同人誌制作をしていると、制作した分のうち在庫が発生することもあるでしょう。
そうすると「在庫分は確定申告の経費になるの?」という疑問があると思います。

この記事では、在庫に関する棚卸しの方法や、在庫の計算方法について解説します。

同人誌の在庫は経費にできる?売れ残った分は原則として翌年以降に繰り越す

同人誌を作成するのに支払った印刷費や紙代、製作費などは、支払った年にすべてをその年にそのまま必要経費にできるとは限りません。

年末時点で残っている同人誌は期末棚卸高として当年の売上原価から除き、翌年の期首棚卸高として繰り越します。その後、販売した分などに対応する金額が売上原価として必要経費になります。

同人誌の棚卸しとは?確定申告で必要になる理由

確定申告のために、期末に残った同人誌を棚卸しする必要があります。

この章では棚卸しとは何か、確定申告で棚卸しが必要となる理由を解説します。

棚卸しとは年末時点の在庫を確認する作業

棚卸しとは、在庫の数量や状態を確認する作業です。

確定申告のためには、12月31日時点で残っている同人誌の冊数を確認し、その在庫に対応する金額を計算します。
計算方法としては、採用している棚卸資産の評価方法に応じて1冊あたりの評価額を算定し、在庫数などをもとに期末棚卸高を算出します。

自宅に保管しているものだけでなく、委託販売先に預けている在庫についても確認が必要です。

棚卸しをして期末棚卸高を計算する

年末時点で残っている同人誌の評価額は「期末棚卸高」となり、売上原価から差し引かれます。

たとえば、1年で発生した印刷費が3万円、在庫分の印刷費が6,000円(期末棚卸高)とすると、その年の売上原価は下記になります。
「売上原価=印刷費3万円-期末棚卸高6,000円=2万4,000円」

確定申告にあたり棚卸しをしないと正確な売上原価を算定できないため、同人誌の在庫がある場合は必ず棚卸しを実施する必要があります。

同人誌の棚卸しのやり方3ステップ

同人誌の棚卸しのやり方について、3ステップに分けて解説します。

STEP1:年末時点の在庫数を確認する

まず、その年の12月31日時点で何冊の同人誌が残っているのかを確認します。
自宅や倉庫に保管している同人誌だけでなく、委託販売先に預けているものなども含め、実際に販売可能な状態で残っている冊数を数えます。

委託販売先に預けている分については、委託販売先へ数量を尋ねて確認する方法があります。

汚損、破損などにより販売できないものについては、その状態などに応じて棚卸資産の評価方法を検討する必要があります。廃棄する場合は、「商品廃棄損」として経費に計上します。

STEP2:同人誌1冊あたりの原価を計算する

次に、同人誌1冊あたりにいくらの費用がかかっているのかを計算します。
同人誌の作り方によって、棚卸資産の取得価額に含める費用は異なります。印刷費や製本代など、同人誌の制作に直接かかった費用をもとに、1冊あたりの原価を算出します。

たとえば、同人誌50冊を作成するのに印刷・製本代1万5,000円、特急で印刷してもらうのに割増料金1,000円がかかったとすると、総額は1万6,000円になるため、この費用を同人誌50冊で割ります。
「1冊あたり費用=費用総額1万6,000円÷50冊=320円」

STEP3:在庫数と1冊あたりの原価から棚卸高を計算する

最後に、年末時点の在庫数に1冊あたりの費用をかけて、期末棚卸高を計算します。
1冊あたり費用がSTEP2で出した320円、在庫数が10冊とすると、期末棚卸高は3,200円となります。
「期末棚卸高=1冊あたり費用320円×在庫10冊=3,200円」

費用総額が1万6,000円、期末棚卸高が3,200円の場合、その年の確定申告で計上できる経費は1万2,800円になります。
「確定申告の経費=費用総額1万6,000円-期末棚卸高3,200円=1万2,800円」

同人誌の売上原価はどう計算する?

