クリエイターとしての本業のかたわら、アルバイトや株式投資、暗号資産など、複数の手段で収入を得ている方もいるでしょう。
これらの収入がある場合は、それぞれの所得区分を確認したうえで、一つの確定申告にまとめて申告する必要があります。

本記事では、複数の収入がある場合の確定申告について、所得区分ごとの計算方法や注意点を解説します。

個人事業主で「複数収入」がある場合の確定申告の基本ルール

複数収入がある個人事業主の、確定申告の基本ルールを確認しましょう。

 

確定申告は1年間の「すべての所得」を合算する

確定申告は、1年間のすべての所得を合算して計算します。

所得税は、原則として1月1日から12月31日までに生じた所得が対象です。事業所得、給与所得、雑所得などの総合課税対象所得を合算し、所得控除を引いた課税所得に税率を適用します。

事業用とアルバイト用で申告書を分けるのではなく、確定申告書一式の各欄へ記入します。分離課税の株式等がある場合も、同じ申告の中で第三表などを使用して計算します。

収入の種類によって10種類の「所得区分」に分かれる

税額計算の第一歩は、収入がどの所得に該当するかを判定することです。

所得は、利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑の10種類に区分され、必要経費、控除、赤字の扱いが異なります。

 

クリエイターによくある「5つの所得区分」と計算方法

クリエイターが複数収入を申告するときは、主に次の5区分を確認します。同じ入金でも、制作報酬、雇用契約による給与、投資利益では処理が異なります。

事業所得(本業の収入)

本業として継続的に行うイラスト制作、デザイン、漫画原稿、動画編集などの売上は、原則として事業所得です。

計算式は「総収入金額-必要経費-青色申告特別控除」で、要件を満たせば最大65万円を控除できます。

会計ソフトには売上、外注費、機材費、ソフト利用料などを記帳し、青色申告決算書または収支内訳書を作成します。給与や株式売却益は事業売上に含めず、申告画面の各所得欄へ入力します。

給与所得(アルバイト収入)

雇用契約を結び、給与として受け取る収入は給与所得です。

計算式は「給与収入-給与所得控除」で、事業所得のように実際の支出を自由に必要経費へ計上する方法ではありません。

源泉徴収票の内容を確定申告書または会計ソフトの給与所得欄へ入力します。給与所得には給与所得控除が適用され、その控除額は給与収入に応じて決まります。

雑所得(事業規模ではない副業・暗号資産など)

他の9種類に該当しない所得は雑所得です。事業としての実態がない単発の仕事、趣味のネットオークションによる課税対象の利益、暗号資産の売却・決済・交換による利益は、原則として雑所得に区分されます。

計算式は「総収入金額-必要経費」です。

暗号資産は取引所ごとの履歴を集めて取得価額と売却価額を計算します。雑所得の赤字は、原則として給与所得や事業所得から差し引けません。

配当所得・譲渡所得(株式投資など)

株式の配当金は配当所得、株式や投資信託の売却益は譲渡所得等として扱います。

上場株式等の譲渡益は原則申告分離課税ですが、源泉徴収ありの特定口座は申告不要を選べます。申告する場合は特定口座年間取引報告書を使用します。

NISA口座で非課税対象となる配当や売却益は、通常は申告不要です。一方、NISA口座内の損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除に使えません。

一時所得(賞金など)

業務に直接関連しないコンテスト賞金や、ふるさと納税の返礼品などは、一時所得となる場合があります。

「総収入金額-収入を得るために直接支出した金額-特別控除額(最大50万円)」で計算し、その2分の1を総所得金額へ加算します。

ただし、業務の一環として応募した賞金は事業所得となる場合があるため、活動との関連性を確認しましょう。

事業収入とその他の収入を合算して確定申告する4ステップ

複数収入の申告は、資料収集、所得計算、申告書入力、税額計算の順に進めます。

会計ソフトを使う場合も、先に所得区分を確定させましょう。

STEP1:各種書類(源泉徴収票や支払調書)を集める

アルバイト先の源泉徴収票、証券会社の特定口座年間取引報告書、暗号資産の取引履歴、売上台帳、領収書、控除証明書を集めます。

支払調書がない場合は、請求書や入金明細から年間売上と源泉徴収税額を確認します。

STEP2:所得区分ごとに所得金額を計算する

事業所得は青色申告決算書または収支内訳書を作成し、給与所得は源泉徴収票を基に計算します。

雑所得、一時所得、配当所得、譲渡所得も、それぞれの方法で算出します。

freeeなどの会計ソフトでは、事業の仕訳を基に青色申告決算書や収支内訳書を作成し、給与など事業以外の所得も申告書に反映できます。

STEP3:確定申告書(第一表・第二表)の該当箇所に記入する

第一表の「収入金額等」と「所得金額等」へ、事業所得、給与所得、雑所得などの金額を区分して入力し、合計します。

第二表には所得の内訳、源泉徴収税額、社会保険料などを記載します。分離課税の株式等を申告する場合は、第三表や計算明細書も使用します。

STEP4:所得控除を引き、最終的な税額を計算する

基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除などを差し引き、所得税と復興特別所得税を計算します。

源泉徴収済みの税額と比較し、不足分を納付するか、払い過ぎた税額の還付を受けます。

複数収入がある個人事業主が絶対に知っておくべき注意点

複数収入では、年末調整、赤字の所得区分、株式配当の課税方法が税額に影響します。すべてを事業売上へ入れず、制度ごとの扱いを確認しましょう。

バイト先で年末調整していても確定申告は必須

アルバイト先の年末調整は、原則としてその勤務先の給与所得だけを精算する手続きです。
事業所得などを申告する場合は、年末調整済みの給与も含め、対象所得を確定申告書へ記載して税額を再計算します。

本業が赤字ならアルバイト代と「損益通算」できる

クリエイター活動が事業所得に該当し、必要経費が売上を上回った場合、その赤字は給与所得などと損益通算できます。

アルバイト給与から所得税が源泉徴収されていれば、通算後の税額との差額が還付される可能性があります。

一方、雑所得の赤字は他の所得と損益通算できません。赤字の通算を前提にする場合は、営利性・継続性、帳簿、取引記録などから事業所得として説明できる状態を整えます。

株式の配当金は申告方法の選択で税金が変わる

上場株式等の配当は、要件に応じて「申告不要」「総合課税」「申告分離課税」から選択できます。

総所得が少ない場合は、総合課税を選び、対象となる国内法人の配当について配当控除を受けると所得税が下がるケースがあります。

ただし、譲渡損失との通算を希望する場合は申告分離課税を検討するなど、選択肢ごとの税額を会計ソフトで試算し、必要に応じて税理士へ確認しましょう。

まとめ

個人事業主に複数収入がある場合は、事業所得、給与所得、雑所得、配当所得・譲渡所得、一時所得へ正しく分類し、一つの確定申告にまとめます。区分を誤ると、必要経費、損益通算、控除の適用を誤るおそれがあります。

収入源が多い、事業所得と雑所得の判断が難しい、配当の申告方法を比較したい場合は、税理士に相談してみるのも一つの方法です。

田中貴久公認会計士事務所は個人事業主のクリエイターの税務・会計に強みを持っているので、お気軽にご相談ください。

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