「個人事業主になったけれど、帳簿の付け方がわからない」こうした悩みを抱えているクリエイターも少なくありません。
そもそもなぜ帳簿が必要なのか、また、帳簿と関係の深い青色申告とはどのようなものなのでしょうか。

本記事では、帳簿が必要な理由、売上・経費の記録方法、青色申告と白色申告の違い、会計ソフトの活用方法などについて解説します。

個人事業主に帳簿付けが必要なのはなぜ?

クリエイターなどの個人事業主は、なぜ帳簿を付けなければならないのでしょうか。

帳簿とは事業のお金の流れを記録するもの

帳簿とは、売上や必要経費など、事業に関する取引を記録するものです。

日々の取引を記録し、1年間の収入や必要経費を集計して、所得を正しく計算するための土台になります。

たとえば、イラスト制作料は売上、制作資料やソフト代は経費として記録します。こうしてどのようにしてお金が入ってきて、どのようなお金を支出しているのかの流れを記録します。

青色申告でも白色申告でも記帳が必要

帳簿付けは、青色申告、白色申告共に必要です。

よくある誤解に「白色申告なら帳簿は不要」というものがあります。白色申告では簡易な記帳が認められていますが、青色・白色のどちらでも、帳簿を作成する必要があることに変わりはありません。

帳簿を付けておくと確定申告がラクになる

日頃から帳簿を付けておくと確定申告がラクになります。

個人事業主は、所得税の確定申告が必要な場合、1年間の売上や必要経費を計算して所得を申告する必要があります。
確定申告にあたっては売上と経費を計算して所得を申告する必要がありますが、帳簿を作成しておくことで所得の計算が容易になります。

また、帳簿と領収書などを整理しておけば、税務調査で取引内容を確認された場合にも説明しやすくなるでしょう。

個人事業主の帳簿の付け方は3ステップ

帳簿付けは、取引を整理し、帳簿へ記録し、帳簿書類を保存する流れで進めます。次の3ステップを順番に行いましょう。

STEP1:売上・経費などの取引を整理する

最初に、売上が発生した日、取引先、金額、支払った経費、支払先、支払方法などを確認します。

口座やカードの明細だけでなく、請求書や納品書、プラットフォームの売上管理画面も照合すると漏れを防ぎやすくなります。

クリエイターの場合は、イラスト制作料、動画編集報酬、原稿料、YouTube収益、BOOTHの販売収入、FANBOXの支援金、Skebの報酬など、収入源ごとに整理するとわかりやすくなります。

STEP2:取引を帳簿に記録する

整理した取引は、日付、勘定科目、金額、摘要などを帳簿へ記録します。

たとえば、イラスト制作料10万円の売上と、クレジットカードで購入した動画編集ソフト3,000円を記録する場合は、以下のようになります。

日付 勘定科目 金額 摘要
8/10 売上 100,000円 イラスト制作料
8/12 消耗品費 3,000円 動画編集ソフト代

複式簿記では、売掛金や未払金など相手側の勘定科目も記録します。勘定科目は取引の実態に応じて選び、継続して同じ基準で処理することが大切です。

STEP3:領収書・請求書などを保存する

帳簿だけでなく、領収書、レシート、請求書、納品書、銀行明細、クレジットカード明細なども整理して保存します。

保存期間は書類の種類や申告方法によって異なります。メールやWeb上で受け取った請求書などの電子取引データは、原則として電子データのまま保存する必要があるため注意しましょう。

クリエイターが帳簿を付けるときのポイント

クリエイターは入金時期のずれやプラットフォーム手数料、公私の支出混在が起こりやすいため、次のポイントを押さえましょう。

売上は「入金された日」だけを見て記帳しない

売上は、原則として銀行口座へ入金された日だけで判断しません。

所得税では、その年に「収入すべき権利が確定した金額」をその年の収入として計上するのが基本です。たとえば、12月に制作・納品して売上が確定し、入金が翌年1月になった場合でも、原則として12月の属する年の売上として記帳します。

このように、実際の入金日ではなく、収入すべき権利が確定した時点で収入を計上する考え方を「発生主義」といいます。

なお、一定の小規模な青色申告者は、届出により現金主義の特例を選べる場合があります。

プラットフォームの手数料も確認する

プラットフォームの手数料もしっかり確認するようにしましょう。

BOOTH、FANBOX、クラウドソーシングなどでは、「売上-手数料=振込額」となることがあります。銀行口座への振込額だけを売上にすると、売上を少なく記録するおそれがあるので注意しましょう。

