
「今の税理士さん、クリエイターの仕事を分かってくれていないかも」と感じると、税理士の変更を検討する場合もあるでしょう。
クリエイターの仕事は収益や経費が特殊であり、仕事の内容に理解の浅い税理士では、適切な税務・会計の処理をしてもらえなかったり、良いアドバイスを受けられなかったりすることもあります。
そこで本記事では、税理士の変更を検討する理由、変更しやすいタイミング、スムーズな解約・契約の流れ、クリエイターが選ぶべき税理士の条件を解説します。
クリエイターが税理士の変更を検討する4つの理由
クリエイターが税理士の変更を検討する際の理由としてよく挙げられるのが、次の4つです。
コミュニケーションの不一致
コミュニケーションの不一致は、クリエイターが税理士の変更をする理由の一つです。
税務や経理では、期限までに確認すべき事項が多く、連絡の遅れや認識のずれが申告準備に影響することがあるためです。質問しても返信が遅い、専門用語ばかりで説明される、聞き直しにくい雰囲気がある場合、依頼者側に不安が残ります。
また、クリエイターや副業フリーランスは、チャットやオンライン会議で効率よく相談したいケースも少なくありませんが、こういったものには応じないという税理士も珍しくありません。
このようなコミュニケーションの不一致は、税理士変更の理由となります。
業界知識の不足
税理士に業界知識が不足している場合、税理士を変更する理由となります。
たとえば、動画配信の広告収入、SNS経由の企業案件、原稿料、印税、同人活動の売上、オンライン講座の収入など、クリエイターの仕事では、一般的な店舗ビジネスや物販とは異なる収入・支出が発生しやすいです。
また、経費についても、撮影機材、編集ソフト、素材購入費、スタジオ代、取材費など、業務との関連性を説明する必要があるものが多くあります。
毎回一から仕事の内容を説明しなければならない場合、依頼者側の負担も大きくなります。本来、効率化のために依頼しているはずが、逆に労力を奪われてしまうことは、クリエイターが専門性の高い税理士への変更を検討する動機となるのでしょう。
アドバイスの欠如
税理士が最低限の処理だけを行い、節税や経理改善のアドバイスが欠如していることも税理士変更の理由になります。
たとえば、売上が増えた場合には、青色申告特別控除の活用、消費税の課税事業者になるタイミング、インボイス制度への対応、法人化の要否などを確認する必要があります。このように、個人事業主や副業フリーランスは、事業の成長に応じて検討すべき税務上の論点が変わります
資料を受け取って申告書を作成するだけの対応では、依頼者が必要な判断材料を得にくくなります。「聞けば答えてくれる」だけでなく、「この時期に確認しましょう」と先回りして提案してくれるかどうかも重要です。
ニーズの変化
事業内容や働き方が変わった場合、税理士に求めるサポートも変わるため、税理士変更の理由となります。
副業から独立した場合、売上が増えた場合、外注スタッフを使い始めた場合、法人化を検討する場合などで、必要な税務対応が変化するためです。
当初は確定申告だけを依頼していたものの、売上拡大により毎月の利益確認や資金繰りの相談が必要になることがあります。また、法人化を検討する段階では、役員報酬、社会保険、消費税、会社設立後の経理体制なども確認しなければなりません。
現在の税理士が悪いというより、事業フェーズが変わった結果、必要なサポートが変わり税理士を変更することもあるでしょう。
クリエイターの法人化について知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
個人事業主クリエイターの法人化ベストタイミングはいつ?3つのタイミングとメリットデメリット
理想は確定申告直後!税理士変更のベストタイミングと注意点
個人事業主やフリーランスが税理士を変更する理想的なタイミングは、確定申告が終わった直後です。
なぜなら、1年分の申告業務が区切られた直後であれば、現在の税理士との業務範囲を整理しやすく、新しい税理士への引き継ぎも進めやすいためです。
たとえば、所得税の確定申告後であれば、申告書控え、青色申告決算書、総勘定元帳、領収書、会計データなどをまとめて新しい税理士へ共有できます。
一方で、確定申告期限の直前に変更すると、新しい税理士が十分に内容を確認できず、申告内容の確認不足や資料不足につながるおそれがあります。
また、税務調査の連絡が来た直後の変更も慎重に判断すべきです。
過去の申告内容や税務署とのやり取りを把握している現在の税理士に対応してもらう方が、事実関係を説明しやすい場合があるためです。変更時は、「いつ解約するか」だけでなく、「どの期間の税務業務を誰が担当するか」を明確にしておきましょう。
スムーズに担当税理士を変更する4ステップ
担当税理士をスムーズに変更するために、次の4つのステップを知っておきましょう。
現在の顧問税理士との契約内容を確認する
最初のステップが、解約を伝える前に現在の顧問契約書や申込書を確認することです。
