
ミュージシャンとして報酬を得ている人の中には、確定申告をすべきかどうか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
この記事では、ミュージシャンとして報酬を得ている場合、いくらから確定申告が必要なのかを解説します。
また、経費にできるものや、白色申告・青色申告など確定申告の制度についても解説します。
ミュージシャンで確定申告が必要な場合
ミュージシャンで確定申告が必要なのはどういった場合なのか解説します。
フリーランスとして本業で音楽活動をしている場合と、会社員などをしながら副業で音楽活動をしている場合では基準が異なるため、それぞれ分けて解説します。
本業(フリーランス)として音楽活動をしている場合
音楽活動を本業としてフリーランスで活動している場合、個人事業主の扱いになります。
その場合、1月1日から12月31日までの売上から、必要経費を引いた「所得」が95万円(令和8年・9年分については104万円)を超える場合に所得税の確定申告が必要です。
この計算では、音楽活動以外のすべての所得も含めて95万円(104万円)を超えているか判定するため注意しましょう。
確定申告では「基礎控除」という控除が受けられ、所得から差し引けます。
所得が132万円以下の場合は基礎控除95万円(令和8年・9年分については所得金額が489万円以下なら104万円)を所得から差し引けます。
控除を受けた結果、所得金額が0円となる場合は所得税の確定申告は不要です。
会社員をしながら副業で音楽活動をしている場合
会社員やパートなどで給料をもらっており年末調整を受けている場合、音楽活動は副業扱いになります。
副業で得たすべての所得が年間20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要です。
年末調整を受けていない給与所得や、音楽活動以外で株などの所得がある場合、それらも含めたすべての合計で20万円を超えるか判定するため注意しましょう。
ただし、所得税の確定申告は不要でも、1円でも所得があれば住民税の確定申告が必要です。
確定申告すべき?ミュージシャンが知るべき「源泉徴収」と「還付金」
確定申告をする必要はなくても、「源泉徴収」をされている場合はあえて確定申告をした方がいい場合もあります。
源泉徴収の仕組みと、確定申告をした方がいい場合について解説します。
音楽活動の報酬は「10.21%」あらかじめ引かれていることが多い
ミュージシャンの報酬のうち、演奏代や作曲代、編曲料や講師料、著作権使用料は源泉徴収が行われ、報酬から10.21%(1回の報酬が100万円を超える場合は、超えた部分に対して20.42%)があらかじめ引かれた額が支払われます。
これを源泉徴収といい、引かれた額は所得税の仮払いとして納付されます。
ただし、源泉徴収をされているからといって、確定申告が不要になるわけではありません。
源泉徴収をされていても、引かれる前の収入で計算した所得が一定額を超えていれば、確定申告が必要な点に注意してください。
確定申告で算定した税額から、源泉徴収された額を差し引いた残額を納付します。
確定申告をしないと「払いすぎた税金」は戻ってこない
確定申告で算定した税金が、源泉徴収された金額よりも少ない場合は、確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってきます。
これを「還付」といいます。
源泉徴収された税額は、経費や「所得控除」などを考慮せずに、収入の10.21%(または20.42%)で計算した金額です。
そのため、確定申告で算定された税額は、源泉徴収された金額よりも小さくなる場合があります。
所得が一定額以下で確定申告が不要な場合でも、税金の還付を受けるためにあえて確定申告をした方がよい場合もあります。
ミュージシャンが経費にできるものとできないもの
税金計算に用いる所得は、収入から必要経費を引いた残額です。
そのため、必要経費を計上することで税金額が下がります。
ただし、経費にできるものは限られており、経費にできないものを計上して税金を計算した場合は計算間違いとなり、「追徴課税」というペナルティを受け追加の税金が発生する場合があります。
この章では、必要経費にできるものとできないものについて解説します。
【経費にできるもの】音楽活動に必要な費用
経費にできるものは、音楽活動に必要な費用のみです。
プライベートな支出は経費にできません。
また、自宅で作業をしている場合、家賃や電気代などの一部を経費にできます。
その場合、家賃であれば作業スペースの面積、電気代であれば音楽活動に使用した時間など、合理的で説明可能な基準で按分する必要があります。
経費にできるものの例は下記になります。
| 科目 | 内容 |
|---|---|
| 消耗品費 | 弦、ピック、ドラムスティック、シールド、楽譜、CD、音源、10万円未満の楽器や機材 |
| 地代家賃 | DTM部屋、楽器の練習部屋の家賃。自宅で作業する場合は作業面積などで家事按分が必要 |
