
「思ったより3Dモデルの売上が出てきたけれど、税金ってどうすればいいの?」と、疑問を抱くBOOTHクリエイターは少なくありません。BOOTHは個人でも気軽に3Dモデルを販売できるプラットフォームですが、売上が増えると確定申告の対象になる可能性があります。
そこで本記事では、BOOTHで得た3Dモデルの売上が確定申告の対象になるケースや、経費として認められる具体的な支出例を税務の観点から詳しく解説します。
BOOTHで3Dモデルを販売したら確定申告は必要?
BOOTHでの3Dモデル販売による所得が一定額を超えた場合、確定申告が必要です。申告が必要なラインは、副業か本業かによって異なります。
副業の場合
会社員やアルバイトとして給与所得がある人が、BOOTHで3Dモデルを販売して副収入を得ている場合は、「年間20万円を超える所得」があると確定申告が必要です。
ここでの「所得」とは、売上総額から経費を差し引いた金額を指します。たとえば、BOOTHでの売上が30万円、経費が8万円なら所得は22万円となり、確定申告の対象だと判断できます。
本業の場合
BOOTHでの3Dモデル販売をメインの収入源としている場合は、フリーランスの「事業所得」として扱われます。この場合、所得が95万円を超えると確定申告が必要です。たとえば、BOOTHの売上が150万円で経費が45万円なら、所得は105万円となり、確定申告の対象です。
なお、この95万円という基準は、所得合計が132万円以下である場合の基礎控除額に基づきます。
BOOTHで得た3Dモデルの売上を計上する際の2つのポイント
BOOTHで得た売上は、確定申告の際に「いつ・いくらを計上するか」を明確にしておく必要があります。ここでは、正確な売上計上と経費処理のために押さえておきたい2つのポイントを紹介します。
1. 計上のタイミングを決めておく
確定申告では、収入を「いつの時点で発生したものとして扱うか」が重要です。原則として、税法上の会計処理には次の2つの方法があります。
・発生主義:販売が成立した日(ダウンロード販売成立日など)を収入計上の基準にする方法
・現金主義:実際に入金があった日を基準に収入を計上する方法
BOOTHの場合、販売成立から入金まで数週間のラグがあるため、どちらの方法を採用するかを統一しておくことが大切です。
たとえば、発生主義で処理している場合、12月末までに販売が成立していれば翌年に入金されても「当年分の収入」として扱います。一方、現金主義を採用する場合は、入金された時点での計上が必要です。
なお、青色申告者で現金主義を選択するには「現金主義の所得計算の特例に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。
届け出をしていない場合は、原則として発生主義で処理することになるため注意しましょう。
2. 販売手数料は経費扱いにする
BOOTHでは、作品販売時に「販売手数料」が自動的に差し引かれます。この手数料は、確定申告上「支払手数料」として経費に計上できます。多くのクリエイターが「入金額=売上」と誤解しがちですが、正しくは次のように分けて記帳することが必要です。
売上総額(購入者が支払った金額)=入金額+販売手数料
たとえば、3Dモデルを5,000円で販売し、BOOTHの販売手数料が500円(10%)だった場合、売上は5,000円、経費(支払手数料)は500円として帳簿に記録します。
このように「売上総額」と「経費(手数料)」を分けて記録しておくと、確定申告の際に整合性が取りやすくなり、税務署からの確認にもスムーズに対応できます。
BOOTHで3Dモデル販売している人が経費計上できる主な支出例
3Dモデル制作では、機材・ソフト・資料など多くの支出が発生します。これらを正しく経費計上することで、所得税を抑えることが可能です。
ここからは、BOOTHクリエイターが実際に経費にできる主な支出項目を紹介します。
ハードウェア費
3Dモデリングやレンダリングには高性能PCや周辺機器が欠かせません。次のような機材は、業務使用の割合に応じて経費として計上できます。