たとえば、売上10,000円から手数料1,000円が差し引かれ9,000円が振り込まれた場合は、原則として売上10,000円と支払手数料1,000円などに分けます。売上管理画面や支払明細で総額と手数料を確認しましょう。

プライベートと事業のお金が混ざっている場合は分けて記録する

個人用カードで仕事用PCを購入した、個人口座に売上が入る、スマホや回線を仕事と私用で共用している場合などは、事業部分と私用部分を区別して記録します。

管理を簡単にするには、事業用の銀行口座やクレジットカードを用意する方法が有効です。事業の入出金をまとめれば、明細確認や会計ソフトとの連携もしやすくなります。

自宅で仕事をしている場合は家事按分に注意

自宅で仕事をしている場合、家賃、電気代、インターネット代、スマホ代などの一部を必要経費にできることがあります。

ただし、私生活にも使っている費用の全額を経費にはできません。

仕事部屋の床面積や使用時間など、事業で使用した割合を説明できる合理的な基準で家事按分します。計算方法や根拠も残しておきましょう。

青色申告と白色申告では帳簿の付け方が違う?

青色申告と白色申告では、求められる記帳方法や青色申告特別控除の要件などが異なります。
特に65万円控除を受けたい場合は、複式簿記を前提に準備しましょう。

白色申告は比較的簡易な記帳ができる

白色申告では、簡易な方法による記帳が認められています。

たとえば、売上や経費について取引年月日、相手先、金額などを記録します。一定の取引について日々の合計額をまとめて記載することもできます。

もっとも、複式簿記ほど複雑ではありませんが、帳簿が不要になるわけではありません。請求書や領収書などもあわせて保存しましょう。

青色申告で65万円控除を受けるなら複式簿記が基本

令和8年分まで、65万円の青色申告特別控除を受けるには、正規の簿記の原則による記帳を行い、貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告をしたうえで、e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存などの要件を満たす必要があります。

この要件を満たすためには複式簿記を用います。

項目 単式簿記(簡易簿記) 複式簿記
記録方法 収入・支出を中心に記録 借方・貸方の両面で記録
難易度 比較的簡単 簿記の知識が必要
青色申告特別控除 原則10万円 要件を満たせば55万円・65万円

会計ソフトを使えば、日々の取引から仕訳帳や総勘定元帳を作成しやすくなります。e-Taxの具体的な手順は、「e-Taxを使った青色申告のやり方を徹底解説!」も参考にしてください。

なお、令和9年分以後は制度が改正され、一定の要件を満たす場合の青色申告特別控除は最大75万円になります。申告する年分の最新要件を国税庁で確認してください。

個人事業主が作成する主な帳簿とは?

個人事業主が作成する主な帳簿は次のとおりです。すべてを手作業で作る必要はなく、会計ソフトへ日々の取引を入力すれば必要な帳簿を作成しやすくなります。

帳簿 主な役割
仕訳帳 すべての取引を日付順に記録する
総勘定元帳 仕訳を勘定科目ごとに整理する
現金出納帳・預金出納帳 現金や預金の入出金を管理する
売掛帳・買掛帳 未回収の売上や未払いの取引を管理する
経費帳 経費を科目ごとに記録する
固定資産台帳 PCやカメラなどの固定資産を管理する

必要な補助簿は事業内容や取引方法によって異なります。会計ソフトなら、入力した仕訳から各帳簿へ反映できるため、同じ内容を何度も手作業で転記する必要はありません。

帳簿は手書き・Excel・会計ソフトのどれがいい?

帳簿は手書き、Excel、会計ソフトのいずれでも作成できます。初心者ほど、入力補助や自動連携がある会計ソフトを利用すると管理しやすいでしょう。

方法 メリット デメリット
手書き ソフト不要で始められる 記入・集計に手間がかかる
Excel 小規模なら始めやすく自由度が高い 入力漏れや数式ミスに注意が必要
会計ソフト 銀行・カード連携、仕訳、申告まで効率化しやすい 利用料や初期設定が必要

freeeやマネーフォワードなどでは銀行口座やカード明細を取り込み、仕訳や帳簿作成、確定申告まで効率化できます。帳簿の付け方がわからない初心者ほど、入力漏れや作業負担が軽い会計ソフトがおすすめです。

まとめ

個人事業主の帳簿付けは、取引を整理し、帳簿へ記録し、領収書や請求書などを保存することが基本です。青色申告で大きな特別控除を受ける場合は複式簿記が重要になるため、早めに会計ソフトなどで記帳の流れを整えましょう。

売上計上の時期や経費の判断、青色申告の帳簿作成に迷う場合は、クリエイター・個人事業主に強い田中貴久公認会計士事務所にお気軽にご検討ください。

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