大口の契約で報酬が一気に入ってきた場合や、作品がヒットして収入が大きく増えた場合、税金も急激に増えてしまう可能性があります。

「変動所得」を活用することで、税金の上昇がゆるやかになります。
クリエイターの方は変動所得を活用できるケースが比較的多いため、変動所得を理解し、税負担が重くなりすぎないようにするとよいでしょう。

この記事では変動所得の種類や判定基準、適用方法などを解説します。
クリエイターの方は、ぜひご一読ください。

変動所得とは

変動所得とは何か、クリエイターにとって変動所得が重要な理由を解説します。

変動所得の定義

変動所得とは、事業所得や雑所得に該当するもののうち、原稿料・印税・著作権料など年によって所得が大幅に変動することが見込まれるものが該当します。

変動所得に該当するものは下記であり、それ以外は変動所得にあたりません。

  • 漁獲もしくはのりの採取による所得
  • はまち、まだい、ひらめ、真珠等の養殖から生ずる所得
  • 原稿料、作曲料、印税

なお、所得とは収入から経費を引いた残額です。

クリエイターにとっての重要性

自身の稼ぎが変動所得に該当する場合、一定の要件を満たすことで「平均課税」を適用でき、税額が下がります。

作品がヒットして1度に多額の原稿料や印税が入ってきた場合、その年の所得税が急に上がってしまいます。

所得税は、所得の金額が上がるにつれて段階的に税率が上がる「累進課税」を採用しています。
そのため、多額の原稿料や印税で所得が一気に上がると税率も上がり、所得税の負担が大きくなります。

たとえば、毎年の所得が150万円の場合、税率は5%です。
しかし、作品がヒットしてある年の所得が1,000万円になった場合、税率が33%と6倍以上になってしまいます。

平均課税を適用することで税率が低くなるため、所得税の負担増がゆるやかになります。

【徹底分類】変動所得に含まれるもの・含まれないもの

変動所得に含まれるもの・含まれないものについて解説します。

変動所得に該当し平均課税が適用できる場合、税率が大きく下がる可能性があります。
逆にいえば、変動所得に該当しないものを含めてしまうと本来より相当低く税額を算定してしまい確定申告を大きく間違ってしまうリスクがあります。

この章を参考に、変動所得に該当するかどうかを判別しましょう。

① 変動所得に含まれるもの

変動所得に含まれるものは下記になります。
原稿料: 雑誌、書籍、Webメディアへの寄稿など
著作権の利用料(印税): 出版印税、楽曲使用料、キャラクターライセンス料など
作曲料: 楽曲提供など

② 変動所得ではないもの

下記は変動所得にはあたりません。
デザイン料・イラスト制作料:さし絵やイラスト報酬など
講演料:トークイベントなど
グッズ販売・同人誌の直接販売:販売売上自体は対象外。
ただし、販売により得た著作権料は変動所得に該当

平均課税を適用する際の注意点

変動所得にあたるか、平均課税を適用できるかを判定する際の3つのチェック事項を解説します。

チェック①所得の種類

変動所得に該当するものは、「事業所得」または「雑所得」にあたるものだけであり、どういった所得が変動所得にあたるかは法律で定められています。

自身が得た収入が原稿料や印税、作曲料にあたるものなのか、収入ごとに区分して処理する必要があります。

後で税務調査が入った際に変動所得にあたると証明できるよう、領収書などの証拠となる書類を入手・保管しておきましょう。

チェック②必要書類

平均課税を適用するためには、確定申告の際に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」に必要事項を記載して、確定申告書と一緒に提出する必要があります。

この書類は国税庁のHPからダウンロードできます。
変動所得・臨時所得の平均課税の計算書:国税庁

計算書の説明通りに必要事項を記入して提出してください。

チェック③要件を満たしているか

平均課税を適用できるのは、下記の要件を満たしている場合のみです。
なお、臨時所得とは事業所得・不動産所得・雑所得のうち、たとえば3年以上の専属契約を結ぶ場合に、2年分以上の契約金を一時に受け取った場合などの所得です。

前々年、前年に変動所得がない:本年の変動所得と臨時所得の金額の合計額が、総所得金額の20%以上であること。
前々年、前年に変動所得があるが、その合計額の2分の1が本年の変動所得に満たない:本年の変動所得と臨時所得の金額の合計額が、総所得金額の20%以上であること。
前々年、前年に変動所得があり、その合計額の2分の1が本年の変動所得以上:本年の臨時所得のみの金額が、総所得金額の20%以上であること。

