
M&Aを失敗しないために、財務DDはほとんど必須といっていい事項です。
この記事では財務DDとはどういったものか、クリエイターや制作会社に焦点を当てて解説します。
財務DD(デューデリジェンス)とは?基礎知識をわかりやすく解説
財務DD(デューデリジェンス)はM&Aの際に実施するものです。
具体的にどういったものか、基礎知識を解説します。
デューデリジェンス(DD)の基本的な意味
デューデリジェンス(DD)とはM&Aを行う際に、対象企業の価値を測るために必要な情報やリスクを事前に調査することです。
財務状況や事業内容、労務リスクや法務リスクを徹底して調べることで、M&Aが成立した後に対象企業に問題が発覚したという事態を防ぎ、M&Aの投資判断を誤らないようにするためのものです。
財務DDが指すものとは?
財務DDとは、DDの中でも財務・会計に焦点をあてたものです。
資産の含み益・含み損や簿外債務、お金の流れや計上が必要な損益の洗い出し、財務上の潜在リスクなどを洗い出します。
また、上場企業が中小企業にM&Aをする際に、上場している会社において適用すべき会計基準のうち、対象の中小企業で適用されていないものがないかの確認も実施します。
クリエイター・制作会社に財務DDが必要になるとき
クリエイター・制作会社において財務DDが必要になる場面について解説します。
①他社から出資を受ける・自社(事業)を売却するとき【売り手側】
自身の制作会社、デザインスタジオ、YouTubeチャンネル、IP(知的財産権)などを他企業に売却する場合や、ベンチャーキャピタルから資金調達する際に財務DDが自社に対して実施されます。
ベンチャーキャピタルから投資を受けるために、自社の財務状況を整理・把握する目的で事前のセルフチェック(簡易的な財務調査)を行う場合もあります。
②他のスタジオや制作チーム、Webメディアを買い取るとき【買い手側】
事業拡大のために、別の制作スタジオや版権を持つ会社に対しM&Aをする際に、相手側に隠れた債務や財務・会計のトラブルがないかを確かめるために自ら財務DDを実施します。
財務DDを行う4つの主な目的
財務DDはなぜ必要なのか、実行する主な目的を4つ紹介します。
① 隠れた財務リスク(簿外債務)の洗い出し
簿外債務など隠れた財務リスクを洗い出すのが、財務DDの目的の1つです。
帳簿に載っていない借金や未払外注費、裁判による損害賠償金などの重大な財務リスクを知らずにM&Aを実施した場合、買い手側が金銭的ダメージを負う可能性があります。
そういった事態を防ぐため、事前に財務DDを行い隠れた財務リスクを発見する必要があります。
② 適正な買収価格の算定材料
買収価格の決定をする際の交渉材料を見つける方法として財務DDが実施されます。
たとえば簿外債務があった場合は買収価格を下げるなど、会社を高すぎる価格で買収しないように防ぐ目的があります。
③ 買収・出資後の事業計画(正常収益力)のベース策定
財務DDにより一時的・例外的な損益や、本来計上すべきですが計上されていない費用などを発見します。
そういった損益を調整した損益計算書を提示することで、買収対象会社の本来の稼ぐ力である正常収益力を測定します。
④ 関係者・株主への説明責任
株主などの利害関係者へ説明責任を果たすのも、財務DDの目的の1つです。
M&Aでは通常、買収のために大きな金額が動きます。
さらに、M&Aによって新たな会社がグループに参入するため、株主などの利害関係者へ説明する必要が生じます。
財務DDにより判明した客観的な数値データを示すことで、株主などの理解が得やすくなります。
【クリエイター特有】財務DDでチェックする主な項目
財務DDでチェックされる項目について、クリエイターや制作スタジオ特有のものを紹介します。
損益計算書(PL)のチェック項目
財務DDでは、制作する作品やプロジェクトごとの原価計上や利益率などをチェックします。
制作スタジオなどの収益や費用のうち、期ズレのものがあれば適切な時期へ計上するように正常収益力の調整を行います。
通常は直近3〜5期分の決算書を比較して確認を行い、仮に制作スタジオなどの採算性に大きな変動がある場合は会社担当者へのヒアリングを行い、臨時的な要因があるのであれば正常収益力算定に必要な調整を加えます。