| 水道光熱費 | 自宅スタジオの電気代など。使用割合に応じて家事按分が必要 |
| 旅費交通費 | スタジオやライブハウスへの移動、ツアー遠征、打ち合わせ時の電車・タクシー・ガソリン代・高速代、ツアー中の宿泊費 |
| 通信費 | メンバー間の連絡用スマホ代、活動用Webサイトのサーバー代、音源配信用ネット回線代 |
| 広告宣伝費 | PV・MV制作費、フライヤー・チラシ印刷代、SNSや音楽配信サービスのプロモーション広告費 |
| 交際費 / 会議費 | プロモーターや関係者、バンドメンバーとの打ち合わせ時の飲食代 |
【経費にできないもの】プライベートの生活費や音楽に関係ない支出
プライベートの生活費や、音楽活動に関係ない支出は経費にできません。
ステージ以外でも着られる衣装や、単なる友人との食事代、旅行費用などは経費にできないため注意しましょう。
そのほか、喉のケアを行う費用もプライベートのものとみなされやすいため、経費には含めないのが無難です。
経費にできるかの判断は難しい部分もあるため、迷ったら税理士に相談することをおすすめします。
高額な楽器やパソコンは「減価償却」する
高額な楽器やパソコンなどは、購入した年に一括で経費にできない場合があります。
この章では、そういった楽器やパソコンを費用化する「減価償却」や、特例について解説します。
10万円以上の楽器やPCは一度で経費にせず減価償却する
1個(1組)あたりの単価が10万円以上のものを購入した場合、購入した年に一括で経費にはできません。
その場合、「減価償却」を行い、数年に渡って経費にします。
何年で経費にするかは購入したものによって定められており、国税庁のホームページで公開されています。
たとえば楽器は5年間で経費にすると定められており、30万円のドラムを買った場合は、5年間で原則として均等に経費にし、毎年6万円を5年間に渡って経費計上します。
30万円÷5年間=6万円
【2026年最新改正】青色申告なら「40万円未満」まで一括経費に
音楽活動での所得が「事業所得」に該当する場合、「青色申告」を行うことで1個(1組)40万円未満の資産であれば、購入した年に一括で経費にできる特例があります。
この特例は年間で合計300万円までが上限のため注意しましょう。
白色申告と青色申告、どっちを選ぶ?特徴と選び方の基準
音楽活動を本業で行っている場合、あるいは副業の場合でも帳簿保存をしており事業と認められる場合は、音楽活動の所得を「事業所得」にできます。
事業所得の場合、申告方法を白色申告または青色申告の2つの方法から選択できます。
白色申告と青色申告の違いや、それぞれに向いている人について解説します。
白色申告と青色申告はどう違う?違いを比較
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告は白色申告と比べ、様々なメリットが得られます。
青色申告では最大65万円の特別控除が受けられ、所得から差し引くことで税金額を下げられます。
そのほか、40万円未満の楽器などを購入した場合は一括で経費にできるなどのメリットがあります。
また、事業所得の赤字は、給与所得など他の所得と相殺できます。
青色申告による場合、この赤字を最長3年間繰り越して他の所得と相殺できる恩恵があります。
青色申告を初めて行いたい場合、その年の3月15日(その年の1月16日以降に新しく事業を開始した場合は、事業開始等の日から2か月以内)までに税務署に届出をする必要があるため注意しましょう。
一度届出を出せば、翌年以降は届出をあらためて提出する必要はありません。
青色申告では申告の際に青色申告決算書を提出する必要があり、65万円の控除を受けるためには複式簿記による記帳を行い、e-Taxでの提出を行うなどの条件があります。
白色申告が向いている人
とにかくシンプルに確定申告を終わらせてしまいたい方や、活動の規模がまだ小さく収入が少ない方は、白色申告が向いているといえるでしょう。
青色申告は、青色申告決算書の提出が必要など手間がかかるため、あまり手間をかけずに確定申告をしたい方や、収入が少なく青色申告のメリットがあまり受けられない方は白色申告の方がよいといえます。
青色申告が向いている人
本格的に音楽活動を行い収入が増加してきた方や、少しでも税金を抑えたいという方は青色申告が向いているといえるでしょう。
65万円の青色申告特別控除を受ける場合は複式簿記による記帳が必要なため、税理士に依頼するか、自力で記帳する場合は会計ソフトを使用することをおすすめします。
まとめ

ミュージシャンとして音楽活動をしている場合、所得が一定額以上の場合は確定申告が必要です。
ミュージシャンの報酬は源泉徴収されている場合が多く、確定申告により払いすぎた分は還付されます。
そのため、確定申告をする必要がなくとも、あえて確定申告をした方がいい場合もあります。
ミュージシャンが経費にできるものや、減価償却の仕組み、青色申告制度を理解し、適切に税金計算を行いましょう。
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