複数人で同人活動をする場合でも収入を得た場合は、所得要件によって確定申告が必要になります。

本記事では、複数人で同人活動をする際の確定申告の申告担当者や、メンバー間で揉めないための税務上のポイントについて解説します。

税法上「同人サークル名義」での確定申告はできない

まず、税法上、同人サークル名義では所得税の確定申告ができない、ということを知っておきましょう。

一般的な少人数の同人サークルは法人ではありません。そのため、サークル名だけを納税者にして、所得税や法人税の確定申告はできません。

任意団体として活動している場合も、実態に応じて代表者個人の事業または民法上の任意組合などとして扱われます。

同人サークルの確定申告は「誰が」する?選べる2つのパターン

では、同人サークルとして活動する場合、誰が確定申告をするのでしょうか。2つのパターンに分けて考えましょう。

パターン①代表者(主催)が一括して申告する

代表者が販売主体となり、イベントやBOOTH、DLsiteなどの売上を自分の収入として計上するのが1つ目のパターンです。

印刷費、出展料、販売手数料、配送費、メンバーへの制作報酬も代表者の帳簿に記録します。代表者が契約や在庫管理を担うサークルでは、実務上選ばれやすい方法です。

パターン②メンバー全員で利益を「按分(山分け)」して各自で申告する

共同事業の場合は、全体の売上と経費を集計し、合意した割合で損益を配分して行うのが2つ目のパターンです。

各メンバーは、自分に配分された利益を、活動の実態に応じて事業所得または雑所得として申告します。利益の按分比率や計算方法は、事前に決めた基準に基づいて継続的に適用しましょう。
なお、任意組合など共同事業として扱われる場合は、利益や損失を各組合員に配分し、それぞれが自分の所得として申告します。

【パターン①】代表者が一括申告する場合のお金の処理と注意点

代表者が一括申告する場合のお金の処理については、次のような注意点があります。

メンバーへの分配金は「外注費」や「給与」として経費にする

原稿、イラスト、編集、設営など具体的な業務の対価は、代表者側で外注費などの必要経費にできます。

業務内容、納期、報酬額または計算方法を事前に決め、契約書や請求書を残します。所得税では、収入を得るために直接必要な費用や、その年に生じた業務上の費用が必要経費となります。

代表者の指揮命令を受け、勤務時間や場所を指定されるなど雇用の実態があれば給与です。給与には源泉徴収などの手続きが伴います。利益を後から山分けしただけでは、自動的に外注費や給与にはなりません。

「支払いの証拠」を必ず残すこと

必要経費にするには、業務への対価であることを説明できる資料が必要です。

振込履歴、契約書、請求書、領収書または受領書、納品データを保存します。

現金払いでは「支払日・氏名・金額・業務内容」を記載した受領書に署名をもらいましょう。報酬額も作業内容に見合う金額にし、生活費の援助や単なる贈与と区別できる状態にすることが重要です。
身内だからと曖昧にせず、きちんと証拠を残すようにしましょう。

お金を受け取ったメンバー側の税金はどうなる?

原稿料や制作報酬を受け取ったメンバーは、自分の収入として記録します。

継続的・独立的な活動なら事業所得、小規模な副業などなら雑所得、給与として受け取った場合は給与所得です。

源泉徴収された報酬がある場合は、確定申告で源泉徴収税額を入力し、納める所得税から差し引きます。また、代表者側で外注費として計上した報酬は、受け取ったメンバー側でも収入として申告しなければなりません。申告内容に食い違いが生じないよう、確定申告前に支払額と受取額を照合しておくようにしましょう。

【パターン②】利益を按分(山分け)して各自で申告する場合の注意点

利益を按分して、各自で確定申告を行う場合の注意点を確認しましょう。

「どんぶり勘定」の山分けは税務署に認められない

「黒字だったので半分ずつ」といった事後的な山分けでは、各メンバーの所得の計算根拠を説明できません。

出資割合、担当業務、制作量などに基づく按分比率を事前に決めます。

たとえば、売上100万円、経費40万円、利益60万円を5対5で分けるなら、各自の利益は30万円です。作業量に応じて6対4とする場合も、契約書や議事メモに理由を残し、継続して同じ基準を使用します。

「精算書」を作成し、サークルの会計をクリアにする

売上や経費処理について「精算書」を作成して、サークルの会計を明確にしておきましょう。

イベントや販売期間ごとに「売上、販売手数料、印刷費、その他の経費、差引利益、按分比率、各自の取り分」を記載した精算書を作成します。

精算書は領収書や販売明細とひも付け、PDFなどでメンバー全員へ共有・保管してください。修正した場合は更新日と修正理由を残し、どの精算書を確定資料として使用したか分かる状態にします。

合同誌の企画やゲスト参加・売り子を頼む場合の税務

固定メンバー以外の人へ原稿料や謝礼を支払う場合は、サークル内の利益配分ではなく、外部への報酬または給与として処理します。

依頼時に業務内容、金額、支払日を決めておきましょう。

合同誌の主催者は「支払調書」や「源泉徴収」が必要?