貸借対照表(BS)のチェック項目
売掛金に滞留しているものがないか回収可能性のチェックを行い、回収可能性がないものについては売掛金から控除して実態純資産の調整を行います。
機材や、スタジオが持っているコンテンツなどの無形固定資産についても評価し、実態と計上金額が整合しているかを確認します。
また、製作途中のアニメ、ゲームなどの仕掛品について、未計上のものや逆に過大計上されているものがないかを確認します。
在庫のうち未計上のものや、逆に長期滞留している在庫についても確認をします。
クリエイターが指摘されやすい「簿外債務・隠れたリスク」の具体例
フリーランスなどに外注している際の費用や、ロイヤリティの支払いに関する未払いは簿外債務として指摘されやすいです。
たとえば、フリーランスに依頼した作業は完了しているもののクリエイターやスタジオ側で検収が未了のため計上されていない費用や、契約上は毎月末日にロイヤリティを支払うことになっているものの末日が休日で支払いが翌月になったために費用計上されていないロイヤリティ支払いなどが該当します。
そのほか、経営者個人が機材や参考資料を私的利用している、自身が使用しているサブスク代や個人的な交際費を会社の経費としていると、財務DDでの報告事項となります。
正確な金額の算定ができない場合、正常収益力や実態純資産としての調整はできないものの、財務DDでの報告事項になります。
財務DDの進め方・5つのステップ
M&Aを考えており、財務DDを実施したいという場合の進め方を5つのステップに分けて解説します。
①専門家(公認会計士・税理士)の選定
財務DDは非常に専門的な作業のため、公認会計士や会計事務所に依頼が必要です。
ただし、財務DDを実施できる公認会計士や会計事務所は限られるため、財務DDに対応可能か確認し、依頼するようにしましょう。
費用はM&Aの相手先となる企業の規模や状況によって変わりますが、おおむね100万円〜500万円以上になります。
②調査内容の決定
財務DDを円滑に行うため、依頼前に調査内容や目的を決定します。
財務DDでは膨大な資料確認やヒアリングが必要であり、かなりの時間がかかります。
それに応じて費用も跳ね上がるため、調査内容や目的を明確にすることで財務DDを効率的に実施できるようにしましょう。
③必要資料の準備・開示
通常は財務DDを依頼した専門家が質問事項や必要資料をまとめ、売り手企業に資料開示の依頼をします。
M&Aの仲介やFAをつけているのであれば、それらの担当者を通じて売り手企業に依頼するのが通常です。
依頼資料は決算書や契約書、請求書や顧客リスト、売上推移表など多岐にわたり、質問事項も膨大になります。
財務DDを効果的に行うためには、適切な資料開示や質問への回答が必須のため、資料開示などがスムーズにされているかは気にかけておきましょう。
④マネジメント層にヒアリング
財務DDを依頼した専門家は、経営者や財務責任者などのマネジメント層に対して財務情報や運転資本、資金繰りや会計上の適用基準などを直接ヒアリングします。
実際に話を聞いてみることで売り手企業側も意識していなかった隠れた事項が発見されることも度々あるため、マネジメント層へのヒアリングは重要な事項です。
⑤財務DD報告書の作成
専門家は調査した内容をまとめ、財務DDの依頼者へ結果報告を行います。
専門家への依頼から結果報告まで、通常は1か月~2か月かかります。
財務DDは膨大な資料やヒアリング内容をもとに調査をするため、それなりの時間がかかります。
極端に短期での調査報告を依頼すると財務DDでの見落としやミスの可能性が高まるため、M&Aの一連の動きの中で財務DDは早めに依頼しましょう。
まとめ
財務DDはM&Aの売り手企業に対し財務的なリスクや隠れた要素を調査するもので、M&Aにおいて必須といっていい作業です。
財務DDは非常に専門的な作業のため、自身で行おうとせずに専門家へ依頼しましょう。
財務DDを実施している公認会計士や税理士事務所で、さらにクリエイターや制作スタジオなどの財務DD経験が豊富なところに依頼するといいでしょう。
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