確定申告などで売上の計算をしようと思った際に「クライアントから源泉徴収票や支払調書が届かない」「プラットフォームの売上データしかない」という場合があります。このような時は、どうすればよいのでしょうか。

本記事では、源泉徴収票がない・支払調書がもらえない収入の確定申告について、代替資料、具体的な申告手順などを中心に解説します。

クリエイターが勘違いしやすい「源泉徴収票」と「支払調書」の違い

まず、源泉徴収票と支払調書とはどのようなものか、その違いについて確認しましょう。

源泉徴収票とは、会社員やパート、アルバイトなどの「給与所得」について、勤務先が1年間の給与額や源泉徴収税額を記載して交付する書類です。勤務先には、給与を受け取った本人へ源泉徴収票を交付する義務があります。

支払調書とは、イラスト、デザイン、ライティング、動画編集など、業務委託による報酬の支払額や源泉徴収税額を記載する書類です。クリエイターの事業所得や雑所得に関係する書類で、クライアント側は税務署へ提出する義務がありますが、クリエイター本人への交付義務はありません。

両者の主な違いは、対象となる収入と本人への交付義務です。雇用契約に基づく給与には源泉徴収票、業務委託による報酬には支払調書が関係します。

「源泉徴収票がない収入」でも確定申告はできる?

源泉徴収票がない収入でも、確定申告は可能なのでしょうか。

この点について、業務委託であれば「支払調書」、アルバイトなどであれば「源泉徴収票」となりますが、これらはあくまで1年間の収入額や源泉徴収税額を証明する書類に過ぎません。

そのため、これらの書類が手元になくても、収入額と源泉徴収税額を請求書、通帳、取引明細などから正確に確認できれば確定申告は可能です。

また、2019年4月1日以降の確定申告書では、給与所得の源泉徴収票などの添付が不要になりました。ただし、添付が不要なだけで、給与収入や源泉徴収税額の入力は必要です。会計ソフトを利用する場合も、売上と天引きされた源泉税を分けて登録します。

クリエイターによくある「源泉徴収票・支払調書がない」4つのケース

クリエイターとして活動をしていて、源泉徴収票・支払調書がない場合、主に次の4つのケースが挙げられます。

①クライアントが支払調書を発行してくれない(業務委託)

一つ目はクライアントが支払調書を発行してくれないケースです。

業務委託先が支払調書を発行しなくても、直ちに税務上の不備とはいえません。支払調書は税務署への提出書類であり、受取人への交付は任意だからです。

ペーパーレス化などにより、写しを交付しない企業もあります。この場合は、請求書、銀行の入金履歴、報酬明細を照合し、売上と源泉徴収税額を確認します。金額が分からない場合や手元の記録と合わない場合は、クライアントに年間の支払総額と源泉徴収税額を問い合わせましょう。

②ココナラ、Skeb、クラウドワークスなどのプラットフォーム収入

プラットフォームを利用した場合の収入についても源泉徴収票・支払調書が発行されないことがあります。

ココナラ、Skeb、クラウドワークスなどのプラットフォームを利用した場合、源泉徴収票や支払調書が一律に発行されるわけではありません。マイページの売上管理画面、取引明細、CSVデータなどを保存し、売上総額、利用手数料、振込手数料、源泉徴収税額、入金額を確認します。

入金額だけを売上にすると、手数料控除前の売上を過少計上するおそれがあります。会計ソフトでは、原則として売上と支払手数料を分けて記帳すると確認しやすくなります。

③そもそも源泉徴収が発生していない取引(個人間取引など)

そもそも源泉徴収が発生していない取引である場合にも、源泉徴収票・支払調書は発行されません。

SNS経由の有償リクエストやアイコン制作では、相手が源泉徴収義務者に該当せず、税金が天引きされないことがあります。この場合、源泉徴収に関する書類も存在しません。

ただし、源泉徴収されていなくても売上の申告は必要です。依頼内容、請求額、決済履歴、入金履歴を保存し、売上は全額を計上したうえで、源泉徴収税額は0円として処理します。

④副業のアルバイト先から源泉徴収票が届かない(給与所得)

クリエイター活動と並行するアルバイト収入は、雇用契約に基づく給与所得です。アルバイト先には源泉徴収票の交付義務があるため、届かない場合や紛失した場合は、給与担当者へ発行または再発行を依頼します。

年末退職や単発勤務でも、給与所得であれば交付対象です。中途退職者への交付期限は原則として退職後1か月以内であるため、早めに請求し、給与明細や連絡記録も保管しておきましょう。

