確定申告

クリエイターや副業フリーランスの中には、原稿料・デザイン料・動画編集費などを受け取っていても、「少額だから不要」「源泉徴収されているから大丈夫」と思って確定申告をしていない人もいるでしょう。

過去に確定申告をすべきなのにしていなかった場合、過去分を遡って確定申告はできるのでしょうか。また、確定申告をしないことなどのペナルティにはどのようなものがあるのでしょうか。

本記事では、確定申告の過去分はいつまで遡れるのか、確定申告をしていない場合のペナルティなどについて解説します。

確定申告の過去分はいつまで遡って申告できる?

過去分の確定申告は、原則として一定期間遡って手続きできます。

期限後申告の期限は「5年前」までが基本

期限後申告の期限は、基本的に5年前までです。

還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
納税が必要だった場合も、税務署が遡って税金を請求できる期間は原則5年間です。ただし、意図的な売上隠しや架空経費の計上といった悪質なケースに該当すると判断された場合は、最大7年間まで遡って請求される可能性があります。

まずは5年分を中心に、通帳・請求書・支払調書・経費資料を集めましょう。

また、過去分を確認するときは、「売上があった年」だけでなく、「経費や控除を入れると還付になる年」がないかも確認することが大切です。
特に、源泉徴収されている報酬が多いクリエイターは、納税ではなく還付になる可能性もあります。まずは年分ごとに売上・経費・源泉徴収税額を一覧化し、申告が必要な年と還付申告を検討できる年を分けて整理しましょう。

クリエイターによくある「無申告」のケース

クリエイターによくあるのは、副業収入について「確定申告は不要」と思い込んでいたケースです。

会社員でも、副業などの所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。また、原稿料やデザイン料から源泉徴収されている場合でも、申告が不要とは限りません。源泉徴収は概算の前払いであり、経費や控除を反映して最終税額を精算するには確定申告が必要になることがあります。

申告によって還付を受けられる可能性もあります。

【要注意】確定申告を放置するリスクとペナルティ

確定申告をせずに放置した場合のリスクとペナルティについて、解説します。

無申告加算税

無申告加算税は、期限内に申告しなかった場合に課されるペナルティです。

税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税額に対して原則5%の無申告加算税がかかります。一方、事前通知後に申告した場合は、令和5年分以降、50万円までの部分は10%、50万円超300万円までの部分は15%、300万円を超える部分は25%です。

税務調査を受けた後や、税務署から申告納税額の決定を受けた場合は、50万円までの部分は15%、50万円超300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%となります。

そのため、過去の申告漏れに気づいた場合は、税務署から指摘される前に自主的に申告するようにしましょう。

延滞税

延滞税は、納付期限までに税金を納めなかった場合に、法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて発生するペナルティです。

期限後申告や修正申告によって納付税額が発生した場合も、延滞税の対象になります。延滞税の割合は年によって変動しますが、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、2か月を経過した日以後は年9.1%です。
令和4年1月1日から令和7年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.4%、2か月経過後が年8.7%とされています。

延滞税は日数に応じて増えるため、申告書の提出後は速やかに納付することが重要です。

重加算税

重加算税は、売上を意図的に隠したり、架空経費を作ったりするなど、隠蔽や仮装がある場合に課される重いペナルティです。

単なる申告忘れや計算ミスではなく、悪質性があると判断された場合に、本来課される加算税に代えて課されます。

税率は、過少申告加算税に代えて課される場合は原則35%、無申告加算税に代えて課される場合は原則40%です。さらに、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがあるなど、一定の繰り返しがある場合には、10%加重される可能性があります。
クリエイターの場合、販売サイトの売上、銀行口座への入金、現金売上などを意図的に除外していると、重加算税の対象になり得ます。

青色申告の取り消し・適用不可

青色申告は、帳簿の作成・保存を前提に、青色申告特別控除などのメリットを受けられる制度です。

無申告、帳簿不備、隠蔽・仮装などがある場合、税務署の判断により青色申告の承認が取り消される可能性があります。また、過去分について青色申告を使えるかは、承認申請の有無や帳簿の状況によって異なります。