・制作用PC・ノートPC
・VRヘッドセット(Meta Quest、VIVEなど)
・ペンタブレット・液晶タブレット・デジタイザ
・外部モニターやGPUなどの増設パーツ
ただし、1台あたり10万円以上の機材は「減価償却資産」として、耐用年数に応じて複数年に分けて経費化する必要があります。
ソフトウェア・ツール費
モデリング・テクスチャ制作などに使う有料ツールやライセンス料は、制作活動に必要な経費として認められます。
・モデリングソフト:Blender Pro、Maya、3ds Max、ZBrush など
・テクスチャ作成ソフト:Substance 3D Painter、Photoshop、CLIP STUDIO PAINT など
・アニメーションやリギング用の追加プラグイン、商用素材ライセンス費
無料版ソフトを使っていても、一部の有料アドオンやクラウド保存サービスを利用している場合は、その利用料も経費に含められます。
資料代・勉強代
3Dモデル制作のスキルアップや、作品クオリティ向上のために購入した資料・講座費用は経費計上ができます。
・技術書籍や参考資料(3DCG・デザイン関連)
・オンライン講座やセミナーの受講料(Udemy、BOOTHクリエイター講座など)
・展覧会や業界イベントの入場料(制作研究目的の場合)
これらは事業に関連する知識や技術を得るための「研修費」として認められます。ただし、純粋な趣味目的やエンタメ系コンテンツ購入は経費には含められないことを把握しておいてください。
通信費・光熱費
在宅で3Dモデリングを行う場合、通信費や電気代の一部も経費にできます。
・インターネット回線費用・モバイルルーター代
・クラウドストレージ・サーバーレンタル費
・電気代(レンダリングやVR作業時間に応じて)
自宅で作業している場合は、業務に使っている割合に応じて「家事按分(かじあんぶん)」を行います。
たとえば、1日のうち4時間をBOOTH制作に充てているなら、通信費・光熱費の1/6~1/5程度を経費として計上するのが一般的です。家事按分の割合は合理的な基準(作業時間・部屋の使用面積など)で説明できるよう記録しておくようにしましょう。
BOOTHで売上を得ているクリエイターが税理士に相談すべきタイミング
BOOTHでの3Dモデル販売が軌道に乗ってくると、「帳簿の付け方が複雑になってきた」「青色申告を始めたい」「節税の方法を知りたい」など、税務上の悩みが増えていきます。そのようなときは、早めに税理士へ相談するのがおすすめです。
相談のタイミングを誤ると、後から修正申告が必要になったり、青色申告の特典を受けられなかったりするケースもあります。
とくに次のような状況に当てはまる場合は、税理士に一度相談しておくと安心です。
・売上や取引件数が増えて帳簿管理が追いつかなくなったとき
・青色申告を検討しているとき
・節税・控除を漏れなく適用したいとき
税理士に相談することで、確定申告だけでなく、帳簿管理の効率化や将来の資金計画まで見据えたアドバイスが受けられます。
また、「制作」に集中できる時間を増やせるため、税務負担の軽減は、長期的に見て最も合理的な投資といえます。
まとめ

BOOTHで3Dモデルを販売して得た収入は、所得が一定額を超えると確定申告が必要になります。副業クリエイターなら「所得20万円」、本業クリエイターなら「所得95万円」が目安です。
売上を計上する際は「発生主義」または「現金主義」を統一し、BOOTHの販売手数料を経費として正確に分けて記録することが大切です。PC・ソフト・講座費用・通信費など、制作活動に必要な支出は漏れなく経費計上しましょう。これにより、課税所得を減らして節税効果が得られます。
なお、適切に青色申告の制度が活用できているのかが不安な方や、売上が安定してきた段階で「節税効果を高めたい」方は、税理士に相談することを検討してみてください。専門家のサポートを受けることで、時間もお金も有効に使えるようになります。
田中貴久公認会計士事務所はクリエイターの確定申告や税務会計に強いのが特長です。クリエイターならではの、不安な点についてお気軽にご相談ください。