源泉徴収票・支払調書がない場合の代替書類と最終手段

書類がなくても、取引内容と金額を確認できる資料があれば確定申告はできます。業務委託と給与所得では対応が異なるため、所得区分ごとに必要資料をそろえましょう。

業務委託(事業所得・雑所得)の場合に用意する代替書類

支払調書がない場合は、次の資料から売上と源泉徴収税額を確認します。

・源泉徴収税額が記載された請求書の控え
・銀行口座の入金履歴
・プラットフォームの売上管理画面、取引明細、CSVデータ

通帳の入金額だけでは、源泉税や手数料を差し引く前の売上を把握できないことがあります。請求額、源泉徴収税額、手数料、実際の入金額を照合し、取引先ごとに年間合計をまとめましょう。

これらの資料は通常、確定申告書への添付は不要ですが、帳簿や取引の根拠として保存します。事業所得の法定帳簿は原則7年、請求書などの書類は内容により白色申告なら5年、青色申告なら7年の保存が必要です。電子データで受け取った明細や請求書は、電子データのまま保存します。

アルバイト(給与所得)の場合の再発行・最終手段

給与所得の源泉徴収票がない場合は、まず勤務先の給与担当者へ発行または再発行を依頼します。紛失した場合も、勤務先に連絡すれば原則として再発行を受けられます。

会社が倒産して連絡できない、交付期限を過ぎても発行されないなどの場合は、税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。給与明細の写しや、勤務先へ交付を求めたメールなどを添えて提出すると、税務署から勤務先へ交付を促すことがあります。

源泉徴収票・支払調書がない収入を確定申告する手順

手元の記録から年間の売上、所得区分、源泉徴収税額を順番に整理します。会計ソフトを使う場合も、先に元データをそろえておくと入力漏れを防げます。

ステップ1:請求書・通帳履歴・管理画面から「収入」と「源泉税」を書き出す

1月1日から12月31日までの取引について、取引日、取引先、支払金額、源泉徴収税額、入金額をExcelや売上台帳へ記録します。

売上は、通帳へ振り込まれた手取り額ではなく、原則として源泉税や手数料が差し引かれる前の金額です。年末時点で未入金でも、納品や検収が完了して報酬を受け取る権利が確定していれば、その年の売上となる場合があります。

ステップ2:収入の所得区分(事業所得・雑所得・給与所得)を確認する

収入の所得区分を確認します。

継続的かつ独立してクリエイター活動を行い、帳簿を付けて事業として運営している場合、その収入は事業所得に該当する可能性があります。

副業として小規模に行い、事業と認められる規模に至らない場合は雑所得、アルバイトなどの雇用契約に基づく収入は給与所得です。

ステップ3:確定申告書に正しく金額を入力する

確定申告書に正しく金額を入力します。

業務委託収入は、事業所得または雑所得の収入として源泉徴収前の金額を入力します。そのうえで、確定申告書第二表の「所得の内訳」欄に、所得の種類、取引先名、支払金額、源泉徴収税額を記載します。

第二表に書ききれない場合は「所得の内訳書」を使用します。会計ソフトを利用するときも、取引先ごとの年間集計と申告書へ反映された源泉徴収税額が一致しているか確認してください。

源泉徴収票がない収入の確定申告で注意すべきポイント

書類がなくても申告できますが、源泉税の入力漏れや対象取引の誤認があると、納税額や還付額が変わります。取引ごとに源泉徴収の有無を確認しましょう。

源泉徴収されているのに未記入だと払い損になる

すでに天引きされた源泉徴収税額を申告書へ入力しないと、所得税の前払い分として差し引かれません。その結果、納付額が本来より多くなったり、受け取れる還付金が少なくなったりします。

請求書、支払明細、プラットフォームの管理画面を取引先別に集計し、確定申告書第二表や会計ソフトへ漏れなく反映してください。

源泉徴収の対象外の仕事ではないか確認する

原稿料、一定のデザイン料・イラスト料、翻訳料などは、支払者が源泉徴収義務者である場合、原則として源泉徴収の対象です。一方、システム開発、サイトのコーディングのみを行う業務、商品の転売などは、通常、所得税法第204条に列挙された報酬には含まれません。

源泉徴収の対象外で税金が引かれていない取引は、源泉徴収税額を0円として処理します。ただし、源泉徴収されていないことと、売上を申告しなくてよいことは別です。収入自体は漏れなく計上してください。

まとめ

本記事では、源泉徴収票や支払調書がない場合の確定申告について解説しました。

源泉徴収票や支払調書がなくても、請求書、通帳、プラットフォームの明細などから年間の売上と源泉徴収税額を確認できれば確定申告を進められます。給与の源泉徴収票が発行されない場合は、勤務先への請求や「源泉徴収票不交付の届出書」を検討しましょう。

取引先やプラットフォームが多い場合、所得区分や源泉税の集計については判断が難しいことがあります。このような場合には,
税理士への相談を検討してみてください。

田中貴久公認会計士事務所は個人事業主、とくにクリエイターの税務・会計に強みを持っていますので、お気軽にご相談ください。

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