個人間のメッセージのやり取りで広く利用されているLINEでは、クリエイターがオリジナルスタンプを制作・販売できます。では、LINEスタンプの売上がある場合、確定申告は必要なのでしょうか。

本記事では、LINEスタンプの売上について確定申告の要否・基準、経費、売上の計上時期、所得区分について解説します。

LINEスタンプの売上に確定申告は必要?「いくらから」対象になる?

LINEスタンプの売上がある場合、確定申告は必要なのでしょうか。

LINEスタンプの売上があると、所得税法上の所得となり、所得税の対象となります。ただし、確定申告が必要かどうかは、所得額や働き方によって異なります。ここでは、副業クリエイターと専業クリエイターに分けて解説します。

副業クリエイター(会社員・パートなど)はLINEスタンプの所得が年間20万円を超えたら

年末調整済みの給与を1か所から受け取る会社員やパートは、LINEスタンプを含む給与・退職所得以外の所得が年間20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。

所得は売上から経費を差し引いて計算します。たとえば、分配金などの収入が30万円、必要経費が8万円なら所得は22万円となり、確定申告が必要です。

また、ほかの副業所得があれば合算が必要です。

専業クリエイター(フリーランス・主婦・学生など)は全体の所得が年間95万円(104万円)を超えたら

給与所得のない専業クリエイターは、LINEスタンプを含む年間の合計所得から基礎控除などの所得控除を差し引き、課税所得が生じるかで判断します。

合計所得132万円以下の場合は、2025年分は基礎控除最高額が95万円、2026年分は104万円となります。
基礎控除以外の所得控除がない場合は、2025年分は所得が95万円以上、2026年分は104万円以上になったら、確定申告が必要となります。

ただし、配偶者控除・扶養控除、住民税、社会保険の判定基準は別に確認する必要があります。

売上(収入)ではなく所得で判断する

申告基準になるのは、入金額や販売額ではなく「所得」です。

所得は、LINEスタンプの総収入金額から制作・販売に直接必要な経費を差し引いて計算します。

たとえば、年間の分配金が25万円、経費が7万円なら所得は18万円です。ただし、源泉徴収税額や振込手数料が差し引かれた後の入金額を売上にするのではなく、差引前の分配金を収入として計上し、手数料は経費、源泉徴収税額は前払いした所得税として区分します。
管理画面、分配額確定通知、領収書を保存し、根拠を残しましょう。

知らないと損!LINEスタンプならではの「源泉徴収」と「還付」の仕組み

個人クリエイターへの分配金は、所得税などが差し引かれてから支払われます。これは税額の確定ではなく前払いです。確定申告では、その源泉徴収税額と年間の正しい税額を精算します。精算結果は人によって異なります。

LINEスタンプの分配金は、すでに10.21%天引き(源泉徴収)されている

LINEスタンプの分配金はデザインの報酬として扱われ、個人への支払い時に所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。

1回の支払額が100万円以下なら税率は10.21%です。たとえば、差引前の分配金が10万円なら源泉徴収税額は10,210円となり、さらに振込手数料が差し引かれます。

会計ソフトでは入金額だけを売上にせず、差引前の分配金を収入、源泉徴収税額を「事業主貸」など、振込手数料を「支払手数料」として分けて登録します。なお、1回の支払額が100万円を超える部分には20.42%が適用されます。

確定申告をすれば、天引きされたお金が戻る(還付)可能性がある

源泉徴収された金額が年間の確定税額を上回る場合は、確定申告によって差額の還付を受けられます。

源泉徴収されているのは最終税額ではなく、支払い時の概算による前払いです。たとえば、年間の源泉徴収税額が2万円、確定した所得税額が5,000円なら、原則として差額1万5,000円が還付対象です。

所得が低い、必要経費や所得控除が多いなどの事情により本来の税額が少なければ、確定申告義務のない副業所得20万円以下の人でも還付申告を選択できます。

分配額確定通知などで年間の支払金額と源泉徴収税額を確認し、確定申告書に正しく入力してください。還付額は所得や控除によって異なり、源泉徴収額が必ず全額戻るわけではありません。

LINEスタンプ販売で必要経費にできるもの一覧

所得税の対象となるのは売上から経費を差し引いた所得です。ではLINEスタンプ販売で経費とできるものにはどのようなものがあるのでしょうか。

LINEスタンプ制作で経費にできる主な項目

主な支出と勘定科目の例は次のとおりです。

・消耗品費:パソコン、iPad、液晶タブレット、ペンタブレット、タッチペンなど
・通信費:インターネット回線、Wi-Fi、スマートフォン料金のうち、制作確認やSNS告知に使った部分
・水道光熱費:自宅で制作した時間・スペースに対応する電気代
・支払手数料:Clip Studio、Photoshop、Illustratorなどの月額・年額利用料
・図書研修費:イラスト参考書、ポーズ集、デザインフォント、競合スタンプの研究購入費

