
Webデザインや動画編集については、その技術習得のため、多数のセミナーやスクールが開催されています。これらのセミナーやスクールにかかる受講費用は、経費となるのでしょうか。また、経費となる場合にはどのような勘定科目で経費とすればよいのでしょうか。
本記事では、セミナーやスクールの受講料を経費にできる条件や勘定科目、仕訳例、証拠書類を解説します。
受講料・セミナー代は経費にできる?基準は「業務の遂行に直接必要かどうか」
個人事業主が受講料を必要経費にできるのは、現在の業務を遂行するために直接必要な技能・知識を学ぶ支出で、金額も通常必要と認められる範囲に限られます。
たとえば、Webデザイナーが最新のUI/UXデザイン講座を受け、受注案件へ活用する場合は経費性を説明しやすいでしょう。一方、イラストレーターが現在の事業と結びつかない分野のスクールへ通う場合は、将来役立つ可能性があっても経費化のハードルが高くなります。
「現在の事業」「講座内容」「活用する案件」「金額の妥当性」を整理して判断しましょう。
経費に「できる受講料」と「できない受講料」の境界線
では実際にセミナー・スクールに払った受講料のうち経費にできるケースとできないケースについて確認しましょう。
経費に「できる」受講料・セミナー代の具体例
経費にできるセミナー・スクールの受講料は、現在の業務の品質向上、受注範囲の拡大、集客や事業運営に直接つながるものです。
・本業のスキルアップ・最新技術の習得:デザイナーのUI/UXデザイン講座、Figma活用セミナー
・受注幅を広げるための隣接スキルの習得:デザイナーの動画編集スクール、プログラミング勉強会
・集客・マーケティング・事業運営に必要な知識:SNS運用、確定申告、契約・法務のセミナー
隣接スキルは、「既存クライアントから動画編集を依頼されている」など、具体的な受注計画とのつながりを残しておくことが重要です。
経費に「できない」受講料・セミナー代の具体例
私生活上の支出や、新しい職業に就くための準備費用と判断されやすいものは、原則として必要経費にできません。
・業務に全く関係のない趣味・教養の講座:ヨガ教室、料理教室、アロマセラピー
・現状の事業と結びつかない畑違いの資格・スキル:趣味の資格、世界遺産検定
・現在の事業とは関係のない国家資格の取得:税理士、弁護士、行政書士などの予備校代
・事業主以外(家族など)の受講料:配偶者や子どものスクール代
ただし、簿記講座を事業の記帳・原価管理に直接活用する場合などは、一律に対象外とは限りません。
また、家族が青色事業専従者や従業員として実際に事業へ従事し、業務に直接必要な研修を受ける場合は経費になる余地があります。
【受講料の勘定科目】何を使う?目的別の仕訳ルール
勘定科目に税法上の絶対的な指定はありません。内容が分かる科目を選び、同じ性質の支出には同じ科目を使います。freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトでは、摘要に講座名と業務目的を入力しましょう。
基本はこれ!「研修費」
業務知識や技術を習得するためのセミナー・スクール代は、原則として「研修費」で仕訳します。
「教育訓練費」などを使っても問題ありません。摘要には「〇〇案件のためのFigma講座」など、業務目的を記録します。
テキスト・教材を別途支払ったなら「新聞図書費」
受講料とは別に購入したテキスト、参考書、専門書、電子書籍は「新聞図書費」で処理します。
教材費が受講料に含まれ、金額を分けられない場合は、まとめて研修費としても差し支えありません。
セミナー後の懇親会や取引先との同席なら「交際費」
終了後の懇親会で、取引先や見込み客との関係構築を目的とする飲食費は「交際費(接待交際費)」で仕訳します。
一括請求された場合は、内訳を分けるか合理的に按分します。私的な飲食は経費になりません。
セミナー会場までの移動費・宿泊費なら「旅費交通費」
対面セミナーへ参加するための電車代、新幹線代、バス代、必要な宿泊費は「旅費交通費」です。
観光や私用を兼ねた場合は、セミナー参加に必要な部分だけを経費にします。
年数回、少額で専用の科目が不要なら「雑費」
年に数回、数千円程度の単発受講であれば、「研修費」を新設せず「雑費」で処理しても問題ありません。
ただし、雑費を多用すると内容が分かりにくいため、受講回数や金額が増えたら研修費へ統一します。
受講料・セミナー代の仕訳例を分かりやすく紹介
会計ソフトへ入力するときは、支払方法、受講期間、開業前後のどの時点で支払ったかを確認します。
仕訳例①:単発のオンラインセミナー代(5,000円)を事業用カードで支払った場合
クレジットカード利用時は、カード会社への債務を「未払金」で処理します。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 研修費 | 5,000円 | 未払金 | 5,000円 | 〇〇Webデザインセミナー受講料 |
引き落とし時は「未払金5,000円/普通預金5,000円」と仕訳します。即時に預金決済される場合は、貸方を普通預金とします。
仕訳例②:半年間の動画編集スクール代(30万円)を銀行振込で一括払いした場合
受講期間が年をまたぐ場合は、当期分を研修費、翌期分を前払費用として期間按分します。ここでは当期2か月10万円、翌期4か月20万円とします。
【支払時の仕訳】
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 研修費 | 100,000円 | 普通預金 | 300,000円 | スクール受講料(当期分) |
| 前払費用 | 200,000円 | スクール受講料(翌期分) |
翌期は「研修費200,000円/前払費用200,000円」へ振り替えます。
仕訳例③:開業前に受講したイラストスクール代(15万円)をプライベート資金で支払っていた場合
開業準備のために特別に支出し、開業するイラスト事業に直接必要な受講料と説明できる場合は、開業費として処理する余地があります。
【開業日時点の仕訳】
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 開業費 | 150,000円 | 元入金 | 150,000円 | 開業前〇〇スクール受講料 |
開業費は60か月の均等償却または任意償却が可能です。なお、一般的な技能習得や自己研鑽は、開業前に支払っただけで開業費になるわけではありません。開業準備のために「特別に」支出した費用か、講座内容と開業との関係を慎重に確認してください。
税務調査で「経費」と認められるために!準備すべき証拠書類
支払いの証拠に加え、仕事との関係を説明する資料も保存します。会計ソフトの証憑添付機能も活用しましょう。
領収書・クレジットカード明細・受講証明書の保管
領収書、請求書、カード明細、銀行の振込記録、受講証明書を保存します。電子メールやWebサイトから受け取った領収書・請求書は、電子帳簿保存法に従い、原則として電子データのまま保存します。帳簿書類の保存期間は原則5年または7年です。
セミナーパンフレット・カリキュラム・成果物の保存
税務調査で仕事との関係を確認されたときに備え、パンフレット、カリキュラム、テキスト、受講メモ、学んだ技術を使ったポートフォリオや納品物を保存します。「受講内容→業務での活用→売上」の流れを客観的に説明できる資料が有力な証拠になります。
まとめ

セミナー受講料やスクール代は、現在の業務に直接必要で、通常必要な金額と説明できる場合に経費計上できます。
勘定科目は研修費を基本とし、教材は新聞図書費、業務上の懇親会は交際費、移動・宿泊は旅費交通費として整理しましょう。
国家資格の取得費用、家族の受講料、開業前のスクール代、高額な長期講座は個別判断が必要です。仕訳や証拠書類に不安がある場合は、税理士に相談してみるのもよいでしょう。
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