クリエイターとして活動していると、単発の印税や原稿料で収入が急に増えたという場合もあるのではないでしょうか。
「税金が高すぎて困る」と感じるのであれば、平均課税を適用することで、税額が下がる場合があります。

この記事では平均課税とは何か、適用要件や計算の仕方について解説します。
急に収入が増えたクリエイターの方は、ぜひご一読ください。

平均課税とは?クリエイターが知るべき基礎知識

平均課税とは原稿料や印税などにより、ある年だけ所得が大きくなった場合に適用することで、税負担を軽減できる制度です。

所得とは収入から経費を差し引いた残額です。
日本の所得税では「累進税率」という制度が適用されており、所得が大きいほど税率が上がる仕組みとなっています。

クリエイターの場合、たとえば前年の所得が150万円だったものの、当年は作品がヒットし印税や原稿料で一時的に所得が500万円に上がるケースもあり得ます。
所得150万円の場合の所得税率は5%、所得500万円の場合の所得税率は20%と4倍の税率になります。

数年間コツコツ作成し続けた作品がようやくヒットし多額の印税や原稿料が入る場合に、その作品にかけた労力は数年間にわたるにも関わらず、その年の所得だけ上がったことで税率が一気に上がるのは不適当という考え方により、平均課税の制度があります。

あなたは対象?平均課税における「所得」の種類

平均課税の対象となるのは「変動所得」と「臨時所得」です。
どういったものが該当するのか、それぞれ解説します。

変動所得

クリエイターに関係する変動所得には、事業所得や雑所得のうち原稿料、印税、著作権料、作曲料などが該当します。

臨時所得

臨時所得には、事業所得や不動産所得、雑所得のうち特定のものが該当します。

下記は、臨時所得に該当します。

  • 3年以上の期間、特定の者と専属契約を結ぶことにより一時に受ける契約金で、その金額が契約報酬の2年分以上であるものの所得。
  • 不動産の権利金で3年以上の期間、他人に使用させることにより一時に受け取るもので、金額が契約による使用料の2年分以上である所得などが該当します。ただし特定の権利金や頭金は臨時所得ではなく譲渡所得となる場合があります。

変動所得や臨時所得に対する必要経費

事業所得や雑所得の中に変動所得とそれ以外の所得がある場合、事業所得や雑所得に関する必要経費は、変動所得を構成する収入金額とそれ以外の収入部分とに必要経費を区分します。

それぞれの収入に対応する部分の金額が個別に計算できない必要経費については、その必要経費に応じて収入金額の比や従事割合、使用割合など適切な基準で按分します。

臨時所得について、専属契約を締結するために要した契約書の作成費用は臨時所得の必要経費となります。

青色申告特別控除に関しては、変動所得や臨時所得と、それ以外の所得の金額の比によって按分します。
青色申告特別控除とは、青色申告をすることによって最大65万円を所得から控除できる制度です。

平均課税を適用できる2つの要件と計算方法

平均課税を適用するためには一定の要件があります。
要件は2つあり、そのどちらかに該当すれば平均課税を適用できます。
それらの要件について解説します。

要件①:前々年、前年に変動所得がない、あるいは変動所得があっても金額が一定未満の場合

前々年、前年に印税などの変動所得がない、あるいは前々年、前年の変動所得の合計額の2分の1が当年の変動所得に満たない場合は、下記の要件を満たしていれば平均課税を適用できます。
・当年の変動所得と臨時所得の合計額が、当年の総所得金額の20%以上であること

たとえば会社で働いて給与所得300万円を得ながら、作品がヒットして印税による雑所得100万円を得たとします。
給与所得300万円と印税の雑所得100万円の総所得金額は400万円です。
印税100万円は総所得金額400万円の25%のため、平均課税を適用できます。

変動所得や臨時所得以外の所得、たとえば広告収入などによる所得が非常に大きく、印税が総所得金額の数%の場合は平均課税の適用はできません。

要件②:今年の変動所得が、前年・前々年の変動所得の平均額を超えていること

前々年、前年に変動所得があって、合計額の2分の1が当年の変動所得以上の場合、当年の臨時所得の金額が本年の総所得金額の20%以上の場合、平均課税を適用できます。

たとえば変動所得について、2年前600万円、1年前300万円、当年400万円の場合、前々年と前年の変動所得合計額の2分の1が450万円のため、当年の変動所得より大きいです。
この場合に臨時所得の金額が100万円、総所得金額が500万円だとすると、臨時所得の金額が総所得金額の20%となるため平均課税を適用できます。

要件①と違い、総所得金額と比べるのは臨時所得のみのため注意しましょう。

【シミュレーション】平均課税でどれくらい安くなる?