契約によっては、解約予告期間、契約解除料、業務範囲、資料返却の方法などが定められている場合があります。たとえば、「解約は1か月前までに申し出る」「年契約の途中解約では返金がない」「決算申告は別料金」といった条件があるケースがあります。
また、クラウド会計を利用している場合は、会計ソフトの管理者権限が誰にあるのかも確認が必要です。税理士側のアカウントで会計データを管理していると、契約終了後にデータへアクセスしにくくなる可能性があります。
現税理士へ解約の意思を伝える
次に現税理士への解約の意思を伝えましょう。
解約後も過去の申告内容の確認や税務調査への対応で、現在の税理士に確認が必要になる可能性があるため、現在の税理士へ解約を伝える際は、できるだけ角が立たない表現を選びましょう。
たとえば、「事業内容の変化に伴い、今後はクリエイター業に詳しい税理士の方へ依頼することになりました」「法人化を検討しており、知人から紹介を受けた税理士へ相談することになりました」といった伝え方が考えられます。
大切なのは、解約日、最終対応範囲、未精算の報酬、返却してもらう資料を明確にすることです。
預けている書類・データの回収
現税理士に預けている書類や会計データを漏れなく回収しましょう。
確定申告書控え、青色申告決算書、消費税申告書控え、総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳、領収書原本、請求書、通帳コピー、クレジットカード明細などが挙げられます。また、クリエイターの場合は、売上管理表、業務委託契約書、印税や広告収入の支払明細、プラットフォームごとの入金データも重要です。
これらは、新しい税理士が過去の申告内容や経理処理を確認できないと、次の申告や税務相談に支障が出るためです。
返却漏れを防ぐため、チェックリストを作成してメールで共有すると安心です。
新税理士との契約・引継ぎ
新税理士との契約・引き継ぎを行います。
税理士の切り替わり時に税務業務の空白があると、入力漏れや申告準備の遅れにつながるためです。そのため、新しい税理士と契約する際は、過去の申告内容と現在の事業状況をまとめて共有しましょう。
たとえば、過去2〜3年分の申告書控え、青色申告決算書、消費税申告書、総勘定元帳、会計ソフトのデータ、現在の売上資料を共有します。副業フリーランスの場合は、本業の給与所得、源泉徴収票、住民税の徴収方法なども確認対象になります。
契約前には、報酬、対応範囲、連絡方法、返信目安、記帳代行の有無、クラウド会計への対応可否を確認しましょう。
クリエイターが選ぶべき「理想の税理士」の特徴
クリエイターにとってどのような税理士が「理想の税理士」なのでしょうか。
IT・デジタルコンテンツへの理解
印税、広告収入、投げ銭、サブスクリプション収入など、ITデジタルコンテンツへの理解は欠かせません。
昨今、クリエイターの収入は、請求書を発行して報酬を受け取る取引だけでなく、プラットフォームを通じた自動入金や海外サービスからの入金など多種多様となっています。
たとえば、YouTubeやブログの広告収入、電子書籍の印税、ライブ配信の投げ銭、イラスト制作の業務委託報酬などは、入金元や資料の形式が異なります。
こうした取引に理解がある税理士であれば、資料の集め方や会計ソフトへの入力方法も相談しやすくなります。
柔軟なコミュニケーション
チャット、メール、Web会議、クラウド会計などに対応している税理士は、忙しいクリエイターにとって相談しやすい存在です。
たとえば、副業で活動している人や、撮影・収録・イベント出演が多い人は、チャットで要点を確認できる方が効率的です。制作時間や納期が不規則になりやすく、平日の日中に電話でやり取りすることが難しい場合もあるためです。
ただし、連絡手段が多いだけでなく、返信の目安、相談できる範囲、面談の有無なども確認しておく必要があります。
提案型であること
クリエイターにとって理想的な税理士は、質問に答えるだけでなく、必要な対応を先回りして提案してくれる税理士です。
税務初心者の段階では、そもそも何を相談すべきか分からないことが多いです。そのため、「これは経費にできますか」など質問をしてから判断するだけでなく、「この支出は業務との関係を記録しておきましょう」「売上が増えてきたので消費税の判定を確認しましょう」などと提案してもらえる方が安心です。
自宅兼作業場の家賃、通信費、パソコン、カメラ、衣装、取材費などは、業務使用割合や使用目的を整理する必要があります。提案型の税理士であれば、経費にできるかだけでなく、どのような資料を残すべきかまで相談しやすくなります。
まとめ

本記事ではクリエイターの税理士の変更について解説しました。
クリエイターや副業フリーランス、個人事業主は、収入源や経費の内容が多様であり、業界への理解がある税理士の方が相談しやすい場合があります。税理士を選ぶ際は、IT・デジタルコンテンツへの理解、柔軟なコミュニケーション、提案型の対応があるかを確認しましょう。
田中貴久公認会計士事務所はクリエイター・個人事業主の税務・会計を得意としているので、お気軽にご相談ください。
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