
最近ではYouTuberやVTuberなどを中心に、ネットワーク環境を利用した「ライバー」が注目を集めています。ライバー活動で収入を得る際に心配になるのが「確定申告って必要なのだろうか」「確定申告ってどうやるの」といったことではないでしょうか。
ライバーはスパチャやグッズ収入など、収入が多様化していることや特有の経費もあるため、確定申告の計算が複雑になるケースが多く見受けられます。
そこで今回は、VTuberにおける確定申告の難しさと税理士の選び方のポイントなどについて解説していきます。
なぜVTuberには「専門」税理士が必要なのか?
確定申告は本来自分自身で行う手続きですが、なぜ税理士が必要なのでしょうか。また、税理士に依頼する際においても、税理士であれば誰でも良いのではなく、より専門的な税理士であるかが大事なポイントになります。
まずは、VTuberの確定申告における専門の税理士の必要性について、ポイントごとに確認していきましょう。
VTuberの収入源が複雑すぎるため
専門の税理士が必要になる理由の1つとして、VTuberの多様化した収入源によって、会計処理が複雑になってしまうことが挙げられます。VTuberの収入源は主に次のようなものがあり、その種類は様々なものになっています。
・広告収入
・スパチャ
・メンバーシップ
・PR案件報酬
・グッズ販売
・ボイス販売
収入の多くは企業からの報酬であることが多く、入金のタイミングなどは企業によって差があります。しかし、確定申告では入金額をすべて集計すればいいと思いがちですが、必ずしも入金額が収入額になるとは限りません。
収入額として計上すべき金額は、入金の際に差し引かれる「源泉徴収所得税」や「振込手数料」「その他手数料」を含めた金額です。差し引かれた金額を収入額として確定申告してしまうと、誤った計算となってしまうため注意が必要です。
また、売上が確定したにもかかわらず、入金が遅れるケースもあります。このような場合、入金が遅れた分の売上は未収金として収入に計上しなければなりません。
このように、それぞれの入金タイミングや計上方法が異なり、正確な会計処理には専門知識が必要になります。
VTuber特有の経費を見逃さないため
VTuberには撮影機材や小道具代などの経費以外にも特有の経費があり、これらの経費を見逃さないためにも専門の税理士が必要です。たとえば、VTuberの経費としては次のようなものがあります。
・カメラやライトなどの撮影機材
・衣装やメイク等にかかる費用
・配信するための部屋代
・配信に使用するゲームやソフトなどの機材代
・所属事務所のマネジメント料等
・携帯電話代
・イラストや音楽等の制作費
・広告宣伝費
また、自宅で配信などを行う場合は、水道光熱費や通信費なども経費になる場合があります。ただし、自宅兼事務所で水道光熱費等を経費にする場合は「按分計算」が必要です。按分計算は業務用の経費と自宅分の経費を区分して計算します。
按分計算の基準は「家屋全体の床面積」と「配信部屋など事業用部分の床面積」の割合で行う場合や、業務時間などによって計算する場合もあります。
たとえば、電気代が月10,000円で配信部屋の床面積が家屋全体の30%程度だった場合、3,000円(10,000円×30%)のみがその年の経費として計上できます。
【重要】事務所所属と個人勢の確定申告の違い
VTuberの確定申告のやり方については、働き方や事務所との契約形態によって異なります。具体的には次の3つの区分に分かれます。
①事務所との雇用契約により給与を支給されている場合
②事務所に所属しマネジメント契約を結んでいる場合
③事務所に所属しエージェント契約を結んでいる場合
①の場合は、事務所から給与を支給されているため、原則として確定申告は必要ありません。ただし、給与収入が2,000万円を超える場合や、年末調整で処理できない事情(医療費控除、住宅ローン控除の初年度など)がある場合は確定申告が必要です。
年間の所得税は毎月の給与から天引きされ、12月頃になると所属事務所がその年の所得税を計算してくれます。この計算手続きを「年末調整」といい、年末調整によって毎月の天引きされている所得税額を精算してくれるため、確定申告は不要になります。
②の場合は、個人事業主としての確定申告が必要になります。
