基本(やり方の概要)

フリーランスが避けて通れないのが確定申告です。確定申告とは、1年間の所得と経費を集計し、納めるべき税金の金額を国に報告する手続きのことです。やり方は大きく分けて3つあります。

ひとつは国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用してパソコンやスマホで作成し、e-Taxで電子申告する方法です。

もうひとつは紙の申告書を作成して税務署に提出する方法。

そして近年は会計ソフトを利用する人も増えています。クラウド型ソフトを使えば日々の売上や経費を入力するだけで、自動的に帳簿が作成され、申告書もスムーズに作れるのが大きなメリットです。

提出の期限は原則3月15日で、遅れると延滞税や加算税が発生するため注意が必要です。申告の流れを理解し、自分に合った方法を選ぶことで負担を軽減しながら正確に申告ができます。

確定申告しないとどうなる?無申告のリスク

確定申告が必要なのに行わない場合、重大なリスクが生じます。まず本来納めるべき税額に加えて、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。

特に意図的に申告を怠ったと認められると、加算税率が高くなり負担が大きくなります。また、無申告の状態が続くと税務署から調査が入り、過去数年分をさかのぼって追徴課税される可能性もあります。

さらに、金融機関からの信用にも影響を与えるため、将来融資を受けたいと考える場合に大きなマイナスとなります。また、賃貸の審査に影響を与えることもあります。

フリーランスにとって納税は社会的信用の基盤でもあるため、「少額だから大丈夫」「副業だから見逃される」と安易に考えず、必ず期限内に申告することが重要です。無申告リスクを理解しておくことで、日頃から帳簿管理を怠らず、安心して事業を継続できます。

まとめ

フリーランスとして働くうえで、税金は避けられない大きな課題です。所得税・住民税・消費税・個人事業税といった複数の税金を把握し、それぞれの納付時期を理解しておくことは、資金繰りを安定させるうえで不可欠です。また、収入別のシミュレーションを行うことで、あらかじめ納税額を見積もり、余裕を持って準備できます。さらに、確定申告の要否を判断する「95万円の壁」「20万円の壁」を理解し、無申告によるリスクを避けることも重要です。

しかし、実際の確定申告は帳簿付けや控除の適用など専門知識を要する場面が多く、慣れないうちは不安を感じやすいものです。もし「税金が高すぎる」「自分でやるのは心配」と感じたら、フリーランスに強い税理士へ相談するのが最善の方法です。

田中貴久公認会計士事務所は、漫画家やイラストレーターなどクリエイターをはじめとしたフリーランスの確定申告・税務に強みがあるので、お気軽にご相談ください。

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