特に前々年、前年に変動所得があった場合は、平均課税を適用できるかの判定方法が変わることがあるため注意しましょう。

平均課税の計算方法

総所得1,200万円、その中で平均課税の対象金額が1,000万円とします。
また、前々年と前年に平均課税はないものとします。

①平均課税対象金額の5分の4を除いた所得金額に対して税金を求める
総所得金額1,200万円-平均課税対象金額1,000万円÷5×4=400万円
所得400万円の税率は20%、所得控除42万7,500円
400万円×20%-42万7,500円=税額37万2,500円

②平均税率を求める
①で求めた税額÷対象となった所得=平均税率(小数点以下切捨)
37万2,500円÷400万円=9%

③残りの平均課税対象金額の5分の4に対して平均税率を掛けて税額を求める
(平均課税対象金額1,000万円÷5×4)×平均税率9%=税額72万円

④税額を合算する
①と③で求めた税額を合算します。
37万2,500円+ 72万円=確定税額109万2,500円

平均税率を適用しなかった場合、税率は33%控除額153万6,000円となり、税額は242万4,000円となります。

平均課税を適用すると、税額が100万円以上低くなるという結果になりました。

よくある質問(FAQ)

変動所得についてよくある質問について回答します。

Q. 過去に遡って変動所得として修正申告はできますか?

過去の確定申告をやり直す場合は「更正の請求」を行います。
更正の請求により、平均課税によって計算した税額が認められた場合、納めすぎていた税金は還付されます。

更正の請求ができるのは、法定申告期限から5年以内です。
そのため、「過去5年以内にヒット作がでて税金が急に上がったことがあったな」という場合は平均課税が適用できないか確かめてみるのもよいでしょう。

Q. 会社員の副業でも変動所得として申告できますか?

会社員の副業でも、所得が原稿料や著作権料など変動所得に該当し、かつ総所得金額の20%以上であるなど平均課税の要件を満たしていれば変動所得として申告できます。

この場合の総所得金額とは、会社員として働いて得た給与も含まれるため注意してください。

Q. 電子書籍の収入(KDPなど)は印税扱いになりますか?

契約内容によりますが、KDPなど電子書籍の収入は契約上、電子印税という形になり印税扱いです。
念のために契約内容を確認しておくといいでしょう。

一方で、自身のサイトでのPDF販売や、同人誌即売会などでの販売は印税に該当しないと考えられますので注意しましょう。

1つの目安として、著作権料や原稿料を受け取る際「源泉所得税」が天引きされています。
振込内容の明細などをみて、源泉所得税が徴収されているかが変動所得を判断する際の1つの目安となります。

ただし、あくまで目安のため、正確に判断したい際は契約内容を確認してください。

Q. 変動所得を間違えてしまうとどうなりますか

変動所得を間違えて税額を本来より少なく申告した場合、ペナルティとして「追徴課税」の対象になります。

追徴課税とは追加でかかる税金のことであり、少なかった分の税額に対してかかる「過少申告加算税」や、納めていなかった期間に応じてかかる「延滞税」があります。

変動所得を使った平均課税の計算では通常の計算に比べて大きく税金が下がるため、計算を間違えた際に税額を相当に間違えてしまう可能性があります。
そうすると追徴課税の額も大きくなり得るため、変動所得の判定や平均課税の計算は注意深く行いましょう。

まとめ

クリエイターの稼ぎにおいて変動所得にあたるものは、原稿料や印税・作曲料です。

前々年や前年に変動所得がない場合、変動所得と臨時所得の合計が、総所得金額の20%以上であれば平均課税を適用できます。
平均課税を適用することで税率が下げられ、所得が急に増えた場合の税金上昇がゆるやかになります。

ただし、平均課税を適用する際は確定申告の際に必要書類を添付し、平均課税の計算を行う必要があります。

変動所得に該当するかの判断や、平均課税の計算方法を間違えると税金計算を間違ってしまいます。
自分ですべて処理する自信がない場合は、税理士への依頼を検討しましょう。

田中貴久公認会計士は、クリエイターの確定申告に関して豊富な実績があります。確定申告に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。

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