VTuberは事務所にマネジメント報酬を支払い、VTuber活動による収入は活動内容に応じて本人が直接受け取る形になります。ただし、この場合は給与として受け取っている訳ではないため、確定申告が必要になります。
また、確定申告では事業規模によって所得の区分が異なり、所得区分に応じて計算方法も異なります。一般的に事業として活動している場合は「事業所得」、VTuber活動が小規模である場合は「雑所得」に分類されます。
③の場合は、マネジメント契約と同様の取り扱いとなり、個人事業主として確定申告が必要になります。また、所得区分についても事業規模によって判断することになります。
VTuber(ライバー)が税理士に依頼するメリット
VTuberが税理士に依頼するメリットは様々ありますが、ここでは3つのメリットを紹介します。
1つ目は「時間の有効活用」です。確定申告をはじめとする税務手続きや日々の会計業務は、多くの手間と時間を必要とします。
たとえば、売上の管理や領収書の管理などは毎日行う必要があり、VTuber活動の傍で行っていくことは非常に大変です。そこで税理士を活用することで、面倒な会計業務や税務手続きから解放され、VTuberとしての活動時間を最大限に確保できます。
2つ目は「効果的な節税対策が可能」ということです。税理士は税務の専門家であるため、最新の税制に基づく効果的な節税対策をアドバイスしてくれます。効果的な節税対策は無駄な支出を抑え、手元に残るお金を最大限にすることに繋がるため、大きなメリットといえます。
3つ目は「リスク軽減と安心感を得られる」ということです。事業を行っていると「税務調査」が実施される場合があり、税務調査では日々の会計帳簿などを調査する「書類調査」や事務所などの現況を調査する「現場調査」があります。
税務調査官からも様々な質問をされますが、税理士がいる場合は税務調査官との交渉も行ってくれるため、安心感して税務調査に臨むことができます。また、税理士と契約することで税務署からの信頼度を上げる効果も見込めます。
【選び方】VTuber・ライバーに強い税理士を見つけるポイント
税理士を選ぶ際には税理士との相性や料金面など、様々な視点から税理士を探すことが重要です。ここではVTuberが税理士を選ぶ際に気をつけるべきポイントを2点紹介します。
VTuberの顧問実績があるか
まずチェックすべきポイントは、VTuberの顧問実績があるかどうかです。VTuberは特殊な職種であるため、売上の管理や経費の考え方など専門知識を必要とします。
VTuber業界への知識が少ないということは、VTuberがどのような経費を必要とし、どのような仕組みで売上が発生しているかがわかっていないということです。
そのような税理士に依頼してしまうと、誤った内容の確定申告になってしまったり、節税対策なども適切に行えなくなってしまったりする可能性があります。
ITツールやクラウド会計に強いか
ITツールやクラウド会計に強い税理士であるかも大事な判断基準の1つです。VTuber活動をしている人の多くはデジタルネイティブであるため、ChatworkやSlackなどのクラウドツールを活用できるかどうかが、円滑なコミュニケーションを実現するための重要な鍵になります。
また、クラウド会計を活用することで、日々の売上データや経費データのやり取りをスムーズにできるだけでなく、日々の収支データから経営状況をリアルタイムで確認できます。
まとめ

VTuberの確定申告は多様な収入を適切に管理することや、特有の経費を正しく把握することから始まります。また、事務所に所属するか個人で事業を行うかなどによっても必要な手続きも異なります。
このようにVTuberの確定申告では様々な専門的な知識を必要とするため、確定申告をはじめとする税務について、少しでも不安や疑問があればVTuberに強い税理士に相談するようにしましょう。
田中貴久公認会計士事務所ではVTuberや漫画家などのクリエイターをはじめ、様々な事業者様を多方面的にサポートいたします。ITツールをはじめとしたクラウド会計にも強い税理士ですので、まずは気軽にご相談ください。
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