
イラスト・漫画・動画・同人誌・デジタルコンテンツなどで収入を得ていると、「作品が売れた日と入金日のどちらで売上を計上するのか」と迷うことがあります。
特に、BOOTHやDLsite、FANBOX、Fantia、noteなどのプラットフォームでは、売上が発生した日と実際の振込日が異なるケースも少なくありません。売上の計上時期を誤ると、年をまたぐ取引で確定申告する年がずれたり、売上の計上漏れにつながったりする可能性があります。
そこで、本記事では、クリエイターの売上を計上するタイミングや基本的な仕訳、プラットフォーム手数料の扱いなどを解説します。
クリエイターの売上はいつ計上する?
クリエイターの売上はいつ計上すべきなのでしょうか。基本的な考え方を確認しましょう。
原則は「入金日」ではなく売上が発生したタイミング
個人事業主が売上を計上するときは、原則として実際にお金を受け取った日ではなく、商品を引き渡したりサービスの提供が完了したりして、収入を得る権利が確定した時点を基準にします。
その年の収入金額について、年末までに実際の代金を受け取っていなくても「収入すべき権利の確定した金額」をその年の収入となります。例えば、12月20日に商品を販売して翌年1月10日に代金を受け取った場合でも、原則として販売した年の収入になります。
会計では、このようにお金が動いた日だけではなく、取引が発生した時点を基準として記帳する考え方を「発生主義」と呼びます。
そのため、「12月に作品が売れたものの、プラットフォームからの振込は翌年1月」というケースでは、売上が12月に確定しているのであれば、原則として12月の売上として処理します。
受注日・納品日・請求日・入金日のどれで計上する?
受注型のクリエイターの場合、「依頼を受けた日」「作品を納品した日」「請求書を発行した日」「入金された日」のどこで売上を計上するのか、迷う人もいるのではないでしょうか。
イラスト制作やデザイン、動画編集などでは、一般的には制作物を納品した日や、契約上の役務提供が完了して報酬を受け取る権利が確定した日が基準になります。単に依頼を受けただけでは、まだ制作や納品が完了していないため、通常は売上計上のタイミングにはなりません。
また、請求書を発行した日が必ず売上計上日になるわけでもありません。たとえば、1月中の業務を1月31日に完了し、2月5日に請求書を発行した場合には、原則として役務提供が完了した1月31日を基準に考えます。
ただし、具体的な計上時期は取引内容や契約条件、販売方法などによって異なるため、契約書やプラットフォームの規約も確認しましょう。
クリエイターの売上計上をケース別に解説
売上が発生する仕組みは、企業案件とプラットフォーム販売では異なります。ここでは、クリエイターに多いケースごとに売上計上の考え方を確認します。
イラスト・デザイン・動画編集などの受注案件
企業や個人からイラスト制作、デザイン、動画編集などを受注している場合は、原則として納品や役務提供の完了時点で売上を計上します。
たとえば、10万円の動画編集案件を12月25日に納品し、報酬が翌年1月31日に入金される場合を考えてみましょう。
12月25日時点では、まだ代金を受け取っていないため「売掛金」として処理します。
| 時期 | 借方 | 貸方 |
| 12月 | 売掛金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
| 翌年1月 | 普通預金 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
このように、売上の発生と入金を分けて記帳します。
請求書を翌年1月に発行した場合でも、12月中に納品が完了して報酬を受け取る権利が確定しているのであれば、請求書の日付だけを理由に翌年の売上とするわけではありません。
BOOTH・DLsiteなどで作品を販売する場合
BOOTHやDLsiteなどで同人誌やデジタルコンテンツを販売する場合も、単純に銀行への振込日で売上を判断するのではなく、各サービスで販売が成立し、売上が確定したタイミングを確認します。
プラットフォームによって、「購入日」「発送日」「購入者の受取日」「売上確定日」「振込日」などの扱いが異なるためです。管理画面や売上明細で、売上がいつ確定したのかを確認しましょう。
FANBOX・Fantia・noteなどの収益
FANBOXやFantia、noteなどでは、支援金、メンバーシップ、有料コンテンツなどの売上が発生してから、一定期間後にまとめて振り込まれることがあります。
この場合も、原則として銀行口座への入金日ではなく、各サービスで収入を受け取る権利が確定した時点を基準にします。
たとえば、12月分のFANBOXの支援金について12月中に売上が確定し、翌年1月に振り込まれるのであれば、原則として12月分の売上として扱います。「1月に入金されたから翌年の売上」と考えないよう注意しましょう。
売上がいつ確定するかは、サービスの利用規約やキャンセル条件などによって異なる場合があります。12月中に必ず売上になるとは限らないため、各サービスの売上確定日を確認してください。
クリエイターが間違えやすい売上計上のポイント
売上計上では、入金額だけを見て記帳したり、年末の未入金分を翌年へ回したりするミスが起こりやすくなります。特に注意したいポイントを確認しましょう。
振込額=売上ではない
プラットフォームから振り込まれた金額が、そのまま売上になるとは限りません。
たとえば、作品の販売額が10万円、プラットフォーム手数料が2万円、実際の振込額が8万円だったとします。
| 内容 | 金額 |
| 売上総額 | 100,000円 |
| プラットフォーム手数料 | 20,000円 |
| 実際の入金額 | 80,000円 |
売上総額を自身の売上として扱う取引形態であれば、8万円だけを売上とするのではなく、10万円を売上、2万円を支払手数料などの経費として分けて処理します。
そのため、銀行口座の入金明細だけで帳簿を付けるのではなく、プラットフォームの売上明細や手数料明細も確認しましょう。
12月の売上が翌年に入金される場合
年末の売上は、確定申告で特に計上漏れが生じやすい部分です。
たとえば、2026年12月に作品を販売し、その売上が確定したものの、振込が2027年1月だったとします。この場合、原則として2026年分の売上として計上します。
年末には銀行口座の入金履歴だけでなく、各プラットフォームの12月分の売上明細や未入金の売掛金も確認しましょう。
前払い・前受金の場合はどうする?