同人誌の売上原価は、同人誌を作成するために支払った金額のうち確定申告において経費にできる金額になります。

同人誌の売上原価の計算方法について解説します。

売上原価は「期首棚卸高+当期の費用-期末棚卸高」で考える

売上原価になるのは、同人誌の制作にかかった費用のうち、その年に販売した分に対応する金額です。

売上原価は下記の算式で計算します。
「期首棚卸高+当期の仕入・製作費-期末棚卸高」

期首棚卸高とは、前年末の在庫金額です。
つまり、前年末の在庫金額を当期の仕入・製作費に足し合わせて、当年末の在庫金額を引いた金額が、当年の売上原価になります。

前年の在庫が10冊あり、追加で100冊印刷して70冊売れた場合の計算例

前年に3,000円分の在庫10冊があり、当期に100冊を3万円で追加印刷し、当年に70冊売れたとします。
年末に残った在庫40冊分の費用が1万2,000円だとすると、当年の売上原価は下記になります。
「売上原価=期首棚卸高3,000円+当期100冊分費用3万円-期末棚卸高1万2,000円=2万1,000円」

同人誌の在庫・棚卸しで注意したいケース

同人誌の在庫・棚卸しで注意したいケースを4つ紹介します。

委託販売先に預けている同人誌も在庫として確認する

とらのあなやメロンブックスなどの委託販売先に同人誌を預けている場合、手元にないからといって販売済みとは限りません。
売上原価に計上できるのは委託先で販売した分のみのため、年末時点で委託先に残っている冊数も確認し、自身の在庫として把握する必要があります。

余った同人誌を廃棄した場合はどうなる?

売れ残った同人誌を実際に廃棄した場合は、廃棄した数量や時期などを記録し、廃棄した時期に損失として処理します。

確定申告のためには、実際に廃棄した数量や時期がわかるよう記録を残し、廃棄したことを証明できる書類があれば保管しておく必要があります。

同人誌以外のグッズも販売している場合

同人誌以外にも、アクリルスタンドや缶バッジなど他の作品も販売している場合、それらすべてが棚卸しの対象になります。

販売目的で制作や仕入れをしたものはすべて管理し、年末時点で残っているものは期末棚卸高として売上原価から差し引きます。

同人誌1冊あたりの単価が変わった場合

同じ種類の同人誌について、前年は1冊あたり300円で作成した同人誌が20冊在庫であったものの、物価高騰により当年は330円でないと印刷できなくなったとします。
当年に100冊印刷し、当年末の在庫が30冊ある場合、期末棚卸高を計算するための同人誌1冊あたりの単価はいくらになるのでしょうか。

複数の計算方法がありますが、税務署に届出をしなかった場合は「最終仕入原価法」により計算をします。

当年末に最も近い時期に100冊を1冊330円で制作した場合、最終仕入原価法では、期末に残っている同じ種類の同人誌30冊を1冊330円として評価します。

この場合、期首棚卸高は6,000円、当期制作費用3万3,000円(330円×100冊)、期末棚卸高9,900円(330円×30冊)として売上原価は2万9,100円になります。

なお、違う種類の同人誌は、種類ごとに単価と冊数を計算して期末棚卸高を計算します。

同人誌の在庫・棚卸しでよくある間違い

同人誌の在庫・棚卸しをする際に、印刷費をすべてその年の経費としたり、手元にある在庫だけを数えて委託先の在庫を見落としたりするケースがあります。ここでは、在庫・棚卸しの際に発生しがちな間違いを紹介します。

印刷費を支払った年に全額を経費にしてしまう

印刷会社への支払いが完了していることだけを理由に、印刷費をすべてその年の経費としてしまうケースです。

年末に残っている同人誌がある場合は、その在庫分に相当する印刷費は経費計上できません。

支払いをした分をすべて経費にする計算をしていると、この間違いが起きやすいため、期末棚卸高分を集計して差し引くように注意しましょう。

手元にある在庫だけを数えてしまう

自宅や倉庫に保管している同人誌だけを数え、委託販売先などに預けている在庫を見落とすケースです。

委託販売先ごとの在庫も確認し、年末時点の在庫を正確に把握することが重要です。

委託販売先への確認は手間と時間がかかりやすいため、確定申告期限の直前ではなく、その年が終わったら早めに確認するようにしましょう。

まとめ

同人誌の年末に残っている在庫に対応する金額は、原則としてその年の売上原価から除かれ、期末棚卸高として翌年以降に繰り越す必要があります。

在庫は同人誌の種類ごとに単価を計算し、単価に在庫数をかけることで算定します。

在庫の把握や、同人誌の種類ごとの単価計算は、複数種類の同人誌を作成しているほど複雑になりミスも起こりやすくなります。

そのため、同人誌制作の規模がある程度以上大きくなった時点で、税理士に確定申告の依頼をすることをおすすめします。

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