平均課税の計算方法を解説します。
前提:当年の課税される所得の合計が1,500万円のクリエイターを例にします。

 前々年前年当年
変動所得300万円100万円1,000万円
臨時所得100万円
課税所得金額1,500万円

①平均課税を計算する場合、まず総所得金額から、対象となる変動所得と臨時所得の5分の4を除いて、その金額で低い税率を適用して計算します。
ただし、前々年と前年に変動所得がある場合、それらの合計を2分の1した金額を、当年の変動所得が超えた部分と、臨時所得の合計を5分の4します。

適用できる変動所得:当年変動所得1,000万円-(前々年変動所得300万円+前年変動所得100万円)×1/2=800万円
課税所得金額1,500万円-(適用できる変動所得800万円+臨時所得100万円)×4/5=780万円

②5分の4を除いた金額に対して所得税率を適用します。
780万円の時の税率23%、控除額63万6,000円
780万円×23%-63万6,000円=115万8,000円
税額①:115万8,000円

③②で算出した税額を780万円で割って平均税率を求めます。
115万8,000円÷780万円≒平均税率14%(小数点以下切り捨て)

④①で課税所得金額1,500万円から差し引いた780万円を算出しましたが、差し引かれた残りの課税所得金額720万円に対して平均税率を適用して残りの税額を求めます。
720万円×平均税率14%=100万8,000円
税額②100万8,000円

⑤税額①と税額②を合計した金額が、納付する所得税額です。
税額①115万8,000円+税額②100万8,000円=所得税額216万6,000円

仮に平均課税を適用しないで通常の方法で税額を計算すると、課税所得金額1,500万円のため、所得税率は33%、控除額は153万6,000円となります。
課税所得金額(1,500万円×所得税率33%)-153万6,000円=所得税額341万4,000円

平均課税による所得税額222万6,923円、通常の方法による所得税額341万4,000円のため、平均課税を適用することでおよそ118万円税金額が下がりました。

メリットだけじゃない?注意点

平均課税を適用することで税金を下げられるものの、要件を満たさないと適用できない点、変動所得や臨時所得に含まれるものは限られる点に注意しましょう。

その他、平均課税についての注意点を解説します。

住民税には適用されない

住民税で適用される税率は一律10%であり、平均課税制度はありません。

そのため、平均課税制度により所得税の金額を下げられても、住民税には適用がないため注意しましょう。

計算作業が複雑

平均課税の計算をする際、まず1年間のどの収入と経費が変動所得あるいは臨時所得かを整理する必要があります。
この整理を間違えると平均課税の計算を誤ってしまうため注意しましょう。

整理できた後に、変動所得と臨時所得を計算し、平均課税の対象金額を求め税額を算定します。

平均課税を手書きで計算すると間違える可能性が高くなるため、会計ソフトの使用をおすすめします。
ただし、収入と経費の中でどれが変動所得と臨時所得に属するかを整理する作業は、1つ1つ自身で判断して行わないといけない手間のかかる作業のため、税理士に申告作業を依頼してしまうのもいいでしょう。

まとめ

日本の所得税は累進課税のため、所得が大きくなるほど税率自体が上がってしまいます。

クリエイターとして制作を続けた作品がヒットして印税収入や原稿料、作曲料が一気に入ってくると、その年分の税率もそれだけ上がり、税金負担が増えてしまいます。

「数年かけて制作した作品なのに一時的に高い税率をかけられるのは腑に落ちない」という方もいるでしょう。
そうした場合に平均課税制度を適用することで、税金を下げられます。

ただし、平均課税を適用するためには要件を満たしている必要があり、変動所得や臨時所得、それに関する経費の判定をする必要があります。
そうした判定や、平均課税の計算自体がかなり手間なため、負担に感じるのであれば税理士に確定申告を依頼するのもいいでしょう。

平均課税は特定の所得にのみ適用される方法のため、クリエイターの確定申告をした経験があまりない税理士だと、平均課税自体を取り扱ったことがないという場合もあります。
そうした事態を避けるため、クリエイターの確定申告経験が豊富な税理士に頼むと安心です。

田中貴久公認会計士は、クリエイターの確定申告に関して豊富な実績があります。確定申告に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。

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