過去分の確定申告を行うメリット

払い過ぎた税金が還付される、税務調査のリスク回避など、過去分の確定申告をするメリットをチェックしていきましょう。

払いすぎた源泉徴収税が戻ってくる

原稿料、デザイン料、イラスト制作費などから源泉徴収されている場合、確定申告によって払いすぎた税金が戻る可能性があります。

報酬から10.21%が差し引かれていても、制作ソフト、資料代、通信費、機材費などの経費を計上すれば、最終的な税額が下がることがあります。「申告すると税金を取られる」と決めつけず、還付の有無を確認しましょう。

税務調査のリスク回避

無申告のまま放置していると、取引先の支払調書、銀行口座の入金履歴、クラウドソーシングや販売プラットフォームの売上データなどから、収入を確認される可能性があります。

自主的に申告すれば、納税の意思を示すことにもつながります。
税務署から連絡が来る前に対応することが、実務上も望ましい対応です。

精神的な「無申告ストレス」からの解放

無申告の状態が続くと、「いつ税務署から連絡が来るか」と不安を抱えながら活動することになります。

過去分を整理して申告すれば、少なくとも放置状態から抜け出せます。さらに、会計ソフトで帳簿を付ける、領収書を保存する、毎月売上を確認するなど、今後の税務管理を整えるきっかけにもなります。

過去分の確定申告をするために必要な書類

過去分の申告をするために、必要書類をそろえておきましょう。

  • 本人確認書類:マイナンバーカードなど
  • 売上資料:支払調書、通帳の入金履歴、請求書、販売サイトの売上明細など
  • 経費資料:領収書、レシート、クレジットカード明細、Amazonなどの購入履歴、メールの注文控えなど
  • 控除証明書:国民年金、保険料、ふるさと納税などの控除証明書

資料が完全にそろっていない場合でも、そこで作業を止める必要はありません。たとえば、領収書がない支出でも、クレジットカード明細、銀行口座の出金履歴、注文確認メール、納品データなどから内容を確認できる場合があります。
ただし、事業との関連性を説明できない支出は経費として認められにくいため、無理に経費へ入れず、根拠を残せるものを中心に整理することが重要です。

【ステップ別】過去分の確定申告を進める手順

過去分の確定申告を進める手順は、次の通りです。

STEP1:過去の帳簿を作成する

まず、通帳、請求書、支払調書、販売サイトの明細などをもとに売上を整理し、次に、領収書、カード明細、購入履歴などから経費を確認します。

freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使うと、銀行口座やカード明細を取り込めるため、複数年分の整理を効率化できます。

また、帳簿を作成する際は、プライベートの支出と事業用の支出を分けることも重要です。クリエイターの場合、パソコン、スマートフォン、通信費、家賃など、仕事と私生活の両方で使う支出があります。

このような支出は、全額を経費にするのではなく、使用実態に応じて按分する必要があります。判断に迷う支出は、メモを残して税理士に確認できるようにしておきましょう。

STEP2:申告書を作成する

帳簿を作成したら、申告していない各年分ごとに確定申告書を作成します。

別の年度分をまとめて1枚にすることはできません。売上、経費、所得控除、源泉徴収税額を年分ごとに計算し、必要に応じて青色申告か白色申告かも確認します。制度や様式が年分により異なる場合があるため、不安がある場合は税理士に確認しましょう。

STEP3:税務署へ提出・納税する

申告書が完成したら、e-Tax、郵送、税務署窓口への持参などで提出します。

過去分でも、対応している年分であればe-Taxを利用できる場合があります。期限後申告では、申告書の提出日が納期限となるため、納税が必要な場合は本税と延滞税などを速やかに納付します。納付が難しい場合も、放置せず税務署や税理士に相談しましょう。

まとめ

確定申告資料

確定申告をせずに放置していると、ペナルティを受けたり、還付が受けられなくなってしまったりと、デメリットがあります。過去分は基本的に5年前までは申告できるので、もし過去に確定申告をしていない期間がある場合は、手続きは早めに行いましょう。

過去分が複数年ある場合や、資料不足、経費判断に不安がある場合は、クリエイター・個人事業主に強い田中貴久公認会計士事務所にお気軽にご相談ください。

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