イラスト制作などでは、制作開始前に着手金や報酬の全額を受け取るケースもあります。
ただし、先にお金を受け取ったからといって、その時点ですべて売上になるとは限りません。まだ作品を納品しておらず、役務提供が完了していない場合には、受け取った金額を「前受金」として処理し、納品などにより売上が確定した時点で売上高へ振り替える方法があります。
クリエイターの売上計上の仕訳例
売上の発生日と入金日が異なる場合は、それぞれの日付で仕訳します。ここでは、基本的な仕訳例を確認しましょう。
納品後に入金される場合
10万円のイラスト制作案件を12月に納品し、翌年1月に入金されたケースを考えます。
納品時に売上が確定した場合は、12月に売掛金と売上高を計上します。
| 日付 | 借方 | 貸方 |
| 12月 | 売掛金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
| 翌年1月 | 普通預金 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
翌年1月の入金時には、新たな売上を計上するのではなく、12月に計上した売掛金を消し込みます。
freeeなどの会計ソフトを利用している場合は、発生時に未決済の売上を登録し、入金時に決済処理を行うことで管理できます。
プラットフォーム手数料が差し引かれる場合
次に、売上10万円からプラットフォーム手数料2万円が差し引かれ、8万円が振り込まれたケースを考えます。
売上総額を自身の売上として処理する取引であれば、次の関係になります。
| 内容 | 金額 |
| 売上高 | 100,000円 |
| 支払手数料 | 20,000円 |
| 普通預金への入金 | 80,000円 |
仕訳の一例は次のとおりです。
売上確定時
| 借方 | 貸方 |
| 売掛金100,000円 | 売上高100,000円 |
| 借方 | 貸方 |
| 普通預金80,000円 | 売掛金100,000円 |
| 支払手数料20,000円 |
| 借方 | 貸方 |
| 普通預金80,000円 | 売上高100,000円 |
| 支払手数料20,000円 |
このように記帳すれば、売上の総額とプラットフォームへ支払った手数料をそれぞれ把握できます。
クリエイターが売上計上で注意したい3つのポイント
クリエイターは複数のサービスから収入を得ることも多いため、売上の計上基準を決めるだけでなく、証拠資料の保存や収入源ごとの管理が必要です。
売上の根拠となる資料を保存する
売上を記帳したら、その金額や日付を確認できる資料も保存しておきましょう。
具体的には、プラットフォームの売上明細、販売履歴、請求書、契約書、納品書、銀行の入金明細などが挙げられます。
特にWeb上で取得した売上明細や請求書など、電子取引で受け取ったデータは、電子帳簿保存法に沿った保存が必要になる場合があります。
複数のサービスの売上をまとめて管理する
「BOOTH+FANBOX+Skeb」「企業案件+同人誌販売」など、複数の収入源があるクリエイターは、サービスごとに売上を整理しましょう。
各サービスでは、売上の発生日、売上確定日、手数料、振込日などの仕組みが異なります。
たとえば、帳簿や表計算ソフト、会計ソフトなどで「サービス名」「売上発生日」「売上額」「手数料」「入金日」「入金額」を記録しておけば、年末に未入金の売上も確認しやすくなります。
freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを利用する場合も、銀行口座への入金だけを登録するのではなく、売上の発生日と決済日を分けて管理すると、発生主義に沿った帳簿を作成しやすくなります。
売上の計上漏れに注意する
確定申告前には、帳簿にすべての売上が反映されているかを確認しましょう。
特に注意したいのは、年末に発生した売上、翌年に入金される売上、少額のプラットフォーム収入、海外サービスからの収入、現金で受け取った売上などです。
銀行口座への入金だけを確認すると、翌年入金の売掛金や、振込申請前のプラットフォーム残高などを見落とすことがあります。
収入源が複数ある場合は、サービスごとの管理画面と帳簿、銀行明細を照合すると計上漏れを防ぎやすくなります。
まとめ

クリエイターの売上は、原則として実際の入金日ではなく、商品を販売したり、作品を納品したりして収入を得る権利が確定した時点で計上します。
BOOTHやFANBOXなどのプラットフォームを利用している場合は、売上確定日と振込日、手数料の仕組みを確認し、年末の未入金売上も忘れずに帳簿へ反映しましょう。
売上の計上時期や手数料の処理は、サービスの規約や契約内容によって判断が分かれる場合もあります。複数のプラットフォームを利用している場合や処理方法に迷った場合は、クリエイター・個人事業主に強い田中貴久公認会計士事務所への相談も検討してみてください。
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