ゲストへの原稿料は源泉徴収の対象となる報酬ですが、支払者が個人で、従業員などへ給与を支払っていない場合は、原則として源泉徴収義務はありません。

給与を支払っている個人や法人が主催者であれば、原稿料を支払う際に源泉徴収が必要です。

支払調書は、支払者の区分と年間支払額を確認して判断します。提出義務者が作家などへ年間5万円を超える原稿料や画料を支払った場合は、原則として翌年1月31日までに税務署へ提出します。支払調書の写しを受取人へ交付する義務はありません。

源泉徴収の要否は、主催者の所得区分が雑所得か事業所得か、青色申告をしているかではなく、主に支払者が源泉徴収義務者に当たるかで判断します。

売り子さんへの謝礼(日当・交通費)の扱い

売り子への日当や交通費は、販売業務に必要で金額が相当であれば経費にできます。

交通費は利用した経路と実費、謝礼は支払日、氏名、金額、業務内容を記録し、受領書や振込履歴を残します。

飲食費も、業務上必要な打合せ費や謝礼の一部と説明できる場合に限られます。個人的な飲食費は経費にできません。勤務時間や業務方法を細かく指示するなど、雇用に近い実態がある場合は給与として処理します。

そもそもサークルの確定申告は「いくらから」必要?

基準となるのは、サークル全体の売上ではなく、自分へ帰属する所得です。

所得は、イベントや通販の売上、代表者から受け取った報酬などから必要経費を差し引いて計算します。

年末調整済みの会社員などは、同人活動を含む給与・退職所得以外の所得が年間20万円を超えると、原則として所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも、医療費控除などを受けるために確定申告する場合は副業所得も申告します。また、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要になる場合があります。

専業のフリーランスなど給与所得がない人は、確定申告が必要かどうかを判断する目安の一つとして基礎控除額があります。令和7年分は「所得95万円超」、令和8年・令和9年分は「所得104万円超」が一つの目安です。
ただし、実際の申告義務は他の所得控除、源泉徴収税額、同人活動以外の所得なども含めて判定します。

同人サークルの税金トラブルを防ぐための「防衛策」3選

同人サークルの税金トラブルを防ぐための防衛策として、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

サークル専用の銀行口座を作る

同人サークルの税金トラブルを防ぐための防衛策の1つ目は、サークルの専用口座を作ることです。

生活費とサークルのお金が同じ口座に混在すると、売上や経費の集計漏れが起きやすくなります。サークル名義の口座を作れない場合も、代表者名義の未使用口座を活動専用にし、売上入金と経費支払を集約します。

freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトへ口座やクレジットカードを連携すると、取引明細を自動取得でき、手入力の負担を減らせます。ただし、自動仕訳の科目を確認し、メンバーへの支払いには相手の氏名と業務内容を入力してください。

イベントごとの「収支スクショ」や「エクセル帳簿」の保管

イベントごとに収支を明確にするために、スクショ・エクセルで作成した帳簿を保管しましょう。

とらのあな、メロンブックス、BOOTH、DLsiteなどの販売データ、振込明細、手数料明細は、月またはイベントごとに保存します。現金売上は頒布数と現金残高を当日中に集計し、Excelや会計ソフトへ記録します。

電子で受け取った明細や請求書は、原則として電子データのまま保存します。「日付_取引先_金額」など検索しやすいファイル名を付け、販売データと帳簿を確認できる状態にしましょう。

活動初期から「お金のルール」を明文化しておく

活動初期からお金のルールを明文化しておきましょう。

代表者、売上の帰属、経費の承認方法、利益の按分比率、支払時期、赤字の負担、売れ残った在庫の所有者と費用負担、脱退時の精算方法を文書にします。

合意書には作成日と全員の署名を入れ、ルールを変更した場合も合意内容を記録してください。税務処理を明確にできるだけでなく、在庫、制作費、著作権の帰属をめぐるメンバー間のトラブル予防にもつながります。

まとめ

同人サークルの確定申告では、代表者一括型と利益按分型のどちらを採用するかを活動実態に合わせて決めます。支払いの証拠、精算書、販売明細、合意書を残し、代表者側とメンバー側の申告額を一致させましょう。

源泉徴収、給与と外注費の区分、任意組合や人格のない社団等の判定は、事実関係によって結論が変わるため、個人では判断しにくく、専門知識を持つ人に相談するのがおすすめです。

クリエイター・個人事業主に強い田中貴久公認会計士事務所に、いつでもご相談ください。

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