学生クリエイターがBOOTHなどのプラットフォームで売上が出始めた際に「確定申告は必要なのかな?」と疑問に思うことがあるかもしれません。

学生でも一定の基準を超えると申告が必要です。また、たくさんの売上があると親の扶養から抜けざるを得ない可能性があります。

そこでこの記事では、学生がBOOTHで売上が出た際の所得の壁や確定申告の手順について解説します。

学生クリエイターが知るべき2つの「壁」

BOOTHで収入を得ている場合、気を付けるべき壁は以下の2つです。

・確定申告が必要か
・親の扶養から外れるか

これらの判断基準は、収入からその収入を得るために直接かかった経費を差し引いた年間の「所得」が関係します。

いくらから壁を超えることになるのかを確認しておきましょう。

① 確定申告が必要になる壁(所得20万円 or 95万円)

アルバイトをしていて年末調整を受けている場合、アルバイト以外のBOOTHを含めたすべての年間所得が20万円を超えると確定申告が必要です。

一方で、アルバイトをしていない、またはアルバイト先で年末調整を受けていない場合には、すべての年間所得が95万円を超えると申告が求められます。

年末調整を受けているかで確定申告の必要性を判断可能です。

なお、アルバイト先の収入は給与所得として扱われるため、所得控除を受けられます。アルバイトでの年間収入が162万5,000円以下なら、収入から控除額の65万円を差し引いた額が給与所得です。

② 親の扶養から外れる壁(合計所得58万円および合計収入130万円)

学生でも、年間合計所得が58万円を超えると扶養控除が受けられなくなります。

また、年間収入が130万円を超えると社会保険に加入しなければならず、社会保険料の納入義務が発生します。

扶養に入ることで親は「扶養控除」を受けられ、学生は社会保険を払う必要がないという恩恵を享受できていたのが、収入を得ることで一変することを心得ておきましょう。

なお、ここでの所得58万円や収入130万円は、アルバイトやBOOTHなどすべての収入を含めた金額合計です。

【やり方】学生向け・BOOTHの確定申告 4つのステップ

BOOTHで得た所得について、確定申告をする際の具体的なやり方を4ステップにわけて解説します。

ステップ①:収入と経費をまとめる

確定申告書を作るには、その根拠となる情報や書類を集めることから始めます。

まずはBOOTHから「売上管理CSV」をダウンロードしましょう。売上額を集計するために必要です。

あわせて、売上に直接関係する支出がわかる書類を集めてください。経費として計上できるため、それだけ所得から控除でき、税金の支払額を抑えられます。

ただし、あくまで売上に直接関係する材料費や印刷費、作業用のソフトなどが対象です。経費が実際にあったことを証明するために、レシートや領収書、請求書などを保管しておく必要があります。

なお、アルバイト先で源泉徴収されているのなら、二重課税とならないように確定申告書への記入が必要です。年末に渡される「給与所得の源泉徴収票」をもとにするため、大切に保管しておきましょう。

ステップ②:確定申告書を作成する

確定申告書には、自身の収入や所得、源泉徴収税額などを入力します。

確定申告書の作成には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」が便利です。必要事項を入力するだけで確定申告書を作成でき、スマホからでも作成できます。

申告書を手書きで作成する方法もありますが、慣れていないと何をどこに書いていいかわからず、計算ミスや書き間違いが起きやすいため、ツールの使用をおすすめします。

ステップ③:学生が使える控除をチェックする

確定申告において、いくつかの所得控除を受けられます。所得控除を受けると、そのぶん所得が減るため税金が少なくなります。使える所得控除をチェックし、忘れずに確定申告書に記入しましょう。

例えば、学生が使える控除として「勤労学生控除」があります。活用できると、所得から27万円を差し引けます。ただし、合計所得金額が85万円以下で、勤労以外の所得が10万円以下のいずれにも該当する場合にのみ活用可能です。

また、所得が2,400万円以下なら、誰でも基礎控除を受けられます。

このほかにも税額控除も活用できる可能性があります。利用できる控除は漏れなく申告して、税負担を軽くしましょう。

ステップ④:申告と納税を行う

確定申告書の提出方法は「e-Tax」「郵送」「税務署へ持参」の3通りから選べます。こだわりがなければ、添付書類が不要で、自宅からでも提出できるe-Taxを選ぶのがおすすめです。

ただし、e-Taxで提出する場合には、マイナンバーカードを使った認証などが必要です。

申告期限は原則として翌年の3月15日までと定められているため、時間に余裕をもって作業を進めるとよいでしょう。

なお、納税が必要な場合には、申告書の提出と同じ3月15日までに納付します。支払方法はクレジットカードやコンビニ払い、銀行振込など様々です。都合のよい方法で納付を済ませてください。

【要注意】確定申告で見落としがちな3つの注意

BOOTHで得た収入を確定申告する場合に、見落としがちなポイントを3つ紹介します。

注意点①:確定申告が不要でも「住民税の申告」は必要な場合がある

所得税の確定申告をしている場合、住民税の確定申告は不要です。

しかし、所得税の確定申告をしなかった場合でも、副業による所得が1円でもあるなら、住民税の申告は必須です。

住民税の所得は所得税とは別で計算します。また、住民税の基礎控除額も異なるので計算の際には注意してください。

注意点②:「雑所得」と「事業所得」の違い

雑所得となるか事業所得となるかは、その事業で継続的に収入が得られるかなどが関係します。

そのため、BOOTHでのクリエイター活動で赤字が続いている場合は、事業所得にできない可能性があるのです。また、給与所得がある場合は、BOOTHからの所得が給与所得の10%以上であることなどが求められます。

事業所得であれば所得を最大65万円控除できる「青色申告」を活用できますが、雑所得だと節税効果を高められないのが懸念点です。

なお、BOOTHの売上を事業所得としたい場合には、収入やかかった経費を記帳し、帳簿を保存することが必要です。

注意点③:売上や経費の記録は必ず保管しておく

売上や経費の記録、およびそれらを証明する書類は基本的に7年間保管しておく必要があります。

確定申告が不要でも、仮に後で税務調査が入ると過去数年間の記録について提出を求められる場合があるため、申告不要の年でも書類の保管は必須です。

書類の保存について、PDFなどの電子データでのみ入手できるものを印刷する必要はなく、データのままで保存して構いません。

まとめ

BOOTH収入について、一定額以上を稼いだら学生でも確定申告が必要です。アルバイト先などで年末調整を受けていれば20万円、なければ95万円の所得額がボーダーラインとなります。

また、稼いだ金額によっては親の扶養を抜けたり、社会保険料の支払いを求められたりすることがあります。日頃からいくら収入を得ているかを確認しておきましょう。

なお、経費に計上していい支出かの判断や確定申告の方法、所得控除の対象になるかなど、迷うことがあったら、1人で悩まずに専門家である税理士に相談するのが賢明です。

田中貴久公認会計士事務所では、クリエイターへの理解が深く、これまでに多くの方をサポートしてきた実績があります。確定申告に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。

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