勘定科目に絶対的な決まりはなく、ソフト利用料を通信費や消耗品費とする処理もあります。会計ソフトでは、一度決めた科目を継続して使用することが重要です。私的な鑑賞・利用が主目的の購入費は経費にできません。

プライベートと仕事の割合を決める「家事按分」

仕事と私生活の両方で使う支出は、業務で使った部分だけが経費となります。この計算をすることを家事按分といいます。

たとえば、スマートフォンを業務30%、私用70%で使うなら、料金の30%を通信費にします。家賃は作業スペースの面積、電気代は作業時間や使用機器など、支出の性質に合う合理的な基準を設定しましょう。

按分率は感覚だけで決めず、面積図、作業記録、使用時間などの根拠を保存し、毎年同じ考え方で処理します。

10万円以上のパソコンやタブレットは「減価償却」が必要

取得価額10万円以上の機器は、原則として購入年に全額を経費にせず、法定耐用年数にわたって減価償却します。

たとえば、サーバー用以外のパソコンの耐用年数は4年です。

10万円以上20万円未満なら、一定の要件で3年間の一括償却も選べます。

また、青色申告者は少額減価償却資産の特例により、2026年4月以後に取得した40万円未満の資産を、年間合計300万円まで取得年の必要経費に算入できます。

LINEスタンプの売上計上タイミング

会計記帳にあたってLINEスタンプの売上はいつ計上するのか、そのタイミングを知っておきましょう。

入金日ではなく「売上が確定した月」に売上を計上する(発生主義)

LINE Creators Marketでは、毎月末で売上を集計し、翌月中旬ごろに分配額が確定します。したがって、原則として分配額確定通知が届いた月の売上として帳簿に記録します。

たとえば、12月販売分が翌年1月に確定した場合は、通常は翌年分の収入です。会計ソフトでは確定日に「売掛金/売上高」で差引前の分配金を登録し、入金日に「普通預金・事業主貸(源泉所得税)・支払手数料/売掛金」と処理すると、売上と入金のずれを管理できます。
この2段階の仕訳により、未入金の分配金も売掛金残高として確認できます。分配額確定通知は必ず売上の根拠として保存しましょう。

売上を一度も「送金申請」していない場合は?

送金申請をしていなくても、分配額が確定していれば原則として収入に含めます。

実際の入金や請求の有無ではなく、収入を受け取る権利が確定した金額がその年の収入になるためです。分配額が1,000円以下で申請できない場合や、申請せず残高を蓄積している場合も同様です。「口座に1円も振り込まれていないから申告不要」とは判断せず、管理画面と通知から必ず年分ごとに集計してください。

所得区分はどっち?「雑所得」と「事業所得」の違い

LINEスタンプの所得区分は、副業か本業かという呼び方だけでは決まりません。所得区分によって青色申告や赤字の取扱いが変わります。活動の規模、継続性、独立性、営利性、帳簿保存などから実態を慎重に判断します。

趣味や副業お小遣いレベルなら「雑所得」

趣味の延長や小規模な副業として販売し、社会通念上事業といえる規模に達していない場合は、一般に業務に係る雑所得として申告します。

雑所得も「総収入金額-必要経費」で計算でき、白色申告で申告できますが、青色申告特別控除や、赤字を給与所得などと相殺する損益通算は使えません。赤字はほかの所得から差し引けない点に注意が必要です。副業でも帳簿、分配額通知、領収書を保存し、所得計算の根拠を示せるようにしてください。

本業や、継続的かつ独立して稼ぐなら「事業所得(青色申告)」

LINEスタンプ販売を本業とし、デザイン受注などと合わせて営利目的で継続的・独立的に行い、社会通念上事業と認められる場合は事業所得になります。

事業所得で青色申告の承認を受け、複式簿記で記帳し、期限内申告などの要件を満たせば、2026年分までは最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
会計ソフトを使うと、売掛金、源泉所得税、経費、減価償却の管理から決算書作成まで一元化できます。ただし、開業届や青色申告承認申請書を出しただけで事業所得になるわけではなく、活動実態による判定が必要です。

まとめ

本記事ではLINEスタンプの売上についての確定申告などについて解説しました。

LINEスタンプの確定申告では、働き方に応じた基準を確認し、差引前の分配金から必要経費を差し引いて所得を計算します。源泉徴収税額を正しく申告すれば、還付を受けられる可能性もあります。

所得区分、家事按分、減価償却、売上の計上時期など、適切な会計処理に迷う場合は、税理士に相談するのもよいでしょう。田中貴久公認会計士事務所では、クリエイター・個人事業主の税務・会計に関するご相談を承っています。

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